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2025年4月 1日 (火)

「白雪姫」安易なアップデートによる違和感

色々と話題になっている実写版の「白雪姫」です。
ディズニーのプリンセスものには大きく二つの流れがあると思います。
まずアニメーションについては、以前は守られ、まさに「白馬の王子様」を待つ存在であったプリンセスが、「ラプンツェル」くらいからか自分の意思を持ち、自分の人生を生きていこうという存在に変わっていったという流れがあります。
これは現代の女性の意識の変化に基づいていて、「アナと雪の女王」で非常に顕著になり、その後最新作の「モアナと伝説の島2」まで続いています。
これは非常に成功していて、現代女性の意識にマッチした現代的なプリンセスは多く受け入れられていると思います。
もう一つはプリンセスには限らないですが、かつてのディズニーアニメーションのヒット作を実写化するという流れです。
プリンセスものでいうと「美女と野獣」や「アラジン」などが該当します。
これは元々ヒット作をベースとしていることで、当たるという確度が高いためディズニーとしても割りのいい案件ではないかと思います。
実写化する場合も、アニメ版公開の時から時間が過ぎているので、現代女性の意識に合わせて、描かれるプリンセス像もアニメーションと同様アップデートされていることが常です。
先にあげた2作はそのアップデートをいい塩梅で行っていたと思います。
そこで本作「白雪姫」です。
こちらも実写版では大きくプリンセス像を現代的にアップデートしています。
すなわち、白雪姫は見かけがただ美しいだけの女性だけでなく、内面も美しいとされています。
また、彼女を眠りから覚ますのは、ただ美しい姫を好きなった白馬の王子様ではなく、悪政から民を解放したいという志を同じくする盗賊になっていたりします。
実写化するにあたり、プリンセスのアップデートをしようとしたのは今までの成功体験からしても、致し方ない結論のような気がします。
ただその元となった「白雪姫」がまさに「白馬の王子様」を待つ女性であるということが、ストーリーの設定の根本であるわけですが、現代女性にアップデートをするということは、その根本を変えていくということになるわけです。
元々の「白雪姫」は1937年公開で90年近く前の作品です。
時代で言えば太平洋戦争前夜です。
古い価値観をベースにしていた物語なので、それを無理矢理に現代的な女性の物語に変容させてしまったために何かチグハグな印象を与えてしまっているような気がします。
時代のギャップをどう埋めていくか、という点をあまり配慮せず、安易にアップデートしているように思いました。 ディズニーのプリンセスものの実写化でうまくやっているのは「マレフィセント」かもしれません。
これの原案は「眠れる森の美女」で、これに登場するオーロラ姫もまさに古い価値観に基づいたプリンセスといえます。
あえてプリンセスを主役とせず、その敵役を主人公にしたというのはアイデアであるように思います。
意外に敵役はキャラクターとして掘り下げられていないため、描く余地があります。
その余地に今まで知らなかった現代女性的な側面を描けたわけです。
最近の「ウィキッド」の西の魔女などもそうかもしれません。
本作は大筋の流れはそのままにわかりやすいところだけを現代的にアップデートしてしまい、そこで様々な違和感が発生しているように思いました。

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