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2024年7月13日 (土)

「ブルー きみは大丈夫」邦題がミスリードを引き起こす

のっけから言ってしまうと邦題が良くないと思います。
原題は「IF」ですが、これは「Imaginary Friend(空想上の遊び友達)」の略で、「If(もしも)」との掛け言葉になっています。
主人公の少女ビーは、一時的に祖母の家にやってきますが、その時不思議な生き物(?)たちを見かけます。
それらは本作に登場する人物たちのイマジナリーフレンドで、彼女はその姿が見えるのです。
邦題のブルーもそのようなイマジナリーフレンドの一人(?)なのですが、主人公ビーのIFではありません。
「きみは大丈夫」という言葉はブルーが発するものですが、これもビーに向かって言われた言葉ではありません。
その姿形から「となりのトトロ」のトトロを思い浮かべてしまいますが、そのような重要な役回りではないのですね。
本作の主人公ビーは幼い頃母親を失い、そしてまたもしかすると病気で父親も同じように失ってしまうのではないか、という恐ろしさを感じています。
彼女は幼い頃、彼女と遊んでいたイマジナリーフレンドのことをすっかり忘れていますが、なぜか彼らが見えるようになったのです。
これは憶測ですが、父親を失うかもしれないという不安が、彼女を母親を失った幼子のような気持ちに戻し、そのため彼らが見えるようになったのではないでしょうか。
登場するイマジナリーフレンドたちは、物語が進むにつれ、登場人物たちのかつての相棒であったことがわかります。
彼らは人間たちが忘れてしまっていても、傍らで見守っていたのですね。
ビーたちはイマジナリーフレンドとかつての人間の友達を再開させようと奮闘します。
そこで湧き上がってくる疑問がビーのイマジナリーフレンドは誰なんだろう、ということ。
そここそが本作のラストの趣向なのですが、「ブルー」という邦題がそういうことに目を向けさせにくくしてしまいます。
多くの人はこの邦題を見て、途中まで見るまではブルーこそがビーのイマジナリーフレンドなのではないかと思うのではないでしょうか。
物語だけを見るとそのようなミスリードはさせるような構成にはなっていないのですが、邦題が悪さをしています。
この邦題は誤った方向にミスリードさせる可能性があります。
このミスリードによってラストの趣向が分かりにくくなっているような気がしました。
勿体無い。

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