「Flow」インディペンデントでもここまでできる
低予算のインディペンデントのアニメーション映画でありながら、本年度のアカデミー長編アニメ映画賞を受賞したのが、本作「Flow」です。
ひとことで言って、素晴らしい。
最近の3DCGアニメーションの傾向ですが、いわゆるピクサー的な3DCGぽさをなくし、手書きのようなタッチを出したような表現です。
登場する動物たちはディズニー・ピクサーのようなキャラクター化されているわけではなく、とはいえ完全にリアルタッチでもない、頃合いの良い風合い。
これがリアリティ感を持たせることと感情移入されることを絶妙にバランスをとっていると思います。
それと本作は非常に光の使い方が上手です。
森の中の木漏れ日であったり、水に照り返した光が壁に作るニュアンス、悪天候の中で遠くに霞む景色であったり。
光をうまく使っているので、空気感が感じ取れて、空間がとても広く感じます。
またこれは3D CGアニメーションならではなのですが、カメラが縦横無尽に動きます。 船の上から、水中へ、そしてまた海上に上がってそのまま空中へなどといった自在なカメラワークが随所に見られます。
それらは登場する動物たち(特にネコ)を捉えていて、彼らの冒険がより一層ハラハラしたものに見えます。
本作の舞台となるのは、頻繁に洪水が起こる世界。
人間が作ったものは随所に見られますが、一切人間の姿は見ることができません。
滅びてしまったのか、どこかに避難してしまったのか。
今の世界は、生き残った動物たちの世界です。
本作はセリフはなく、冒険を共にする動物たちは直接的にコミュニケーションすることはできません。
しかし、一緒に過ごしていく中で、彼らは確かに友情らしきものを育てていきます。
言葉がないからこそ、じんわり伝わってくる思いのようなものがあり、それがそこはかとなく胸に迫ります。
色々解釈を生みそうなのは二つ。 ネコと一緒に旅をしてたヘビクイワシは、たどり着いたチベットのような場所で不思議な光に連れていかれます。
これはUFO?それとも神様?
気高いものだけが救われるような、ノアの方舟的なものでしょうか。
もう一つ、しばしばネコたちを助けるクジラ的な存在。
しかし、これはクジラではなく、異世界めいたような神秘さがある生き物です。 この存在は世界を水で満たしてしまったことに関係があるのか、ないのか。
一つ目の謎である光とも関係があるのか、ないのか。
これらについては劇中では何ら説明はないので、どこかで聞いてみたいものです。
去年アカデミーで「ゴジラ-1.0」が低予算ながら特殊撮影で受賞したことに世界は驚きました。
本作もそうですよね。
金をかけることが当たり前になっているハリウッドに対して、インディペンデントでもここまでできることを見せた本作は意義深いですね。
去年アカデミーで「ゴジラ-1.0」が低予算ながら特殊撮影で受賞したことに世界は驚きました。
本作もそうですよね。
金をかけることが当たり前になっているハリウッドに対して、インディペンデントでもここまでできることを見せた本作は意義深いですね。
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