「レジェンド&バタフライ」信長を作った女
現在オンエアされている大河ドラマ「どうする家康」の脚本家古沢良太が手掛けるもう一つの戦国ドラマです。
「どうする家康」では食えないタヌキ親父のイメージで語られることが多い家康を、優柔不断で自信がない男という新しいイメージで描いています。
本作では信長を主人公に据えていますが、今まで語り尽くされた感のあるこの男をどのように料理するのでしょうか。
信長は「魔王」と形容されることが多く、苛烈なキャラクターとして描かれることが一般的です。
「どうする家康」の信長もこのようなイメージで描かれていますね。
また信長はそれまでの価値観を大きく変えたビジョンを持つ男として描かれていることも多々あります。
楽市・楽座といった経済の新しい仕組みを作ったり、外国との交易にも積極的であったりという点がそのようなイメージを作ってきたのかもしれません。
しかしながら、本作の信長はそうではありません。
劇中、「魔王」と形容されることはありますが、それは自らの信念を持ってそうなっていったということではありません。
本作の信長は決して愚鈍ではありませんが、ビジョナリーではないように思いました。
しかし、なぜ彼は一介の戦国大名から京まで登り、将軍以上の威光を獲得することができたのでしょうか。
本作ではその答えを信長の妻、濃姫に求めます。
濃姫は織田家が治める終わりの隣国、美濃の斎藤道三の娘で、戦略結婚で信長の妻となりました。
彼女は歴史上ではあまり触れられることがなく、その生涯は明らかではありません。
本作では男まさりの性格であり、また大きな野望を持つ女性として描かれます。
彼女が夫、信長に影響を与えていくのです。
本作は歴史物ではなく、戦国時代を舞台にしていますが、ラブストーリーとだと言えます。
信長は濃姫に恋し(それはあまり態度に表しませんが)、彼女の夢を叶えるために、行動していったと言えます。
信長は、彼女の夢を自分の夢とした。
純で、ある意味苛烈な恋であったのだと思います。
妻の夢を叶えるために、魔王となったわけですから。
しかし、魔王が行った所業に濃姫は心を痛めます。
だから再び、魔王は人に戻りました。
それが恋する妻の望みであったから。
信長がそれに自覚的であったかどうかはわかりませんが、彼女の望みを叶えたいという気持ちで彼は行動し続けた。
ある意味、濃姫が信長を作ったと言えるでしょう。
あまりに信長の思いが純だったので、正直恥ずかしくなるような気分にもなりました。
上で書いたように時代劇というよりは、ラブストーリーであったからです。
前日に見た「仕掛人」がザ・時代劇であったので、落差を感じましたが、こういうテイストであれば今の若い人にも時代劇を受け入れやすいかとも思いました。
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