「十一人の賊軍」正義と正義の戦い
はみ出し者たちが勝ち目のない戦いに挑むという物語は「七人の侍」をはじめ時代劇に限られずいくつもありますが、燃える設定です。
彼らの運命は破滅に向かう予感が漂いながら、それでもそれぞれが信じるものに従って、生きる。
命を燃やし尽くすという生き様に心が揺さぶられるのでしょうか。
本作もそういう心揺さぶられる作品の一つとなると思います。
特筆したいのは、主人公の一人である鷲尾を演じる仲野大賀が素晴らしく良いです。
今まで数々の作品に出演していて、いずれでもいい味を出しているバイプレイヤーというイメージがありましたが、本作では堂々の主演です。
最後の戦いに挑むときのまさに鬼気迫ると形容できる彼の様子はまさに魂が揺さぶられました。
信じていたものに裏切られ、その上で自分の信念に殉ずる潔さ。
彼はNHK大河ドラマ「豊臣兄弟」でも主演を務めることが決まっているので、これからも活躍が期待されますね。
本作の舞台となる時代は江戸末期。
異なる価値観が大きくぶつかり合う、激動の時代であり、多くのドラマが生まれています。
正義という言葉はどの立場に立つかで変わるもので、この時代も幕府側に立つか、新政府側に立つかで同じ出来事でも大きく見え方が変わります。
正義というものが立場によって変わるということを示しているのが、阿部サダヲが演じる家老溝口。
彼は小藩である新発田藩が激動の時代の中で生き残るために策を弄します。
彼は藩と領民を守るために動いているため、その立場から見れば正義と言えます。
彼は、彼が信じる正義のためであれば、人として非道であることも断行しようとします。
しかし、本作で描かれる決死隊から見れば、義を通さず、信を裏切る行為です。
彼らから見れば、溝口こそが悪であり、討ち果たさなければならない敵となります。
溝口から見れば、決死隊の面々は悪を成したものであり、最後にその命を正しいことに使うことは何も恥ずることではないと思っているのでしょう。
異なる立場からの正義のぶつかり合いが最後の戦いでヒリヒリとした緊張感のある肌触りとなっていました。
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