2015年12月29日 (火)

「クリード チャンプを継ぐ男」 二人の父親

まさかの「ロッキー」の続編、というか、どちらかと言えばスピンオフかな。
タイトルにある「クリード」とは、ロッキーの人生の中でも最大のライバルであり、親友でもあるアポロ・グリードの名です。
「ロッキー・ザ・ファイナル」でシリーズは完結していたので、続編はいかがなものかと思ったのですが、ロッキー自身の物語ではないということなので、納得できました。
監督はこれが長編2作目のライアン・クーグラーという方。
全く知らない人なのですが、彼がスタローンに脚本を持ち込んで作られることになったということです。
「スター・ウォーズ」もそうですが、オリジナルの作品が多くの支持を受けて、それを思い入れがある人が作る側に回って、物語を紡いでいっているわけですね。
そういう人が作っているからか、物語自体はひねったところはなく、何ももっていない若者が努力によって栄光を勝ち取るというアメリカン・ドリームを絵に描いたような王道です。
最近はストレートな感動物語というのが少ないので、かえって新鮮で、安心して観ることができました。
主人公のアドニスは現代っ子らしく、若い頃のロッキーのようなハングリーさはありません。
かつてのロッキーはまさに生きていくために戦っていくというところがありました(まさに野獣の目)。
しかしアドニスはアポロの財産を引き継いでいるため、彼自身は生活に困ることはありません。
けれどなぜ危険を冒して、彼はボクシングに挑むのか。
戦うのか。
彼は、彼が何者であるかをはっきりさせるため、自らのアイデンティティを明らかにするために戦うのです。
アドニスは会ったことがない、偉大な彼の父親アポロに憧れを持っていました。
しかし、その偉大な父親に自分は追いつくことができるのか、追いつきたい、でも追いつけなくかったら・・・。
そういった不安に彼は悩んでいたのでしょう。
だから彼はアポロの子とはロッキー以外には言わず、本当の母親の苗字を名乗っていたのです。
それは彼自身が自らのアイデンティティを決めきれていないことであったのだと思います。
けれど、試合をするためにクリードの名を名乗るようになり、戦う中で彼はアポロの子であることに引け目を感じるのではなく、そういうこともひっくるめて自分自身であると自覚することができたのでしょう。
それはアポロの子であるから、ということではなく自分を認めてくれるロッキーやビアンカ、そしてチームの仲間たちの存在があったからだったと思います。
ちょっと話が外れますが、ラストのファイトでアドニスが相手の攻撃でまぶたを切った時、ドクターストップがかかりそうになる場面があります。
ドクターがアドニスに「指が何本見える?」と聞いた時、チームのカットマンがさりげなくアドニスに指の本数と同じ数タッチしてあげるんですよね。
おそらくアドニスはその時見えてなかったと思うのですが、カットマンは彼がどうしても試合をしたいだろうと思ってサポートしたのでしょう。
こういうさりげないシーンから、ロッキーをはじめチームのメンバーがアドニスにとって家族のような存在であるということが伝わってきます。
アドニスは彼を認めてくれる家族を得、自分のアイデンティティを感じることができたのだと思います。
最後の戦いで、彼はチャンピオンにかつてのロッキーのように食らいついていきます。
アポロ譲りのスピードのあるラッシュ。
ロッキーのような重いボディ。
アドニスにとってアポロも、そしてロッキーも父親のような存在かもしれないですね。
彼は二人の父親を引き継いでいく。
邦題のサブタイトルにある「チャンプを継ぐ男」」のチャンプとは、アポロとそしてロッキーの二人を指しているのでしょう。

中盤にある試合の中で2ラウンド分、ゴングからKOまでを長回しで撮っていたのはびっくりしました。
もしかするとどこかでCGで繋いでるかもしれないのですが、なかなか見たことがないシーンだったので驚きました。
本作のテイストは全体的に元々の「ロッキー」の雰囲気があるのですが、ところどころこのような現代的なカメラワークとかが入っているのですよね。
若い監督の意欲を感じました。

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2010年1月23日 (土)

「サロゲート」 突き抜け感がない

なんとなーく、なかったことにされてしまっている「ターミネーター3」の監督、ジョナサン・モストウの最新作です。
僕としても「ターミネーター3」は「なんだかな〜」という感じだったので、本作についても過剰な期待はしていませんでした。
それでもこういうSF的な作品は好きなので、初日に行ってきました。

で感想と言えば、やはり「なんだかな〜」という感じがしました。
これは「ターミネーター3」も同じような感覚になったのですが、言うなれば「突き抜けた感じがしない」ということなのですよね。
ロボットが身代わりになって成立している社会。
これは設定としてはおもしろいとは思うのです。
ネットの普及によって、痛みも伴う直接的な関係よりも、バーチャル的な関係に耽溺してしまう人が増えていくというのは、現代社会の諷刺となっています。
またサロゲート(身代わりロボット)を操るオペレーター(人間)は入れ替わっても、見た目はわからないというのもおもしろい。
このあたりの材料はそれぞれストーリーを膨らませる余地はあると思うのです。
例えばサロゲート=オペレーターではない可能性があるという設定は、見かけと中身が違うという点で良質のミステリーとして組み上げられそうです。
また先ほどあげた社会諷刺的なところもより深められそうです。
そしてアクション。
バランスを重視しようとしたのか、これらの材料の良さが活かしきれていません。
この中のある題材を突き抜けてフューチャーした方がよりおもしろい作品になったのではないのでしょうか。

「サロゲート依存症」についてはさもありなんと思いました。
確かに突っ込もうと思えば、生理的な行為(食事や排泄など)はどうしてんだとか、出産・育児はどうすんだとか、いろんなポイントはあります。
そのあたりは諷刺であると大目に見ることにして。
アルコールにしても、クスリにしても、依存症というのの、きっかけは現実逃避だと考えられます。
あまりに日常生活が辛いから、それをまぎらわすためにそのようなモノに手を出してしまう。
それを使っている間は楽しい気分でいられるけれども、その効果はやがてきれ、また痛々しい現実に戻らされてしまいます。
なまじハイな気分を味わってしまうために、さらに現実は辛いものに感じられてしまうのでしょう。
それがたぶん依存症のサイクルであると思います。
そう考えると、「サロゲート依存症」というのはそういうテクノロジーがあるならば、そういうこともありえるであろうなとは思いました。

そういうことを考えるとこういう社会的なテーマももう少し深堀りできたのではないかと、やはり思ってしまいます。
残念だなあ・・・。

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2010年1月 4日 (月)

これは観たくなる予告編-1 「NINE」

こちらのブログでは映画については観賞後に感想を掲載してきました。
先日思いつきで、今年年末(10年冬ね)に公開される「SPACE BATTLESHIP ヤマト」の予告についての記事を書いたところ、思いのほかアクセスがあってちょっと驚きました。

そこで、ふと思いました。
映画好きの方は、どうやって観る映画を決めているのでしょう?
雑誌記事やテレビCM?
ホームページやブログ?
自分を顧みると、劇場で観る予告編で、「観たい!」と思うことが圧倒的に多いのですよね。
たぶん劇場に足を運ぶ映画好きの方ほどそうなのではないでしょうか。

ということで新年も始まりましたし、新企画ということで「これは観たくなる予告編」というのをやってみたいと思います(計画性なく思いつきなのですけど)。
予告編というのは単純に本編のいいところを繋げばいいってものではないと思います。
いかにその映画のコンセプトや雰囲気をコンパクトに、かつ印象的に伝えるか?
おもしろそうに見せなければいけないけれど、全部見せちゃいけない。
僕も自分の会社の広告を担当しているのでわかるのですが、これはけっこう難しいのです。

と前段はここだけにして。
今回ご紹介するのは、「NINE」です。
「シカゴ」のロブ・マーシャル監督で、ダニエル・デイ=ルイス、マリオン・コティアール、ペネロペ・クルス、ジョディ・リンチ、ニコール・キッドマンなど錚々たるメンバー出演のミュージカルです。

予告編は2分30秒ほどですが、中盤からついている音楽はスローなテンポで入り、それが激しく情熱的に変わります。
ミュージカル映画らしく予告編も曲にあわせた絶妙な編集をしているので、曲の調子にあわせて映像も激しく展開されます。
音楽が盛り上がるとともに豪華な出演者たちのカット、きらびやかなセット、またダンスシーンが畳み掛けるように映し出されこの映画がドラマチックになることを予感させてくれます。
予告編の最後、音楽がジャジャジャン!と終わるところで、「NINE」とタイトルが出ます。
観たいぞ、これは!と思ってしまいます。
これぞ「これは観たくなる予告編」ですね。

英語版の予告編も観てみましたが、全く編集は同じですね。
日本語版は字幕を入れ、キャスティングやコピーを入れているだけ。
やはりミュージカル映画で編集のセンスが問われますから、編集はきちんと大元で作ったものを全世界的に使っているのでしょうか。
こちら英語版の予告編です(埋め込みできないのでYouTubeでご覧ください)。

こんな調子で本企画、やっていきたいと思います。
僕が気に入った予告編を観た時にということになりますので、不定期になりますが、よろしくお願いします。

これは観たくなる予告編-0 「SPACE BATTLESHIP ヤマト」の記事はこちら→
↑「ヤマト」については0番にさせていただきました。

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2010年1月 2日 (土)

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」<予告>

予告編について記事を書いたことがないのですが・・・。
いつもやりとりさせていただいているSOARさんに教えていただき、実写版「宇宙戦艦ヤマト」の予告がテレビで流れていると知りました。
今日、シャンテシネに行ったら、劇場でも予告がかかっていました!
昨年末のアニメの「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」はけちょんけちょんに書いてしまいましたが、実写版は山崎貴監督が作るということで期待していたのです。
木村拓哉さんの古代進のキャスティングが発表時には話題になりましたが、これがけっこういいんですよ。
もともと木村拓哉さんていう方はキムタクというキャラクターを演じているようなところもあるので、アニメのキャラクターである古代には、実は親和性が高いのではないかと思いました。
あの派手なユニフォームもちゃんと着こなしてしまうところが、さすがキムタク!
グローブを口にくわえながら険しい顔をして上着を羽織るシーンが予告で流れるのですが、これがきまっています。
他のキャスティングも発表されていますが、イメージ合いそうな人が多いです。
山崎努さんの沖田艦長は予告でも流れていましたが、けっこういい感じ。
あと真田さんを柳葉敏郎さん、徳川機関長を西田敏行さんなど、イメージまんまじゃん!という感じです。
メカニカルな部分もなかなか良さそう。
波動エンジンなんかもアニメのイメージが活かされていてカッコ良い!
宇宙戦もちょっとだけしか予告では流れていませんでしたが、「ギャラクティカ」のような感じがしました。
もしや「SPACE BATTLESHIP ヤマト」というタイトルは「SPACE BATTLESHIP GALACTICA」(「ギャラクティカ」の英文タイトル)をものすごく意識してる?
意識しちゃって下さい!
あちらのBATTLESHIPに負けないくらいの作品を期待しております。

ところでスターシャは出てくるのかな?
出てくるとしたら誰が演じるのだろう?
あとデスラー総統は顔を青塗りした伊武雅刀さんでお願いしたい!
素顔で「ヤマトの諸君」と言ってもらいたいのですけど(お笑いになっちゃうか・・・)

そういえば山崎貴監督は「ジュブナイル」で香取君、「BALLAD」で草彅君、今度の「ヤマト」でキムタクと組んでるんですよね。
もしやSMAPコンプリートを目指してるのかしらん。

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」の公式サイトはこちら→

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