「告白 コンフェッション」均衡と不均衡
作品の尺としては1時間15分程度と最近の映画の中ではかなり短い部類となる作品です。
ただ短さは感じさせないような濃密な緊張感がある作品に仕上がっています。
主な登場人物は主人公浅井とその友人のジヨンの二人だけ。
そして舞台が雪山の小さな山小屋という限定されたシチュエーションです。
かなり制約がある状況の中で、何がこのような緊張感を醸し出しているのでしょうか。
一つは二人の登場人物の間の不均衡、アンバランスさであると思います。
浅井は大学時代より登山部のリーダーであり、その容姿の良さから女性の目を引く存在であったようです。
ジヨンが憧れの気持ちを持つ女性さゆりも浅井と付き合っていました。
浅井とジヨンは持つ者と持たざる者の関係です。
その格差は二人の間に埋めきれぬ溝を作ります。
特に持たざる者においては、持つ者に対する劣等感や妬みなどのマイナス感情が澱のよう溜まっていきます。
その檻が溢れ出た時、二人の間の関係は崩壊します。
圧倒的な怒りによりジヨンは狂気的な暴力に走りますが、この狂気により二人の不均衡は逆転します。
これが緊張感を生んでいます。
もう一つ緊張感を生んでいるのが均衡です。
ジオンは怪我自体とその処置ミスによって、ほぼ片足が使えないという状況になっています。
対して浅井は有利かというとそうではなく、彼は高山病にかかり目がよく見えないという状況に陥っています。
舞台となるのは小さな山小屋ではありますが、それぞれに不利な条件を背負っており、思うように行動することができません。
どちらも圧倒的に有利になることができないのです。
その均衡も緊張感を高めている効果があると思います。
この不均衡と均衡がそれぞれに作用して、濃密な緊張感を生み出しています。
さらに浅井だけが知っている真実もあり、それを彼が隠さなければならないということも緊張感を増強しています(詳しくは書けませんが、その秘密も2段重ねくらいになっています)。
このように本作は緻密に計算、構築されており、コンパクトながら濃密な緊張感が味わえる作品となっています。
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