「宝島」希望は失われた
沖縄の基地問題は度々ニュースで報じられていて、沖縄の方々が激しく抗議をしている様子を見てきました。
沖縄だけが基地負担を強いられていることへの怒りは分かりつつも、現在の東アジア情勢を考える限り、基地自体を無くすこともまた難しいと思っています。
なので、どうしてもここまで激しく抵抗をするのだろうか、冷静に考えれば違った答えになるかもしれないのに、と感じていました。
本作では自分も含め多くの内地の人間が知らない、戦後の沖縄が語られています。
戦中の話は、今までも映画や報道なので度々触れてきました。
しかし、本作を見て、戦後から本土復帰までの年月はほぼ知らなかったことに気付かされました。
当時の沖縄はアメリカの占領下でした。
駐留しているアメリカ兵が何か犯罪をしても、ほぼ罪に問われることはありません。
そしてまた日本政府も沖縄返還を目指しつつも、沖縄の人々の苦しみに寄り添っているわけではありません。
沖縄はアメリカと日本に二重に虐げられていたとも言えます。
こういう経験をしてきたのであれば、現在においても沖縄の人々が基地に対して大きな抵抗感を持っているというのは納得できます。
現在の東アジアの状況と合わせて、決着させるのは相当に難儀であるということを改めて認識しました。
主人公たちは、米軍から物資を奪い住民に配っていて、戦果アギヤーと呼ばれていました。
そのリーダーがオンちゃんと呼ばれる若者です。
若者たちが米軍たちへの憂さ晴らし的な意味合いで戦果アギヤーをやっている中、彼の目線は未来へ向かっていました。
得た物資を売り払った金で学校を作ったりしていたのです。
皆で米軍に忍び込んだ時に兵隊に見つかり散り散りになる中、オンちゃんは行方不明になりました。
残った若者たちは、さまざまな道を歩きます。
オンちゃんを探すために刑事なるグスク。
米軍への怒りを晴らすためにヤクザからテロリストとなるレイ。
オンちゃんを待ち続けるヤマコ。
そしてキーとなるのが、彼らが何かにつけ気にかけることになる浮浪児のウタ。
彼はハーフであり身寄りのない子です。
沖縄ですから、アメリカ兵と沖縄の女性の間に生まれ、捨てられた子であろうと思われます。
そういう意味では彼はまさにアメリカと沖縄の歪んだ関係の象徴とも言える存在です。
誤りの子であるとも言えます。
しかし終盤になり、ウタをオンちゃんが育てていたことがわかります。
オンちゃんは、ウタを産みなくなった女性が持っていたペンダントから少なくとも愛しあった二人の間から生まれたということを知ります。
ウタは誤りの子ではなく、愛の子であった。
オンちゃんはウタに希望を見たのではないでしょうか。
不幸な関係にあるアメリカと沖縄にもいつか幸せな関係になれると。
しかし、オンちゃんは亡くなり、またウタも死んでしまいます。
希望が失われてしまった。
幸せな関係は築けなかった。
それは今現在の沖縄の人々がアメリカに抱く感情につながります。
再び、希望を持つことはできるのでしょうか。
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