「少年と犬」温かいものが残る読後感
瀬々監督の作品はいつも泣かされることが多く、人の琴線に触れてくるのが上手な監督だと思います。
通常は動物ものはあまり好きではないので、食指は動かないのですが、瀬々監督なので鑑賞しに行きました。
予想通りというか、案の定というか、やはり本作でも泣かされました。
本作は東日本大震災後から始まります。
現代日本が経験したことがない、大災害である東日本大震災。
圧倒的な自然の力に対して、人間は無力であることを改めて認識した方も多かったのではないでしょうか。 本作には何人もの人物が登場しますが、それぞれ一人の力では抗いきれない出来事に直面します。
一つだけにとどまらず、次から次へと。
それぞれの人物の行き先決してハッピーエンドとは言えません。
ただし、彼らが不幸であったかというと、そうではないのかもしれません。
主人公の一人である和正は、心ならずも悪事に手を染めてしまい、家族から非難され居場所を失います。
しかし、迷い犬である多聞と出会い、そして美羽と出会っていく中で自分が生きていきたい道を見出します。 もう一人の主人公である美羽も、望んだ結果ではないけれども人として究極の悪事を行なってしまいます。
しかし和正と多聞と出会うことで自らその罪を償う決心をし、彼女もまた生きる希望を見出します。 結果としては二人の希望は果たされないわけですが、不幸せであったかというと違うような気がします。
多聞と出会うことを心待ちにしていた少年が、そしてまた多聞を失うときに、心の中にいると言います。 それは和正にとっても、美羽にとっても同じで、状況としてはつらくても、心の中に大切なものがあればそれは生きる希望となり、不幸せではないということなのでしょう。
そういう人々(や動物)と出会えたことが人生の幸せなのですよね。
彼らの運命は過酷で、見ていながら感情移入してしまったため、とても辛く、泣けてきました。
ですが、読後感は決して悪くなく、何か希望のような温かいものが残ったような気もします。
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