「野生の島のロズ」さまざまなテーマをエモーショナルにまとめ上げた
本作は2回鑑賞しました。
1回目は一人で字幕版で、2回目は娘と一緒に吹き替え版での鑑賞です。
吹き替え版の方がよりエモーショナルな感じがして良かったですね。
ロズ役の綾瀬はるかさんの声がとても合っていて、次第にロズが感情を持っていく様子のが、声のトーンで丁寧に演じられていました。
加えて本作は映像表現がとても美しい。
最近の3D CGアニメは、以前のようないかにもコンピューターで作りました、というような表現から、ハンドメイドの絵のようなタッチが表現されたものに進化してきています。
生命感の溢れる島の自然や生き物がこのようなタッチで描かれているので、息吹きのようなものも感じられます。
これには実写映画やセルアニメとは異なる表現の可能性を感じます。
本作はさまざまな要素が盛り込まれていて、色々な視点で見ることができます。
それでいて詰め込み過ぎの印象もなく、非常にうまく構成されているように思えました。
まず一番、個人的に心に響いたのは、親と子、子育ての視点です。
ちょうど自分がまさに子育て真っ盛りだからかもしれませんが。
ロズとガンのキラリは当然ながら本当の親子ではありません。
ロズは初めは親とは何かは知りません。
キラリを育てながら、それを学んでいくのです。
これは自分自身でも感じることで、いろいろ失敗をしながらも、子供が生きていく姿を見ながら、親というものを学んでいくような気がしています。
そして、子育てにはタイムリミットがあります。
人間だったら、大学に入ったり、就職したりするときに子離れがあります。
ロズの場合は、毎年の渡りの時までに、キラリを一人前のガンとして育て上げなくてはなりません。
そして、その時が来たら子供は親元を離れていく。
キラリが見送るロズの側を飛び、堂々と旅立っていく姿を見せてくれるシーンは思わず涙しました。
自分の子供もそういう時が来るのだろうな、と。
キラリの生まれた時から、旅立つまでがフラッシュバックするシーンがありますが、とてもわかる気がします。
もう一つの視点は、皆の危機の時に一致団結できるか、ということです。
これについてはややファンタジー過ぎる感じもしなくもないのですが、今の時代を踏まえているように感じました。
地球が危機的状況にあることは皆わかっていますが、日々繰り返されるのは自分の都合を押し付けること。
これを続けていると共倒れになりかねません。
一旦は自分の主張は引っ込めて、全体のためにできることをやっていく必要がある。
もしかすると身を削らなくてはいけないこともある。
ロズたちが暮らす島は地球そのものと言えます。
寒冷化、もしくは熱帯化するような危機が訪れた時、地球に住む人々は、あの島に住む動物たちのように協力できるのか。
そういう問いを投げかけているように思いました。
このように多くのテーマを持っている本作、私の娘にも届いていたようで、鑑賞後は感じ入っていました。
良作のアニメーションだと思います。
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