2014年1月15日 (水)

本 「GANTZなSF映画論」

こちらの本はタイトルからもわかるようにマンガ「GANTZ」の作者である奥浩哉さんによる映画評です。
「GANTZ」と言えば2部作の映画にもなりましたよね。
僕は映画の「GANTZ」は邦画っぽくないSFセンスがあってけっこう好きなんですよね。
原作のほうは映画とはまったく違う展開で、先頃物語が終結しました。
最近の漫画家はコンピューターをうまく使って原稿を描く方も増えていますが、奥浩哉さんは中でもかなり駆使しているほうですよね。
「GANTZ」の劇中にでてくるメカなどは、もう手描きでは無理っていうくらいなディテールですものね・・・。
実際コンピューターで3Dレンダリングして描いているらしいです。
まさにこの使い方は最近の映画で3DCGを取り入れているのと同じですね。
最初っから脱線していますが、本についてです。
こちらの本では奥さんが今までに影響を受けた映画作品について描いています。
あげているのはほとんどがハリウッドで制作されたメジャーな作品。
紹介されている作品は僕もほとんど観ていて、好きな作品が多かったですね。
映画好きというと、ハリウッドの派手な映画大好き!っていう人と、ハリウッドダメでインディペンデントが好きっていう人と分かれたりしますよね。
僕はインディペンデントも観ますが、どっちかというとハリウッドの派手な作品が好きな方でしょうか。
奥浩哉さんもそういう感じらしく、バジェットをかけた映画の方がおもしろいという論を持っています。
お金をかければかけただけそれは画面に見たことのない映像を作り上げることができる。
人に驚きを与えるためには、お金をかけたほうがよいということですね。
もちろんお金をかけただけではダメで、そこにはセンス・オブ・ワンダーがないというのはもちろんです。
奥さんが影響を受けた映画として「バック・トゥ・ザ・フューチャー」をあげていました。
脚本のよさ、魅力的な登場人物、センスのある映像。
こちらの作品、僕も生涯のベスト10では必ずあげる作品ですね。
あと奥さんが紹介していたのが「インデペンデンス・デイ」。
なるほど・・・。
マンガの「GANTZ」の最後のほうはこの作品に影響を受けているのですね。
あれを一人の漫画家がやってしまうというのはまたすごいことだなと思います。

「GANTZなSF映画論」奥浩哉著 集英社 新書  ISBN978-4-08-720641-8

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2014年1月 1日 (水)

本 「女子高生、リフトオフ!」

著者の野尻抱介さんという作家は全く知りませんでした。
「女子高生、リフトオフ」というタイトルがキャッチーだったので、書店で手にとってみました。
帯を見ると「宇宙開発SF」とあったので、タイトルの割りに中身はハードSF的なものかと思いました。
出版しているのも早川書房ですし。
で、読み始めてみると割と軽いタッチで宇宙開発が描かれます。
宇宙開発技術の描写はしっかりと科学的な裏付けもあり丁寧です。
本作が出版されたのは1995年でずいぶん前なのですが、今の宇宙開発の状況を予見しているようなところもありますね。
あとまだ実用化されていない技術などでもスキンスーツなんてものにも技術的な描写をしていて興味深いです。
スキンスーツていうのは、「ガンダム」に出てくるような体にぴったりとしている宇宙服のこと。
現在使われている宇宙服はダボダボでごつく服というよりは小さな宇宙船みたいなものですから、なかなか自由に動きづらいわけです。
そういうマイナス点をなくすためにNASAでもスキンスーツはけんきゅうされているようです。
技術的描写はハードめなのですが、登場人物たちの描写はけっこうライトです。
読みごこち的にはハードSFというよりはSFのラノベのような感じでしょうか。
それもそのはずでこちらの作品、早川書房の前は富士見ファンタジア文庫に収録されていたようです。
なるほど作品のタッチ的にはそちらのほうがイメージ合いますね。

「女子高生、リフトオフ!」野尻抱介著 早川書房 文庫  ISBN978-4-15-031136-0

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本 「とっぴんぱらりの風太郎」

万城目学さんの始めての時代劇作品となります。
「鴨川ホルモー」「プリンセス・トヨトミ」など一風変わったユニークな物語を描く万城目さんが時代劇をどのように扱うか興味深いところです。
時は戦国時代、豊臣家による天下統一はされたが、秀吉が死にまた天下が動きそうな予感があるそんなとき。
主人公は伊賀の忍者、風太郎(ぷうたろう)です。
彼は幼い頃より伊賀で忍者として教育されましたが、あることでそこを放逐され、流れた先の京都でその日暮らしをしていました(まさにプータロー)。
しかし、あるとき一つのひょうたんを手に入れ、そこに憑いているもののけのようなもに出会います。
また古巣の伊賀もなにやら策動を開始している様子。
風太郎は否応なしに風雲急を告げる戦乱に巻き込まれていきます。
ひょうたんに憑いているもののけなんていうのは万城目さんらしい設定ですね。
また万城目さんは今までの作品でも関西を舞台にしていて、関西人への思い入れが強く感じられますが、本作もそうですね。
本作の後半は大坂冬の陣、夏の陣が描かれますが、そこでのエピソードはもしかすると「プリンセス・トヨトミ」に繋がったりするのかなと思って読んだりもしました。
大坂冬の陣、夏の陣のあたりは物語もシリアスで、かつ忍者ものとしての活劇描写も多く、本格的な時代劇に仕上がっていると思います。
ページ数もボリュームは多く、かなり読み応えのある作品です。

「とっぴんぱらりの風太郎」万城目学著 文藝春秋 ハードカバー ISBN978-4-16-38500-7

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本 「テアトル東向島アカデミー賞」

こちらの本は小説家福井晴敏さんが連載していた映画コラムをまとめたものです。
福井さんと言えば「亡国のイージス」、最近では「人類資金」などの作品を書かれた方で、映画好きで知られています。
紹介されている映画ですが少々偏っていて(だいぶ?)、ハリウッド系エンターテイメントものが多いです。
特撮好き、その中でも爆発好きな福井さんですので少々の偏りは致し方ないでしょう。
というより僕の好きな映画と福井さんの好きな映画はかなり似通っているので楽しく読めました。
取り上げられているのが「ダイ・ハード」「エイリアン2」(エイリアンではなくて)「グレート・ブルー」(グラン・ブルーではなくて)などなど・・・。
映画のセレクトやそのポイントなども自分の視点とけっこう似ていたので、いちいち相槌を打って読んでました。
自分が福井さんの作品が好きなのも納得してしまいました。
好みが似ているんですもんね、好きになるはずです。
後半は福井さん原作の映画が立て続けに映画化された時期(「ローレライ」「戦国自衛隊1549」「亡国のイージス」)に連載されていたようで、ややその宣伝色が強いコラムでこれはちょっと残念。
このあたりは減点ポイントですが、全体的には楽しく読めました。

「テアトル東向島アカデミー賞」福井晴敏著 集英社 文庫 ISBN978-4-08-746137-4

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2013年12月31日 (火)

本 「陽だまりの彼女」

こちらの作品は映画の方を先に観ました。
切ないラブストーリーですが、ほんわかとした雰囲気がまさに陽だまりのような感じで好きな作品です。
なので小説を読んでいる時も、浩介は松本潤さん、真緒は上野樹里さんのイメージで読んでました。
大きな流れは映画も小説も同じなのですが、細部のエピソードの順番などは違っていたりしますね。
映画の方が流れがよりしっくりくる感じがしましたが、僕の初見が映画だったからかもしれません。
後から作られた映画の方が構成をより練れているというのもあるかもしれません。
あとこの作品は音楽がひとつポイントになっているのですが、映画はそれをうまく使っていますよね。
これは映画ならでは。
映画と小説で大きく違うのはラストです。
これはどちらが好きかどうかは分かれるところでしょうね。
他の方のブログの映画レビューでは、原作を先に読んだ方では小説のラストがいいという意見もありました。
僕は映画のラストの方が好きかな。
あちらのほうがハッピーな感じで。
ビジュアルで見せられる映画的な強みがありましたけれども。

映画「陽だまりの彼女」の記事はこちら→

「陽だまりの彼女」越谷オサム著 新潮社 文庫 ISBN978-4-10-13561-6

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本 「書店ガール」

アマゾンのようにネットで本が手軽に買えるようになったり、電子書籍が普及してきたりしていますが、僕は書店でリアルに本を手にとって買うのが好きなんですよね。
ブラブラと店を流して見ていると予期していない本との出会いがあったりするので。
ベストセラーはどこのお店でも並んでいますが、時々他の店ではあまり目にしない本に出会えることもあります。
そういうのが楽しい。
それも書店の店員さんの目利きや並べ方によるものなんですよね。
本作「書店ガール」は書店の店員さんを題材にした小説です。
いわゆる「お仕事」系ですね。
お仕事系の作品は馴染みのある仕事でも知らないことなどが描かれていて楽しく読めるのですが、本作もそうです。
本の並べ方やフェアの企画でお客さんの反応が変わってくる、そういう書店ならではの醍醐味が伝わってきます。
主人公は書店の副店長でアラフォー独身の理子、そしてその部下で自由奔放で協調性がない亜紀。
二人は性格も考え方も違いことごとく対立しますが、本と書店が好きということは共通しています。
やがて勤める書店が存続の危機に陥り、二人は協力してそれを阻止しようとします。
その中で二人はお互いに認め合っていく。
王道といえば王道のストーリーですが、やはりこういう作品は読んでいて爽快だからいいですね。
こちらの作品好評だったようで続編も書かれています。
そちらも今度読んでみようと思います。

「書店ガール」碧野圭著 PHP研究所 文庫 ISBN978-4-569-67815-3

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本 「ヒア・カムズ・ザ・サン」

こちらの作品は数行のプロットがあって、それを元に着想して有川浩さんが書いた作品です。
それが「ヒア・カムズ・ザ・サン」。
文庫にはもう一つの作品が収録されていて、そちらが「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」。
こちらは同じプロットを元にキャラメルボックスが舞台にしたお話を元に、有川浩さんが書いたストーリーです。
つまりプロットは同じながらも別の物語、パラレルワールドの物語ということですね。
登場人物は多くがかぶっていますが、全く別のお話しになっています。
両作品ともいつもの有川さんのお話よりはシリアステイストが強い感じでしょうか。
「旅猫リポート」もそういう意味ではシリアスなお話でしたので、最近の有川さんの作品の傾向なのかもしれません。
特に「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」のほうがさらにシリアス色があるでしょうか。
個人的な好みでいえば、「ヒア・カムズ・ザ・サン」の方が好きかな。
真也とカオルの関係性がやはり有川作品ぽいからでしょうか。
こちらの作品、キャラメルボックスではなく、別の劇団でまた舞台になるとか。
この2作品とはまた違うお話になるのでしょうか。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」有川浩著 新潮社 文庫 ISBN978-4-10-127633-5

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2013年12月30日 (月)

本 「イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか」

80年代〜90年代前半くらいまで日本経済は絶頂を極めて、日本は世界の大国として自信に満ちていたと思います(慢心でもあったけれど)。
しかしその後バブルの崩壊があって、失われた20年があって、最近ではアベノミクスでちょっと調子が上がってきた感じはしますが、まだ自信回復まではきていません。
さらに隣国である中国や韓国が経済を伸長させているため、彼らは自信に溢れ、その勢いを買ってか、日本に対してもいろいろなことを言ってきます。
そういうようなこともあって日本人からすると、他国から尊敬もされないなんか自信喪失な感じがありますよね。
ところがどっこい、イスラムの国々では日本という国、その文化というのはとても評価され、また日本人に対しても尊敬の気持ちを持っている人が多いということ。
イスラムでは中国や韓国よりも断然日本のほうが評価が高いんですね。
歴史的な文化、また先進的なテクノロジーを開発していること、またそれを生み出す国民性、そういうことをひっくるめて日本好きが多いということです。
どうしてそうなのかというと、歴史的な背景というのがあるようですね。
イスラム世界は19世紀から20世紀にかけて列強各国に浸食されていました。
特に南下政策をとるロシアとはしばしば対立をしていました。
しかし近代化が進んだヨーロッパ勢になかなか対抗できません。
そんななかアジアの小国であった日本がロシアに勝利したという報(日露戦争)がイスラム諸国にもはいりました。
大国ロシアが破れたと知らせは多いに溜飲を下げたことでしょう。
そしてそれを成し遂げた日本という国に興味が深まったということです。
日本人は勤勉で、成すべきことをこつこつとしていき、そして新しいものを生み出していく、そういったことが彼らに評価されたました。
また色々な人がイスラムとの関係性作りをしてきたということもあります。
ですので、今でもイスラムでは日本人好きが多いということなのですね。
逆に日本人からするとイスラムという言葉からは、「テロ」とかネガティブなイメージを持つ人が多いかと思います。
イスラム教もキリスト教ほど馴染みがないので、なんだかわからない人たちという感じでしょうか。
でもイスラムだからといってみんなテロリストであるわけではないし(よく考えれば当たり前)。
相手は日本のことをよく知っていて好意も持っているのだから、日本人も相手のことをよく知るようにしたほうがいいのではないかと思いました。
日本のファンになってくれる人が多いほど、国際関係上、味方を増やすということなので良いことなのではないかと感じました。

「イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか」宮田律著 新潮社 新書 ISBN978-4-10-610536-4

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2013年12月23日 (月)

本 「トワイライト」

4作目まで映画化された「トワイライト」シリーズの1作目「トワイライト」です。
今さら感はありますが(笑)。
お話はみなさんよくご存知の通りです。
映画を先に観ていますが、原作小説にかなり忠実に作られていることがわかります。
こちらのシリーズは少女の理想というか、お姫様物語のような非常にロマンティックな展開になっており、いい年をした男性である自分が読むとなんというか、こそばゆくなります。
特にエドワードのセリフはいちいち気障なので、こそばゆさが倍増しです。
映画だと字幕だし、スルッとそういう気障なセリフは流せるんですが、小説だと文字で目の前に表れますからね。
でもこういう気障なセリフを言ってほしいのでしょうね、女子は。

映画「トワイライト 〜初恋〜」の記事はこちら→

「トワイライト(上)」スティファニー・メイヤー著 ヴィレッジブックス 文庫 ISBN978-4-86332-013-0
「トワイライト(下)」スティファニー・メイヤー著 ヴィレッジブックス 文庫 ISBN978-4-86332-014-7

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2013年12月22日 (日)

本 「ガール」

奥田英朗さんの作品で、昨年だったか映画化にもなりました。
本作は5編の短編集ですが、映画はそのうち4つのエピソードを取り上げてそれぞれの短編の主人公たちを友人という設定にして一つの物語にしています。
この作品は30代を過ぎた女性を描いています。
主人公はそれぞれ自分がやりたいこと仕事をバリバリとしながら過ごしてきた女性ですが、ふと30代になり気がついた時いろいろと不安な気持ちが起こってくる、そういった女性の心情を描いています。
「ヒロくん」の主人公聖子はやり手のキャリアウーマンで、結婚しているけれども子供なし。
親からは子供を作れとうるさいし、会社では昇進したのは良いけれども、年上のいうことを(女だとバカにして)聞かない部下もできた。
旦那のヒロくんはマイペースで会社勤めをしているが、実際は聖子のほうが給料もよく、ヒロくん本人は気にしていないものの聖子は世間体が気になる。
2作目の「マンション」はマンション購入に悩む独身OLを描きます。
マンションを買ってしまうと、それでもう独身がフィックスされてしまうのではないか、でも憧れの家ももっていみたいという想いに逡巡します。
3作目の「ガール」は映画でもメインになった話ですね。
バリバリと楽しく仕事をしている主人公と、その得意先の真面目なOL。
女らしくいるってことは働くことと両立できるのか、どうなのか。
4作目「ワーキング・マザー」は子育てと仕事の両立に悩むシングルマザーのお話。
これはけっこう悩ましく思っている方も多いでしょうね。
5作目「ひと回り」は、新入社員に一目惚れしてしまったお局チックなOLの話。
映画とは違ったビターな終わり方ですね。
本作は、等身大の女性の悩みが描かれいるので女性の共感も高いかもしれません。
ぶっちゃけ男性でもずっと独身だと周囲にいろいろ言われるわけで独身の女性と同じような悩み等も持っていたりするので、そのあたりは共感できましたよ、うん。
一度この作品を読むと映画の方はよくまとめてあるなと感じます。

「ガール」奥田英朗著 講談社 文庫 ISBN978-4-06-276243-4

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