« 「アンダーニンジャ」薄い福田印(いい意味で) | トップページ | 「野生の島のロズ」さまざまなテーマをエモーショナルにまとめ上げた »

2025年2月11日 (火)

「ショウタイムセブン」仮面の奥に触れてほしい

あるラジオ番組に男から電話がかかってくる。
男は発電所に爆弾を仕掛け、それを爆破すると予告。
主人公のアナウンサー折本は彼を挑発してしまい、そして爆破は実行された。
そこから前代未聞の爆破テロ犯とアナウンサーのやり取りの生中継が始まる。
企画としては非常に面白くなりそうなプロットです。
しかし、見ている途中から座りが悪い印象があり、それが最後まで続きました。
なぜなんだろう。
一つは主人公、折本が最初から終始仮面をつけているようで、その内面が見えにくかったことにあるかと思いました。
テレビカメラの前で彼が犯人と交渉し、追及する姿は当然、公平性を貫くキャスターとしての仮面を被っていると思います。
マイクを切ったり、カメラ前を離れた時に見せる野心的な部分も彼の本来の姿でしょう。
しかしいずれにしても見ていて側からすると鼻持ちがならない部分があるキャラクターであり、共感性は乏しい。
しかし、ラストで明らかになるように彼自身も秘密を持っている。
当然本人はその秘密を知っているわけで、次第に事件が確信に迫っていく中で、内面で葛藤はあるはずですが、それはあまり感じられない。
ですので、最後の告白もやや唐突感がありました。
さらには最後の「楽しかった」という発言も、そのような彼の性格があまり触れられていなかった(彼はずっとキャスターとしての仮面を被っていたため)ため、これも突然な印象が拭えません。
主人公が秘密を持っているプロットはどの程度、それを主人公の行動の中で匂わせるかはとても難しいと思いますが、この計算があまりうまくいっていない印象でした。
演出プランの課題のような気がします。
個人的な印象ですが、阿部寛さんはキャラクターとして一つの軸が通った人物を演じると、映画全体の芯となるような存在感が出てくると思います。
本作はこの軸がとても曖昧で、そのため仮面のキャスターとしての存在感ばかりが強く出てしまったため、共感性のないキャラクターが物語の中心になってしまった気がします。
そのため見ている側としては共感をする人物が探し出せず、私の感じたような座りの悪さを感じてしまうのではないでしょうか。
面白くなりそうな人間関係も描けそうだったと思うんですよね。
長年コンビを組んでいた伊東との間にも何かしらのドラマを作れそうでしたし、犯人との間にも共感と後ろめたさのようなものが描けたように思います。
人物の描き方がもう一歩踏み込めたら、より魅力的になったような気がします。
プロットは面白そうだっただけに勿体無い。

|

« 「アンダーニンジャ」薄い福田印(いい意味で) | トップページ | 「野生の島のロズ」さまざまなテーマをエモーショナルにまとめ上げた »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「アンダーニンジャ」薄い福田印(いい意味で) | トップページ | 「野生の島のロズ」さまざまなテーマをエモーショナルにまとめ上げた »