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2025年10月 5日 (日)

「沈黙の艦隊 北極海大海戦」信条に真摯に行動する

2023年に公開された「沈黙の艦隊」の続編です。
大沢たかおさんが演じる主人公海江田は、「キングダム」とはまた違った、静かなる存在感を出していました。
ですが、元々大作であった原作を踏まえた映画化作品であったので、前作はまさに導入部分といったものでした。
サブタイトルにあるように本作は、東京から国連があるニューヨークを目指す「やまと」の旅路が描かれ、特に北極海でのアメリカとの潜水艦が一つのクライマックスとなります。
潜水艦戦というのは相手が見えない中での戦いであり、心理的な駆け引きが潜水艦映画の見どころとなり、極限の中での人間性が描かれ今までも数々の名作が作られてきました。
しかし本作の主人公海江田というキャラクターは人間離れして冷静沈着であり、動揺する姿を見えないタイプです。
ですので「やまと」側では極限状態を感じるシーンはありません。
その代わり相手側のアメリカ側にはドラマが描かれていて、ここは共感できました。
「やまと」と戦う最新鋭の潜水艦「アレクサンダー」を率いるのはベイツ艦長と言い、名門の海軍一家の養子となった男です。
彼の義理の兄に対する尊敬と愛情、軍人一家としての誇り、そして自分の鑑の部下たちへの責任の中で、大きな決断を迫られる部分は引き込まれる部分がありました。
本作で登場してくる人物の多くはプロフェッショナルです。
軍人も、政治家も、ジャーナリストも。
それぞれに自分の信念を持ち、行動しています。
登場人物たちは、プロであり、そしてかつ人間でもあり、彼らは己が信じる考えに真摯に行動しようとしています。
それぞれの信条は違うかもしれない。
互いにその信条に真摯に行動しようとしています。
海江田とベイツ艦長、衆院選に挑む元与党の政治家たちもそうです。
そしてそれぞれ相手も真摯に行動していることがわかるからこそ、終わった後は互いに尊敬の意を持つことができているのだと思います。
打算ではなく、信条に真摯に行動するというのは、美しくもあります。
本作での最終局面はニューヨーク沖での「やまと」VSアメリカ空母艦隊です。
物量に任せた攻撃を加えるアメリカ海軍に対し、「やまと」は魚雷を撃たずにピンを打つだけにとどめてメッセージを発します。
「戦う意志はない」と。
それは圧倒的に「やまと」に不利な戦いであるのですが、そこでも海江田は己の信条に真摯なのです。
結果、ベネット大統領が言うようにアメリカが一方的に「やまと」を攻撃しているように見える、という構図を作りました。
原作ではこの後、海江田のニューヨークの演説になり、大きな戦闘シーンなどはなかった記憶があります。
3作目はあるのでしょうか。
そこで海江田の理想がどのような形で語られるか、見てみたいですね。

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