« 「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」私を月に連れてって | トップページ | 「もしも徳川家康が総理大臣になったら」自分に期待しろ »

2024年8月16日 (金)

「デッドプール&ウルヴァリン」マーベルの神

昨今スーパーヒーロー疲れ、マーベル疲れと言われ、興行がやや停滞しているMCU。
個人的には全作品追っかけているマーベルファンなので、全然疲れてなどいないのですが、そう世間で言われるのもわからなくもない。
特に最近はマルチバース化して物語も複雑になってきているので、見るのにもエネルギーがかかるのも確か。
さて本作「デッドプール&ウルヴァリン」は公開前から、低迷しているMCUを救うかもと言われており、実際公開後のスタートダッシュは素晴らしく、関係者はホッと胸を撫で下ろしているところでしょう。
ご存知の通り「デッドプール」は20世紀フォックスで1,2作目までは公開されており、ディズニーがフォックスを買収したことにより、MCUに組み込まれました。
なぜ「デッドプール」はMCUを救う救世主となったのでしょうか。
冒頭で触れたようにフェイズ4以降のMCUはマルチバース・サーガと呼ばれているように、マルチバース化が進んでいます。
マルチバース化は大きな可能性を秘めている設定です。
「ロキ」的に言えば、フェイズ3までのMCUは単一の時間軸、すなわち神聖時間軸のみで展開されていました。
これは単一の時の流れなので、見ている我々もその歴史の中にいる感覚で見れるので見ている方としてはわかりやすい。
しかしフェイズ4から導入されたマルチバースは、複数の並行宇宙があるという設定なので、必然的に観客の視座はもっと高次にならざるを得ません。
「ホワット イフ・・・」のウォッチャーのような視座ですね。
あまり深く考えなければいいのですが、ちょっと解釈しようとすると結構頭を使います。
それが見ていてしんどいという感覚になるのかもしれません。
そこでデッドプールです。
このデッドプールは特殊な能力を持っていて、第4の壁を突破することができます。
彼は自分が作り物であることを知っていて、それをメタな話として語ることができるのです。
「デッドプール&ウルヴァリン」という作品はマルチバースとしては結構複雑で複数の世界を股にかけ、かつ時間も越える展開になっています。
なので考え始めるとかなりまた頭を使うのですが、デッドプールがそれら複雑さを皮肉混じりに笑い飛ばしているので、観客もあまり考えずに見ることができます。
マルチバース・サーガとなって一見複雑になってしまっているが、そんなの気軽に見ればいいじゃん、とデッドプールは言っているようです。
デッドプールが長年にわたって積み上げられてしまったMCU敷居の高さをぶっ壊しているように思いました。
とはいえ、この作品は敷居の高さを低くしただけではなく、コアはファンに対しても楽しめる要素を用意しています。
個人的に一番笑えたのは、キャップを演じていたクリス・エヴァンスが登場し、かつ「フレイムオン!」と叫んでくれたところですね。
これについてはすでに色々なところで書かれているので、ネタバレしますが、かつて20世紀フォックス作品として公開された「ファンタスティック4」で若き日のクリスがヒューマン・トーチというヒーローを演じていたことが元ネタになっています。
今までは別の映画会社であったため、大人の事情でMCUでは触れることができませんでしたが、今や同じディズニー傘下なので堂々と触れることができます。
「デッドプール」ならではの愛あるいじり方で、大人の事情も笑い飛ばしてくれます。
そのほかにもエレクトラ、オリジナルのブレイド、チャニング・テイタムが演じるガンビットなども登場し、呆気に取られました。
「ロキ」で登場した「虚無の世界」という設定は、MCUの申請時間軸から剪定された存在が送り込まれる場所と言われています。
つまり、MCUには入れなかったキャラクターたちがいる場所と考えられ、忘れられた存在がいる場所なのですね。
そこにエレクトラやブレイド、ガンビットなどがいるというのはこの設定と実際現実で起きた出来事(フォックスの買収)をうまくリンクさせた、神がかり的な脚本だと思いました。
このように本作はデッドプールというキャラクターの特性を活かしながら、複雑化したMCU、そしてさまざまな現実世界での出来事を、アクロバティックに辻褄を合わせることができた怪作と言えます。
カオス化、無秩序化しそうなMCUをさらにカオスな存在がまとめ上げたとでも言えますでしょうか。
そういう意味でデッドプールはマーベルの神なのかもしれません。

|

« 「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」私を月に連れてって | トップページ | 「もしも徳川家康が総理大臣になったら」自分に期待しろ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」私を月に連れてって | トップページ | 「もしも徳川家康が総理大臣になったら」自分に期待しろ »