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2024年7月20日 (土)

「違国日記」二人の成長

子供からある時、大人になるっていうものではないのかもしれない。
子供から大人への変化はグラデーションで、徐々に徐々に変わっていく。
主人公の一人、朝はある時、両親の事故により子供から大人にならなければいけない環境に放り込まれます。
けれど、突然大人になれるわけもなく、子供のような不安を抱えながら、もう一人の主人公槙生やさまざまな人々と出逢いながら成長していきます。
朝はとても大事に育てられたようで、周りの高校生に比べてちょっと精神的にも幼い感じもありますが、性格的には非常に素直で交流をしながら、学んでいくのです。
朝を演じている早瀬憩は映画主演は初めてということですが、フレッシュさもありながら、大人にならなけれいけない不安と子供らしい無邪気さを両立させた演技もできており、今後期待できますね。
もう一人の主人公槙生という少女小説家。
彼女は朝の母、つまり自分の姉に対して許せないという気持ちをずっと持ち続けています。
槙生は子供の頃より、普通の人のようにきっちりと物事をやるということができない子で、ひたすら物語を書いていました。
設定では、槙生は発達障害的な要素があるようです。
姉はそんな普通じゃない妹が認められなかったのですね。
そのような自分の境遇からか、槙生は朝に対しては、子供のようには接しません。
子供ではなく、一人の人間として対等に相対します。
いくら子供であっても、槙生は自分の気持ちをごまかさず話します。
自分の中でも整理できないこともなんとか言葉にしようとして、真摯に向き合います。
いいからやりなさい、とは言いません。
朝がさまざまな出来事に直面し、悩み、傷ついても、彼女と対等な立場で意見を言います。
自分が正しいとは言いません。
自分はこう思うと言います。
このようにひとりの人間として朝を扱うことが、結果として朝を成長させていきます。
そして槙生も、次第に朝に対して愛情を感じていくようになっていきます。
憎んでいる姉の娘であっても。
そして朝と暮らしていく中で、姉も娘を深く愛していたことに気づきます。
愛し方は違っても、朝を愛しているという点において、初めて槙生は姉を許容できるようになります。
それは槙生にとっても成長であるかもしれません。
この槙生を演じているのが新垣結衣さんですが、昨年の「正欲」に続いて、明るさを抑えたぶっきらぼうな演技で、最近の新垣さんは新境地を開拓しているように思えます。
自分にも子供がいますが、成長していくに従い自我が強くなり、ぶつかることも出てきます。
親はどうしても、こうしなさい、と言いたくなりますが、やはり子供の個性は潰したくないという思いもあり、グッと堪えようとしてます。
槙生と朝の関係は一つの理想的な関係であるなと思いました。

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