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2025年1月23日 (木)

「機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning」What if...?

<ネタバレしています>
MCUを展開するマーベルのアニメーションで「What if...?」というシリーズがあります。
MCUには神聖時間軸という概念があり、これがいわゆる正史と呼ばれるものです。
「What if...?」は正史では起き得なかった出来事が起こった時間軸、「もしも」が起こった時間軸での物語を描くユニークなシリーズです。
本作は始まるやいなや、聞き慣れた「機動戦士ガンダム」のオープニングの音楽とナレーションが流れます。
メカデザインはリファインされているものの、3機のザクがサイド7に侵入していきます。
カットもオリジナルを踏襲した徹底ぶり。
しかし、一つ違うところがあります。
オリジナルではサイド7に偵察に行くのは量産型ザク3機ですが、本作では1機が赤いカラーリングをしています。
そうです、赤いザクにはあのシャアが登場しているのです。
シャアと副官ドレンの会話で、ザクのパイロットの一人であるジーンのザクが不調のため、代わりにシャアが出撃したと語られます。
この物語は「もしジーンのザクが故障したら・・・」というWhat ifの物語なのですね!
ジーンのザクが故障したため、シャア自身がサイド7に侵入。
オリジナルでは侵入したザク2機はアムロが乗るガンダムに破壊されますが、もしもの世界ではガンダムをシャアが奪取、さらにはホワイトベースもジオンが奪い去ります。
その結果、戦争の行方は大きく変わり、連邦はジオンとの戦いに負けてしまうのです。
本作は公開前より、サンライズと庵野秀明氏率いるカラーがタッグを組むということで話題となっていました。
本作の監督は庵野さんの作品を支えてきた鶴巻和哉さんですが、脚本には庵野さんも参加しています。
庵野さんはご存知の通り、「ゴジラ」「ウルトラマン」「仮面ライダー」などを「シン」シリーズとして、リファインして来ました。
庵野氏はそれぞれの作品を非常にリスペクトし、オリジナルのテイストやカット、音楽などを使いながら、彼らしい物語を再構築して来ました。
それを踏まえれば、本作がオリジナルの「ガンダム」を踏まえたものになることは想像できました。
公開前より本作は宇宙世紀ものになる、もしくは宇宙世紀のマルチバース的な展開になるという予想がありましたが、それが当たった形ですね。
本作の主要キャラクターとして、シャリア・ブルを持ってくるところは庵野さんのマニアックさが出て来た感じがします。
本作のメインストーリーは一年戦争の数年後が舞台となります。
そこは連邦が負けた世界です。
主人公マチュは偶然サイコミュを搭載した新しいガンダムジークアクスに搭乗し、モビルスーツのバトルで勝利します。
彼女はその時「キラキラ」した世界を見ており、それに惹かれます。
これはオリジナルの「ガンダム」においてアムロやララァが見た世界と同一のものと考えられます。
本作にはララァは登場しませんが、ララァがニュータイプの力を発揮する時に聞こえてくる「ラ、ラ・・・」という音は微かに聞こえてきていたように思います。
本作において庵野さんは彼が考えるニュータイプというものを描くのではないか、と思いました。
そもそもオリジナルの「ガンダム」の映画が公開された頃、ニュータイプとは何かという議論はさまざまな雑誌で多くの人が論を展開していました。
私も中学生頃でそういう文章を真剣に読んでいたのを覚えています。
庵野さんはその頃大学生くらいだと思うので、まさにそういう話をしていたのではないかと考えます。
宇宙世紀はシリーズが長くなり、多くの人が関わるようになり、ニュータイプという概念も人によって変わり、少しづつ変容して来ているよな気がします。
最近の新しい宇宙世紀もの、特に福井晴敏さんが関わるUCやNTはニュータイプがややオカルトチックに描かれているような気がしていて、個人的にはちょっと違うかなという印象を持っていました。
庵野さんはこの辺りの流れに対して、彼の解釈のニュータイプを描くのではないかと思っています。
まだ物語は始まったばかり。
しかし、ポテンシャルは感じましたので、今後の展開を楽しみにしたいと思います。

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2025年1月19日 (日)

「室町無頼」今までにない時代劇ヒーロー

時代劇好きなんですが、映画化やドラマ化される時代というのはかなり限られています。
戦国時代や幕末などのドラマチックな要素がある時代が取り上げられやすいと思います。
最近でこそ、NHKの大河ドラマで平安時代や鎌倉時代、江戸時代中期が取り上げられていますが。
本作で取り上げられるのは、室町時代。
この時代を扱っている映画は、個人的にあまり記憶にないですね。
本作が舞台となるのは室町時代末期、天変地異や飢饉が起こり、人々がどん底のような暮らしを強いられている時代です。
多くの民が餓死し、世の中が荒れ果てていました。
世情が荒れる中、次第に幕府の威光は翳り、次第に大名たちが力を持つようになり、最終的には応仁の乱が起こり、戦国時代へと時代は移ります。
この世紀末的描写は本作でも冒頭から描かれており、まさに世紀末といった様相です。
スタッフたちは企画の時から「マッドマックス」や「北斗の拳」をイメージしていたということです。
民が搾取され地獄のような苦しみに苛まれる中、各地で徳政一揆が発生します。
そのうちの一つ寛正の土一揆を指揮したのが蓮田兵衛という浪人、本作の主人公です。
まさに彼は弱き者のために立ち上がるヒーローです。
本作は画作りや音楽などからわかるように往年のマカロニウエスタンを意識しているように思いますが、それらに登場する流れ者の主人公のようでもあります。
兵衛を演じるのは大泉洋さん。
兵衛は役割的にはさすらいのヒーローなのですが、大泉さん自身とした飄々とした佇まいがかけ合わさって、独特なキャラクターとなっていると思いました。
飄々とした姿と切れ味鋭い兵法者としての顔が見られ、今までにない時代劇ヒーローとなっていたと思います。
本作のクライマックスは一揆となり、京都守護と一揆側との大人数の激突になります。
この大規模なアクションシーンは非常に力が入っていて見応えありました。
最近ではなかなか見られない規模感であったと思います。
さらには長回しなども多用しており、その場にいるような臨場感がありました。
兵衛に拾われ、一人前の兵法者として育てられた才蔵の1カット長回しのアクションシーンがありますが、これが大変カロリーがかかっているシーンで、息つく暇がありません。
当然カットはわからないように割っているとは思いますが、カメラが縦横無尽に動き回り、かつ才蔵を演じる長尾謙杜さんのキレがあるアクションは見事。
久しぶりに見応えのある時代劇アクションを見せてもらいました。

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2025年1月13日 (月)

「劇映画 孤独のグルメ」腹が減った・・・

腹が減った・・・。
みなさんご存知の通り、「孤独のグルメ」は昨今の料理ドラマのブームの先駆けとなったドラマシリーズです。
放送されているのは深夜枠なので、このドラマはまさに「飯テロ」。
紹介されるのが気取った店でないところも個人的には大好きなところです。
その「孤独のグルメ」が映画になるというのを聞いたのはいつだったでしょうか。
聞いた時に楽しみになりつつも、いくつか不安を感じたところもありました。
一つはこのドラマを長時間の尺で構築できるのだろうかという点でした。
テレビドラマは30分という尺で、そのうちほとんどは井之頭五郎が食べているシーン。
ドラマと言いつつ、他のキャラクターとの絡みはほぼありません。
そこがいいところであるのですが、映画でそれをやるのはなかなか難しい。
ストーリーを展開するには、ドラマを展開するキャラクターが必要です。
普通のドラマであれば、主人公がその役を担うのですが、それをやると「孤独のグルメ」らしさがなくなる恐れがあります。
「孤独のグルメ」は長尺のスペシャル版もありますが、基本的には30分でやっていることを、場所を変えて展開している体になっています。
一度だけ、五郎さんの昔の恋の話が縦軸になっていたエピソードもあった気もしますが(本作で杏さんが演じているのは、かつての恋人の娘)。
本作ではストーリーをゲストキャラクターである志穂と謎の店主に負わせています。
スープを探す旅が本作での五郎の行動のきっかけになりますが、この二人のラブストーリーがストーリー上の縦軸になりますね。
思えばこの構成は「男はつらいよ」の立て付けかもしれません。
二つ目は監督を主演の松重さんがやっていることだったのですが、なかなかどうして、上記のようにしっかりとストーリーが作られていて、飽きずに最後まで見せてくれました。
松重さん、監督でもいけますね。
スープを探す旅というアイデアも良かったです。
スープというのはつまり出汁。
出汁というのは、その地で採れたり、手に入りやすいものでとられることが多いわけで、それぞれの人のソウルフードとなるものなんですよね。
海外に行って美味しいものを食べてきても、日本に帰国すると味噌汁がとっても美味しく感じるようなものです。
そして出汁は掛け合わせることによってうま味を増すことが知られています。
うま味の相乗効果というものです。
昆布のグルタミン酸と、椎茸のイノシン酸が合わさるとうま味が何倍にもなります。
うま味は食文化でもあります。
フランスに移住した老人の思い出のスープは日本の食材だけでなく、韓国の食材も用いたものでした。
違う食文化の出汁が出会って、新しい味を生み出す。
これは食材のことですが、本作では人と人の掛け合わせのことも暗示していると思います。
五郎は旅先で人と出会い、それが人と人を結びつけます。
五郎が旅先であった志穂から手に入れた食材が、店主に渡り美味しいスープの材料となる。
そのスープがまた志穂の手に渡って、彼女はラーメンを作る。
志穂と店主は会ってはいないけれど、スープでつながっています。
見る前の懸念点は、全くの杞憂でした。
今後とも五郎さんにはいつまでも美味しいものを食べて行ってもらいたいものです。
つくづく終わったら、腹が減る映画でした。

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2025年1月 3日 (金)

「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」活きるキャラクターの魅力

2025年の1作目はこちら、娘のリクエストで「忍たま乱太郎」をセレクトです。
「忍たま乱太郎」がテレビ放映されたのが1993年ということで、自分はすでに社会人になっていたので強い思い入れはありません。
子供がNHKで見ているので、それを脇で見ているくらい。
10分の短いエピソードで、基本ギャグアニメというのが個人的な印象でした。
なので、子供のお付き合いという感じで見に行ったのですが、結構楽しませてもらいました。
後で知ったのですが、歴史があるからか「忍たま乱太郎」は大人のファンも多いとのこと。
確かに劇場では多くは私の家のように親子連れでしたが、若い人同士で来ている方も多かったように思います。
本作はテレビと違い長編なので、しっかりと人物とストーリーが描かているように思いました。
私は登場人物については見たことがある、といった程度なのですが、それでも本作に登場するキャラクターたちはどれも魅力的でした。
キーマンとなる土井先生は忍者としてキレものながら、飄々として生徒に対しても愛情を持って接している。
だから生徒たちにも慕われて、それが忍たまたちを行動を起こさせるきっかけになっています。
特に三人組の一人、きり丸は土井先生と同じように両親を失っているので、特に彼を慕っています。
いつもはお金に目がない少年ですが、土井先生のために奔走します。
彼らが戦で両親を失っているバックボーンはオープニング等で感じさせていて(血を見せずに彼岸花で見せる演出は素晴らしい)、それがあるからこそきり丸の気持ちが伝わっていきます。
個人的に好きになったキャラクターはタソガレドキ城の雑渡昆奈門ですね。
愛想がないように見えて、周囲がしっかりを見て気を回す。
それでいて抜け目がない。
こういうキャラが脇にしっかりいると物語が豊かになります。
その他にも魅力的なキャラが何人もいて、大人がファンになる気持ちがよくわかりました。
あと、見どころだったのがアクションシーン。
忍者ものなので、幾つも忍者VS忍者の立ち回りがありますが、そのどれもキレがあって見応えがあります。
忍たま六年生たちと天鬼の戦いは、圧倒的な天鬼に対して、それでも六年生たちが出せる力を振り絞って戦いました。
ギリギリで六年生たちが戦っている様が殺陣からも伝わって、さらにやられて痛々しいところも描いているので、アニメでありながら、肉弾戦のような感触も感じたアクションシーンでした。
後半の雑渡と忍たまOBの戦いも、雑渡の余裕を感じさせる立ち回りは美しさすらありました。
ストーリーとしても、アクションとしても各所に見所があり、正月早々いいもの見せてもらったという感じで幸先が良いです。

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2025年1月 2日 (木)

2024年を振り返って<映画>

年が明けてしまいましたが、昨年2024年の振り返りをしたいと思います。
昨年鑑賞した映画の本数は76本で昨年に比べて10本以上の増加でした。
かなり頑張って見にいった!という感じでした。
でも最盛期は100本以上だったわけで、今思うと、なんであんなに見れたのか自分でも不思議です(ヒマだったのかー)。
さて、今回の10本はこちらです。
順位はつけてますがランキングは参考程度に。

1.「デットブール&ウルヴァリン」
2.「はたらく細胞」
3.「シビル・ウォー アメリカ最後の日」
4.「デューン 砂の惑星 PART2」
5.「インサイド・ヘッド2」
6.
「オッペンハイマー」
7.「ルックバック」
8.「小学校 それは小さな社会」
9.「ゴールデンカムイ」
10.「夏目アラタの結婚」

1.「デットブール&ウルヴァリン」

順位は参考程度にと書いておきながら、こちらは圧倒的に抜けていたようにも思えます。
マーベルが停滞していると言われている時に、現れたまさに「マーベルの神」。
20世紀フォックス時代の2作が持っていた破天荒さに加え、マーベルスタジオ制作となって思い切りマーベルのIPを使えることになって大幅にスケールアップしました。
映像的にスケールアップするだけでなく、ストーリーもウルヴァリンのエピソードが入ったことにより、「デットプール」なのに胸に来るものになっていました。
今後「デットプール」としてのシリーズは内容ですが、他の作品への参加はあるようなので、そちらを期待したいです。
「アベンジャーズ」新作でソーとのあのシーンは観れるのでしょうか?

2.「はたらく細胞」
年末に公開されたこちら、最後の最後にいいものを見せてもらえました。
レビューでも書いた通り、キャラクターも世界観もストーリーも非常に魅力的。
特にあのコミックをベースに親子二人のストーリーに再構成したアイデアは素晴らしいと思います。
何度でも観たくなりますね。

3.「シビル・ウォー アメリカ最後の日」
ホラーでもなんでもないのに、なんだか空恐ろしい気分になりました。
本当に怖いのは人間そのものかもしれません。
本作を見た後で、アメリカ大統領はトランプ氏に決定。
なんだか現実の方もあんなふうになってしまうのではないか、と怖くなります。

4.「デューン 砂の惑星 PART2」
「デューン」は映画にするにはあの世界を形作るための情報量が多いため、なかなか難しい。
1作目は登場人物や世界観の説明と物語の導入で終わってしまった感はありますが、本作は動き出す物語が圧倒的なスケールで描かれます。
追われた尊き身分の者が、幾多の困難を越えて、復讐を果たし、再び地位に帰りつくという、古今で語られてきている王道なストーリー。
大河ドラマ的な物語力があります。
続編も制作は決まったということで、そちらも期待したいですね。

5.「インサイド・ヘッド2」
誰もが経験する思春期のモヤモヤをキャラクター化した感情で表現するというアイデアが素晴らしいです。
ただアイデアだけでなく、それぞれの感情が葛藤することが魅力的なストーリーにもなっています。
私自身が共感したのは新登場したキャラクター、シンパイ。
彼女が頑張っちゃうのもわかるんですよね。

6. 「オッペンハイマー」
原爆を発明した男の葛藤を描くクリストファー・ノーランの力作。
彼の作品は価値観の揺らぎを描いていることが多く、本作もオッペンハイマーという男の中にある両面を巧みな演出で表現しています。
重いテーマでありながらも、なぜかエンターテイメントとしてもしっかりと成立させることができるのが、ノーランのすごいところ。

7.「ルックバック」
これはたまたま試写会で鑑賞。
ですので、事前情報は全くなくて、これほど評判になるとは思いもしませんでした。
話があのような展開になることに衝撃を受け、でも最後は救われた気持ちになり、心を揺さぶられました。
それがたった1時間ちょっとの作品であったことも驚きです。

8.「小学校 それは小さな社会」
これは今も公開中のドキュメンタリーです。
この作品を知ったのは、映画の情報サイトなどではなく、ニュースサイトの教育関係の記事の中だったと思います。
普段見ることができない子供たちの学校での成長の様子が描かれており、一年間で子供たちが大きく成長する様に感動しました。
自分の子供もあんな感じで頑張っているのだろうな。

9.「ゴールデンカムイ」
邦画でもこのようなアクションエンターテイメントが作れるということを証明してくれた作品。
最初から最後まで息をつかせぬ展開で圧倒されました。
それゆえ、続編がWowwowでしか見れないという展開に少々不満もあります。

10.「夏目アラタの結婚」
こちらも試写会で見ました。
先を予想させない展開で、最後まで目が話せない作品です。
圧巻なのは黒島結菜さんの演技。
彼女の演技が本作を一段高いレベルに上げていると思います。

最後にワースト三作品です。
前回は該当作品なしでしたが、今回はあります。

「変な家」
「ブルー きみは大丈夫」
「スオミの話をしよう」

です。

「変な家」
映画は人が入ったようですが、個人的に何がいいんだか全くわからなかったです。
プロットは面白そうに思ったのですが、ただのB級ホラーな展開で興醒めしました。
原作とはかなり違うということなので、どうしたんでしょね。

「ブルー きみは大丈夫」
作品自体はそんなに酷いものではなかったかもしれません。
しかし、レビューでも書いたようにタイトルがミスリードをさせていて、それが作品の印象に大きく影響を与えています。
タイトルもちゃんと丁寧に考えて欲しいものです。

「スオミの話をしよう」
三谷幸喜さんなので期待度が上がりすぎていたかもしれません。
三谷さんが長澤まさみさんを撮りたかったんだろうなあ。

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