2022年11月20日 (日)
2022年3月27日 (日)
「ナイトメア・アリー」因果応報
2022年3月13日 (日)
「ナイル殺人事件」人間としてのポアロ
2022年1月30日 (日)
「ノイズ」 聴こえないノイズ
2021年11月28日 (日)
「信虎」歴史オタクによる趣味映画
2021年4月19日 (月)
「ノマドランド」 自分の生き方を自分で決める
2020年9月12日 (土)
「1/2の魔法」 前へ向かって
2020年3月 3日 (火)
「ナイブズアウト/名探偵と刃の館の秘密」 今時珍しい「本格」ミステリー
2019年2月11日 (月)
「七つの会議」 サラリーマンは侍
<ネタバレありますのでご注意ください>
「半沢直樹」も「下町ロケット」も「陸王」も見ていません(珍しいですよね)。
なのでこれらの作品がどのようなトーンで作られているのか知りません。
割と演技が濃ゆい感じであったというのは聞いていますが。
本作「七つの会議」はそれらの作品と同じ著者である池井戸潤さん原作で、監督も池井戸ドラマの演出を手がけた福澤克雄さんです。
なので他の池井戸ドラマと同じようなトーンなのでしょうか。
確かに本作の出演者の演技は濃い、というより暑苦しい。
かなり誇張した表現だと思いましたが、ストーリーが展開していく中で、ふとこれは現代的な衣装をまとった時代劇なのだ、と思い、合点がいきました。
エンドロールで八角が、日本のサラリーマンとは江戸時代の侍と同じだと語ります。
昔は侍は藩に仕え、そして藩は侍を守る。
現代は、藩が会社になっただけ。
なるほど日本のサラリーマンの体質にはそういうところはありますよね。
特に40代以上のサラリーマンには。
本作に登場する架空の大手家電メーカーのゼノックスの社長は御前と呼ばれています。
まさにこれは殿様のようなものです。
ある藩で不正が執り行われていて、それに関わった者、それを探った者は次々に亡き者とされる。
過去に藩と色々とあった昼行灯も事件に巻き込まれて、不正に気づく。
それを正そうと殿様に直訴したが、結局は握りつぶされてしまう。
しかし幕府も藩の不正に気づき・・・。
こうやって書いてみるとまさに本作のストーリーはそのまま時代劇としていけそうです。
逆に返せば、時代劇的なストーリーだからこそ、池井戸作品はこれほどまでに多くの人に支持されているのかもしれません。
日本人のDNAに組み込まれているような侍の精神構造が、作品の中にあるのでしょう。
池井戸作品は、不正などによって虐げられた人々が、最後の最後に逆転勝ちすることの爽快感が受けているのだと思います。
これは絶対的な権力で支配されていた人々が物語の中だけでも、胸が空く思いを持ちたいと思っていた時代に芸能がそういう思いをすくっていたことに通じるかもしれません。
池井戸作品が喝采をもって受け入れられるというのは、今の時代もそういう見えない権力によって人々が虐げられていると人々が感じているということなのでしょうか。
そうかもしれませんよね。
いくら不正があっても政治は変わらない。
大きな企業の不正が次々と明らかになっています。
何も変わらないという閉塞感、鬱屈した感じが現代社会にはあると思います。
だからこそ、池井戸作品が受け入れられる。
このような物語が古臭い、それこそ前時代的なったときこそが、よりよい時代になっているということなのかもしれないですね。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
2017年8月27日 (日)
「ナミヤ雑貨店の奇跡」 自分の人生の意味
こちらは試写会で鑑賞しました。
原作は東野圭吾さんですが、未読です。
まずは見終わった時の感想ですが、脚本がパズルように絶妙なバランスで組み立てられているなということです。
本作は誰か一人の主人公の物語というよりは、何人かの登場人物の人生が絡み合いながら描かれるアンサンブルになっています。
そして現代や過去のエピソードが重なり合いながら描かれるので、かなり複雑な構成です。
けれどもそれでもちゃんとわかるように組み立てらているのですよね。
一緒に行った方は「原作読んでいるから自分はわかったけど、未読で理解できた?」と言いました。
途中ちょっと戸惑うことはありましたが、十分理解できます。
原作からはカットされていたり、加えられたところもあるようですが、2時間強でよく収めたなという感じがしますね。
脚本は斉藤ひろしさんで、この方は「黄泉がえり」を書いた方なので、複雑な物語をわかりやすく構成するのが上手な方なのだなと思いました。
先に書いたように原作は読んでいません。
東野圭吾さんの作品をたくさん読んでいるわけではないのですが、映画化された作品を中心に少し読んだことがあります。
彼の作品に共通しているのが、自己犠牲ということなのではないかなと思います。
自己犠牲というと重々しいのですが、自分の人生がどこか誰かのためになっていると感じられる人生というのは、とても幸せなことだということです。
自分の人生というものは自分のものではあるのですが、自分だけで自分の人生ができているわけではありません。
誰かの人生の影響を受けるし、誰かに影響も与える。
どうせ生きて死んでいくのであれば、誰かの人生に良い影響を与えることができたのならば、いい人生であると言えるかもしれません。
自分だけのための人生は虚しさが残るかもしれませんね。
本作の登場人物たちは、結果色々ですが、共通しているのは自分が誰かのために良い影響を与えられて、そして自分の行為が誰かのために役立ったということを実感することができたということだと思います。
悲劇的な結末を迎えた人もいれば、幸せな人生を送った人もいる。
まだまだ人生これからの人もいる。
けれど誰かによって生かされて、誰かを生かしているということに気づくことができた。
これは幸せなことですよね。
自分の人生が何か意味がある、と思えるから。
人生が虚しいと感じてしまうのは、自分がいる意味を感じられないからかもしれません。
どんなに小さなことでも人の役に立てるということは、自分の人生を豊かにすることなのだなと改めて感じました。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
より以前の記事一覧
- 「22年目の告白 −私が殺人犯です-」 フィンチャー的なエッジ 2017.07.08
- 「日本のいちばん長い日」 若者と老人の視野、または理想と現実 2015.08.14
- 「ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密」 ラリーの成長物語 2015.05.16
- 「THE NEXT GENERATION パトレイバー 第7章」 劇場版へのプロローグ 2015.01.12
- 「THE NEXT GENERATION パトレイバー 第3章」 太田莉奈さんに惚れる 2014.07.13
- 「ノア 約束の舟」 まさに狂信的な 2014.06.25
- 「ニード・フォー・スピード」 物語に無理がある 2014.06.21
- 「忍たま乱太郎-夏休み宿題大作戦!の段-」 健全になったなぁ 2013.07.14
- 「二流小説家-シリアリスト-」 長編をコンパクトにまとめてはいる 2013.06.22
- 「脳男」 安易に希望を描かない 2013.02.23
- 「任侠ヘルパー」 弱きを助け強きを挫く 2012.12.06
- 「のぼうの城」 人の力と銭の力 2012.11.03
- 「ネイビーシールズ」 現役隊員の演技力に驚き 2012.07.15
- 「忍たま乱太郎」 三池流子供向け映画 2011.07.23
- 「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島」 アスラン王はワイルドカード 2011.02.27
- 「ナイト&デイ」 正統なハリウッド・スター映画 2010.10.17
- 「NECK ネック」 日本的怖さ 2010.09.05
- 「のだめカンタービレ 最終楽章 後編」 祝!大団円 2010.05.03
- 「NINE」 遅すぎた成長 2010.03.20
- 「のだめカンタービレ 最終楽章 前編」 憧れと反発 2009.12.23
- 「パブリック・エネミーズ」 男は視線で女を殺す 2009.12.19
- 「日本沈没(1973年)」 日本人を描く 2009.12.13
- 「ニュームーン/トワイライト・サーガ」 私のために戦わないで! 2009.11.29
- 「2012」 良くも悪くもエメリッヒ 2009.11.28
- 「なくもんか」 生きるための処世術 2009.11.22
- 「20世紀少年 -最終章- ぼくらの旗」 夢見る子供じゃいられない 2009.09.06
- 「南極料理人」 究極の単身赴任 2009.08.23
- 「ナイト ミュージアム2」 子供ももちろん大人もしっかり楽しめる 2009.08.13
- 「ノウイング」 狙いが見えない 2009.07.11
- 「20世紀少年 -第2章- 最後の希望」 「つなぎ」になるのは仕方がない、か・・・ 2009.01.31
- 「252 -生存者あり-」 待つ身のつらさ 2008.12.07
- 「20世紀少年」 原作漫画を見事に映像化 2008.08.31
- 「ニュー・シネマ・パラダイス」 人生を経るに従い感じ方が変わる作品 2008.07.27
- 「西の魔女が死んだ」 あるがままを認める 2008.07.04
- 「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」 喰い足りなさは相変わらず 2008.05.18
- 「NEXT -ネクスト-」 制約なしはおもしろくない 2008.05.05
- 「ノーカントリー」 彼らは国を失った 2008.04.01
- 「奈緒子」 ひたむきな力 2008.03.09
- 「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」 10代の死生観 2008.01.19
- 「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」 ゲイツ家の楽しい面々 2007.12.22
- 「ナンバー23」 数字の神秘 2007.12.08
- 「ナイト ミュージアム」 子供向けだけど手抜きをしていない 2007.04.21
- 「ナチョ・リブレ 覆面の神様」 幸せってなんだっけ? 2006.11.11
- 「2001年宇宙の旅」 カメラの視点で表現したかったことは・・・ 2006.08.15
- 「日本沈没(2006年)」 2006.08.15
最近のコメント