2025年4月27日 (日)

「アマチュア」スパイの成長

アクションスパイ映画というと「007」「ミッション・インポッシブル」「ボーン・アイデンティティ」などが浮かびます。
これらの主人公は超絶な肉体的能力・スキル、明晰な頭脳、そして精神力を持った、いわばスーパーマンです。
ですので、ありとあらゆるピンチでも彼らは自分の能力を最大限活かして、その危機を乗り越えます。
見ている方としては彼らがスーパーマンなのは知っているので、ある意味、安心して彼らのピンチを楽しめます。
対して本作の主人公はCIAの分析官チャーリー。
彼は天才的な頭脳は持っているものの、基本はデスクワーカーであり、スパイの現場に赴いたことはありません。
しかし、彼は出張に出かけた妻がテロに巻き込まれて死んでしまったことをきっかけに、テロリストたちに復讐を誓います。
しかし、彼が持つのは頭脳だけ。
肉体的・スキル的にもスパイには向かない平凡なデスクワーカーであり、タフネスを支えるのは妻への愛だけです。
彼は組織にテロリストを追ってほしい、と願いでますが、受け入れられず、単独行動を取り始めます。 冒頭に書いたようにスパイ映画の主人公たちは、絶対に死なないという安心感がありますが、チャーリーはそこが担保されていません。
いつ殺されてもおかしくない。
それが他の作品にはない緊張感を生み出します。
また、逃亡しながらテロリストを追っていく中で、彼自身も変わり始めます。
肉体的な能力は変わりませんが、明らかにタフネスさを身につけていく。
辛い別れも経験しつつ、修羅場を乗り越えていく中で、精神的にも逞しく、一人前のスパイとして成長していきます。
明らかに完成しているスパイヒーローとは異なり、その変わってく過程がこの作品をユニークにしていると思います。

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2025年4月 6日 (日)

「映画おしりたんてい スター・アンド・ムーン」魅力的なキャラクターたち

やはり永遠のライバルのような関係の名探偵と怪盗はいいですよね。
古くは明智小五郎と怪人二十面相、シャーロック・ホームズとモリアーティ教授と枚挙に暇はありません。
「おしりたんてい」で言えば、それはおしりたんていと怪盗Uでしょう。
彼らは永遠のライバルですが、お互いに不思議なリスペクトがあります。
本作の原作はちょうど先日、新刊が発売されていまして、ユニークな2冊同時刊行となっていました。(先に娘は原作を読んでいたため、一緒に見ていた時、ネタバレを言いそうになるのを止めるのに難儀しました・・・)
一つがスターサイドと言って、おしりたんていを中心としたストーリー。
もう一つがムーンサイドと言って、怪盗U中心のストーリーになっています。
映画はこれらを合体させたものになっています。
テレビシリーズの方では、アルファベットのつく怪盗たちが登場してきています。
怪盗Bや怪盗K、怪盗Zなどといったように。
それぞれユニークなキャラクターとなっていますが、彼らはみんな「怪盗アカデミー」という機関の卒業生になります。
そして本作はそのアカデミーの出身者である怪盗Gがおしりたんていの敵となります。
前作はおしりたんていの過去に触れたストーリーとなっていましたが、本作では怪盗U、そして助手のブラウンの過去に触れていきます。
そして怪盗Uの正体にもチラリと垣間見ることができます。 敵となる怪盗Gについても、彼は彼なりにある作戦を進める理由があり、そのこと自体には共感できる部分もあります。
そのように、今回はさまざまなキャラクターに関して掘り下げられており、ストーリーとしても見応えあるものに仕上がっていると思います。 怪盗Uに関してはまだまだ語られるべきストーリーもありそうなので、こちらも今後に期待したいですね。

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2025年3月27日 (木)

「ウィキッド ふたりの魔女」負けた者たちの物語

予告を見た娘が見たいということで、一緒に行ってきました。
尺は2時間40分程度とかなりの長尺で、最後まで娘が耐えられるかなと心配ではありましたが、しっかり楽しんだようです。
始まって驚いたのは「Part1」と入っていたタイトル。
2部構成であるんですね!
物語の幕が上がるとオズの国の風景が描写されます。
広大な土地の間に走る道にはドロシーらしき一行の姿が見えます。
いずれドロシーたちも出てくるのでしょうか。
「オズの魔法使い」には良い魔女と悪い魔女が出てきますが、本作はこの二人が主人公となります。
彼女たちは若かりし頃、同じ魔法学校で学ぶ同窓生でした。
のちに西の魔女と呼ばれるようになるエルファバは生まれながらにして肌が緑色で強い魔力を持っており、父親から厭まれていました。
彼女は自分のために家族が不幸になったと思い、一歩引くように生きてきました。
かたや良い魔女と呼ばれることになるグリンダは良い家に育ち、自信に満ち溢れた女性です。
すぐに仲間を作り、彼らの中心になるようになるような人物。
つまりエルファバとグリンダは正反対の女性であったのですね。
当然彼女たちは最初は反目します。
エルファバの力を見出した学部長マダム・モリブルは彼女に特別授業を施します。
モリブルに憧れるグリンダとしては面白いはずもありません。
グリンダは華やかな女性ではありますが、ちょっとした意地悪さもあり、完璧な良い人物ではありません。
「オズの魔法使い」では良い魔女、悪い魔女とレッテルを貼られている二人ですが、若かりし頃はそのようなレッテルとは異なっていたというところが興味深いですね。
その頃、オズの国では人間以外の生き物たちが排斥されようとしていました。
オズの魔法使いがより王国の支配を強固にしようとするためです。
エルファバは彼女自身の経験もあり、動物たちに共感し、それを実行しようとする人々に反発します。
やがてエルファバはオズの魔法使いに呼ばれ、首都にグリンダと共に向かいますが、そこで彼の本当の目的を知ります。
彼はそもそも魔法の力は持っておらず、そのため強力なエルファバの力を使って、動物たちを抑圧しようとしてい他のです。
エルファバは彼の本当の意図を知り、反発をします。
モリブルはそんな彼女を反逆者、邪悪な魔女とし、王国の敵とします。
これが「悪い魔女」の誕生の瞬間です。
エルファバは王国がまとまるための共通の敵として、「悪い魔女」にされてしまった。
本来は動物たちを解放しようとした英雄であったのに。
エルファバ=悪い魔女はいずれ滅ぼされます(本作のオープニングでもその描写があります)。
勝者が歴史を作ると言います。
歴史は勝者に都合の良いように語られる。
「オズの魔法使い」は勝者によって語れれた歴史なのかもしれません。
本作は負けた者たち、の視点で描かれる物語なのでしょう。
「邪悪な魔女」と呼ばれたエルファバは何を思い、その役割を果たしたのか。
その時グリンダはどのような気持ちであったのか、それがPart2で描かれるのでしょう。

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2025年3月23日 (日)

「映画ドラえもん のび太の絵世界物語」ひみつ道具、大活躍

<多少ネタバレあります。> 子供の頃「ドラえもん」のテレビ放映が始まり、劇場版の1作目「のび太の恐竜」をワクワクして見てました。
いつしか「ドラえもん」を卒業し、子供ができてまた再び見にいくようになりましたが、自分が子供の頃のようにワクワクしては見れませんでした。
が、本作は期待以上に面白く、久々に「ドラえもん」の映画でワクワクドキドキしました。
まずは脚本が凝っています。
のび太たちが訪れた中世の世界で不穏な企みが進んでいますが、その敵に到達するまでがワクワクドキドキ。
ミスリーティングも誘いながら、敵まで辿り着きますが、そこからさらに巨大な敵が現れて・・・。
この辺のストーリー展開はなかなかです。
なんと言っても今回、のび太やドラえもんの敵となる存在は圧倒的に強い。
その存在によって、仲間たちも次々倒れていきます。
起死回生の作戦として、水が苦手な敵に対して、モーゼステッキで湖の水を割る、というところまでやってのけますが、それも通じない。
とうとう、ドラえもんまで倒れます。
万事休すのその時に、冒頭に使ったひみつ道具が効いてきます。
なんとまあ、見事な伏線でした。
昨年の「ドラえもん」の劇場版は面白くはあったものの、ひみつ道具はあまり活躍していない印象でしたが、本作ではひみつ道具がまさにキーアイテムとして効いているんですよね。
これぞ「ドラえもん」の劇場版です。 藤子先生が書いていた「ドラえもん」の長編はひみつ道具とタイムマシンなどがかけ合わさって、伏線として効いてくるという展開がしばしばありましたが、同じような感覚を味わった気がします。 他にもクレアがかるがるつりざおを先に使っていた結果、ジャイアンとスネ夫を助けることにつながったり、とひみつ道具を効果的に使っていましたよね。 このシーンもアクションはなかなかの見せ所があり、後半の巨大な敵との戦いとの空中戦も作画的にかなりの熱が入っていたように思います。
ストーリーだけでなく、作画としても見せ所がありました。
他の方のレビューを見ても、かなり高評価が多く、個人的にも納得できます。
来年が楽しみになりました。

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2025年2月 9日 (日)

「アンダーニンジャ」薄い福田印(いい意味で)

こちらで何度か書いているのですが、福田雄一監督の作品はどうも合わない。
独特のゆるいギャグが面白いという方もいると思いますが、合わないのですから仕方がありません。
今までも何度かトライしてはいるものの、やっぱり合わないということを確認して帰ってくるのです。
ですので、昨年末に公開された「聖☆おにいさん」もスルーしました。
出演者がすごかったので悩みましたが、結果的に他の方の評を見てみると、いつもと同様の感想になったと思います。
さて、その福田雄一監督の作品が立て続けに公開しました。
「アンダーニンジャ」です。
上記で延々と書いてきたように福田作品は合わないので、スルーするところですが、今回は劇場に足を運びました。
その理由はいくつかあります。
一つはなんと言っても、浜辺美波さんが出演しているということですね。
なんだかんだと、私は彼女のもはやファンと言っても良いので、なるべく見にいきたいわけです。
福田作品であったとしても。
割と清楚な感じの見かけの浜辺さんですが、今回は金髪の女子高生役。
そして福田監督ですので、変顔も連発させられています。
一部では「浜辺美波の無駄使い」と言われていますが、私もそう思います(笑)。
ですが、ちょっと天然な感じの浜辺さんも可愛いのでよしとしましょう。
あとは忍者ものであるということですね。
私は無類の忍者好き。
学生の頃から、山田風太郎の忍法帖シリーズを制覇したほどですので。
本作は現代社会に生きる忍者たちの戦いを描くということで、かなりアクションに気合が入っています。
主演は山崎賢人さんで、彼はアクションには定評がありますから、自ずと期待度は上がります。
期待に違わず、アクションは見応えありました。
近接戦闘はスピーディかつトリッキーで、現代的な忍者というコンセプトをわかりやすく表現したアクションでした。
全体的な尺の中でもアクションのシーンがかなり比重を占めていて、忍者好きとしては満足感がありました。
さて懸念の福田監督のギャグですが、座付き俳優的なムロツヨシさん、佐藤二郎さん中心に、相変わらずの見せ場がありました。
ただこれについてはやはり波長が合わず、そのシーンは拷問のようでした。
特に山崎賢人さんとムロツヨシさんの押し入れの件はきつかったです。
あれの面白さがどうにもわかりません。
ただし、全体的には本作はアクションパートの印象がかなり強く、福田印は相対的にかなり薄い印象です。
福田監督ファン的には物足りないところでしょうが、私個人としてはこれで十分くらいです。
久しぶりに福田監督作品で満足して劇場を後にすることができました。

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2025年2月 2日 (日)

「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」師を越えた化物に

先日再びアメリカ大統領に選出されたドナルド・トランプ。
良くも悪くも歴代の大統領の中でも個性的で独特な考え方を持つトランプですが、彼がどうやってあのような人物となったかを描くのが、本作です。
タイトルの「アプレンティス」というのは見習いという意味です。
本作で若き日のドナルド・トランプはロイ・コーンという弁護士からビジネスの世界で生きる術を学んでいきます。
その立場を「アプレンティス」というタイトルで表現しているのでしょう。
加えてかつてドナルド・トランプは「アプレンティス」というリアリティショーにも出演しており、そこでは出場者(見習い)に課題を出す方の役割で、その番組名にもかけています。
ロイ・コーンが教えるのは、自分の欲望に忠実であること、そしてそのためにはあらゆるものを利用し、そして敵は完膚なきまでに叩き潰すことです。
トランプは見習いとして優秀であり、ロイ・コーンの流儀をみるみるうちに吸収し、そして成功を手にしていきます。
彼は親や妻などの家族も利用し、使い物にならないと見るや兄も切り捨てます。
そしてロイ・コーンが同性愛者であることを知ると彼とは距離をとり、彼が病気で苦しんでいても彼を退けていきます。
ついにドナルド・トランプは師を越えて、より権力に取りつかれた巨大な怪物となっていったのです。
本作で目を見張るのは主人公ドナルド・トランプを演じたセバスチャン・スタンの演技でしょう。
セバスチャン・スタンといえば、マーベルのウィンター・ソルジャーことバッキーですが、それとは全く異なる印象です。
実物のトランプは仕草やしゃべり方に特徴がある人物ですが、彼のクセを非常によくつかみ、再現しています。
風貌はよく見れば全然違うのですが、見ているうちに本物のトランプに見えてくるほどです。
役者というのはここまで、完璧にクセなどを盗むのだと非常に驚きました。

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2024年12月31日 (火)

「映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」欲望との付き合い方

今年最後に鑑賞した映画です。
娘が好きで、原作読んだりアニメ版を見ているんです。
アニメ版は時折一緒に見たりしているので、おおまかに設定はわかっていますが、今回は実写版を一緒に見に行ってきました。
予告で天海祐希さんが紅子を演じていて驚きました。
素の天海さんはスラっとスマートなので、紅子の見た目とは全く違いますが、特殊メイクでかなり印象は近くなっていました。
見た目だけではなく、天海さんはお芝居も貫禄があるので、想像以上に役柄に合っているように思えました。
原作が子供向けの小説なので、子供向けの内容かと思いきや、大人が見ても考えさせられるところもあり、ドラマとしても見応えありました。
それもそのはずで、スタッフを見れば脚本は吉田玲子、監督は中田秀夫とベテランの布陣で、しっかりとした作りになっているのも納得です。
アニメも含めた「銭天堂」シリーズの私の印象は、ややブラックなテイストの「ドラえもん」というところでしょうか。
銭天堂で売られているお菓子って「ドラえもん」の秘密道具っぽいところがあると思いませんか。
この駄菓子を食べると不思議な力が身について、望んだことが叶えられますが、いい気になって使っていくとこっぴどくしっぺ返しを受けてしまう。
「ドラえもん」でのび太はいつも秘密道具を使って、欲張りすぎて失敗してしまいますが、「銭天堂」でも何人かのお客はのび太のように欲に流されて、大変な目に遭ってしまいます。
アニメ版を見ていると、意外と救われないまま終わってしまう時もあり、思っていたよりブラックな印象なんですよね。
そういう意味では「笑ゥせぇるすまん」に近いかもしれないですね。
実写版でも主人公小太郎の大学の後輩である相田さんなどは自分の欲望がコントロールできない状態になってしまいます。
その様は買い物依存症ぽくもあり怖くなります。
願いを叶えたいという欲望は人が行動を起こすモチベーションとなり、それ自体は悪いものではありません。
しかし、欲望に支配され、人生全てに優先されてしまうと不幸になります。
そして欲望に支配されると、自分と他人を比べたくなります。
もっともっと欲しくなる。
人よりももっともっと。
その欲は周りの人も、そしてその人自身も不幸にしてしまう。
そもそも欲望は自分の中から湧き起こるものですが、いつの間にやら自分自身を支配してしまう。
作品の中でも悪意と呼ばれるものは自分の中から湧き出る黒い煙のように描かれていますが、それが自分も、人も飲み込んでいってしまいます。
欲望の力を知りながら、それをうまくコントロールしていく術を身につけていかなくてはいけません。
主人公の小太郎は幼い頃、願望を叶え、その力をうまく使って、良き大人になりました。
完璧ではないけれど、自分の願いを力にして善良な人間として生きてきました。
彼のように生きていきたいものです。

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2024年12月21日 (土)

「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」丁寧に計算された構成

「カメラを止めるな!」の上田耕一郎監督作品なので、奇想天外な展開になることを期待して見に行ってきました。
ジャンルとしてはコンゲームですよね。
このジャンルは脚本の構成が命。
主人公サイドが嵌めるつもりだったのが、裏をかかれて、さらにそれを大逆転するという展開が醍醐味です。
見ている側も含め、どれだけ大胆に嘘をつき、そして張られた伏線を回収するかというのが、腕の見せどころになります。
その点において、本作はとてもよくできています。
特に最後の最後に明らかになるある人物の正体は、入念に伏線とミスリードが仕掛けられていて、それが回収されるところは見事でした。
このようなコンゲームものは主人公サイドはプロフェッショナルであることが多く、先の先まで読んで仕掛けがされています。
ただどうしても全てをコントロールできるはずもなく、不確定要素が彼らをピンチに陥れるというところが物語のピークになります。
それをいかに知恵を使って乗り越えるというのが、このジャンルの見どころの一つ。
その不確定要素というのが、本作では主人公そのもの。
なにしろ主人公は真面目そのものの公務員です。
人を騙したこともない人物で、いかに詐欺の練習をしたとしても馬脚を表す可能性がある。
主人公そのものが不確定要素というのは面白いところです。
この主人公熊沢を演じるは内田聖洋さん。
この方は演じる役の振れ幅が広くて驚きます。
本作では真面目で気弱な公務員ですが、狂気的で非情な悪人を演じることもあれば、オネエな役もできる。
がっちりした体型なのに、佇まいが変わって見えるというのはすごいです。
「カメ止め!」のようなトリッキーな形ではないですが、コンゲーム作品としてとても丁寧に構成されているなと思いました。
細かいところではいくつか気になったところがありましたが、1回見ただけなので、もう一度見直せばちゃんと整合取れているような気もします。
そういうところもあって何度見ても楽しめそうな作品ですね。

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2024年11月 4日 (月)

「ヴェノム:ザ・ラストダンス」完結作ではあるが、物足りない

「ヴェノム」シリーズは長尺化の傾向があるスーパーヒーロームービーの中にあって、コンパクトな長さの作品です。
それにより見やすくなっているとは思いますが、キャラクターなどの深堀が甘いことにも繋がっていると思います。
本作ではエディとヴェノムのバディムービーで、彼らの別れが描かれます。
彼らは政府から追われる逃亡者です。
政府の目を掻い潜りながら、彼らはニューヨークを目指しますが、その過程はバディムービーによくあるロードムービーのよう。
個人的にはもう少し二人の別れはエモーショナルにしても良かったのでないかという印象です。
尺がコンパクトだったせいもあるかもしれませんが、割とあっさりしていたようにも思います。
完結作ではありますが、少々物足りないですね。
二人の関係性は今までの2作で作られているので、前半はもう少し簡潔にして、後半戦をじっくり描いても良かったのでないでしょうか。
ちょっとバランス悪い感じがしました。
あと、バランスの悪さはキャラクターの描き方にも感じました。
今回エディとヴェノム以外は初出のキャラクターですが、彼らの描き方が中途半端に感じました。
一緒に旅する家族はまだいいのですが、政府側がいかにも中途半端。
シンビオートの研究をしているペイン博士はティーンの頃のトラウマが最初に触れられますが、それ以外彼女のキャラクターは深掘りされません。
過去のエピソードが描かれるため彼女は重要そうなキャラクターに見えますが、出来事に対して彼女の気持ちが深く描かれることはあまりなく消化不良に感じます。
これなら、過去エピソードを入れてこなくてもいいのではないかと思いました。
もう一人パンフレットに名前も出ていないキャラクター、クリスマスの人です。
彼女は自らシンビオートを寄生させ、ヴェノムと共闘しますが、彼女に関してはその動機すら描かれません。
これだと話の都合上のいい宿主でしかなく、キャラクターの扱いとしては乱暴のような気がしました。
また今回登場したヌルについても、ラスボスではなく、こけおどしのような印象です。
サノスのような思わせぶりな登場で、今後SSUの中で重要な役割を背負うのかもしれませんが・・・。
ポストクレジットであったようにSSUでもヴェノムのカケラは残っているようなので、また新しいシリーズが立ち上がる可能性はあるかもしれません。
MCUのアース616にもヴェノムのカケラは残っていたと思うので、あちらの展開も依然として気になります。

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2024年9月 8日 (日)

「エイリアン:ロムルス」強かった1作目のプロット

1979年の「エイリアン」は衝撃的でその後のSF映画に大きな影響を与えました。
この作品はSF映画の世界観でありながら、ホラー映画のようなスリラー的なエッセンスも盛り込んだという意味で新しかったように思います。
その後「エイリアン2」はジェームズ・キャメロンがさらに進化させ、スリラーというよりは戦争アクション映画としてアプローチしました。
2作目が1作目とは異なるアプローチをするというのは、斬新であったと思います。
その後、3、4と続編が作られましたが、勢いは失速。
それぞれの監督が新基軸で挑戦していることは理解しつつも、リプリーが神がかったきたりなど、やや方向性としては迷走していたように感じます。
その後、リドリー・スコットがエイリアンの始まりを描く「プロメテウス」「エイリアン:コヴェナント」を送り出しましたが、哲学的な内容ということもあり、そもそもの「エイリアン」が持っていたテイストは薄かったように思います。
本作「エイリアン:ロムルス」は時代的には「エイリアン」と「エイリアン2」の間に位置するということで、そもそもの始まりである「エイリアン」に原点回帰した内容となっています。
本作の冒頭で「エイリアン」でリプリーがエイリアンと死闘を繰り広げたノストロモ号の残骸が登場します。
リプリーが始末したはずのエイリアンをウェイランドユタニ社が回収し、秘密裏に研究をしていたのです。
本作の主人公たちは劣悪な環境の植民地星から脱出をしようとしている若者たち。
彼らは廃棄された宇宙船を使い脱走しようとしますが、その宇宙船こそウェイランドユタニ社がエイリアンを研究していた施設だったのです。
施設は破壊されひとっこ一人いません。
彼らが乗り込んだことにより、再びフェイスハガーたちが活動を初め、彼らに襲い掛かります。
基本的にプロットは1作目とほぼ同じです。
圧倒的なエイリアンたちに対して、若者たちは無力です。
仲間たちが少しずつ倒されていく中で、主人公のレインが生き残りをかけた戦いをサバイブしていきます。
そもそもレインはどちらかというと慎重派で、植民地からの脱出についても流されていった感じがあります。
しかしサバイバルを通じて、より生に執着し、そのために戦うということで、覚醒していく様はリプリーに通じます。
つまりは同じプロットを繰り返ししているわけではありますが、決してつまらないわけではありません。
どのように彼らがエイリアンと戦っていくかという部分は本作ならではのアイデアもあり、飽きさせません。
元々のプロットが非常に強かったということでしょう。

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