「朽ちないサクラ」戦いの始まり
警察署の広報職員が主人公というのが、興味深い。
主人公森口泉は捜査権のない行政職員だが、親友の変死をきっかけに事件に関わるようになる。
そして、彼女はその事件の背後にあるさらに大きな陰謀を解き明かしていくことになるのだ。
警察ものでは、主人公の警察官は自分なりの正義があり、それを為すために犯罪者と対峙するというのが、定番である。
しかし、本作の主人公森口には、物語の初めはそのような正義感は感じられない。
どちらかというと、たまたま事務職で就職した先が会社ではなく、警察であったというような。
たまたま職場で見聞きした話を、友人にここだけの話と、言って話してしまうような娘であった。
しかし、友人の死が自分の放った一言が原因であると悔やみ、その贖罪の意識からか、森口は事件の捜査を独自に始める。
この時、彼女にはまだ、正義という行うという意識はなかったと思う。
少しでも自分が行ったことがどのように友人の死につながったのか、ということを明らかにしたいという極めてプライベートな動機であったのだろう。
彼女は友人の死に対する責任を感じているからか、劇中ではほぼ笑わない(ただし友人との回想シーンでは、よく笑っているので、元々そのような性格でないことはわかる)。
しかし、友人の死の真相を追っていく中で、次第に意識が変わっていくようにも思えた。
事件に関わっているらしいカルト教団、そしてさらに事件を影で操っている者の存在・・・。
黒幕と対する時、彼女の佇まいには静かな怒りのようなものがあった。
彼女の中で正義感が目覚めていくように感じた。
物語の最後に森口は警察官を志す決心をする。
私はそれが、彼女の「戦いの始まり」だと思った。
タイトルにあるサクラは、公安を指す隠語であることは、警察小説好きとしてはすぐに察しがついた。
それに「朽ちない」とつくので、おおよその展開は想像がつく。
森口の戦いは彼らとの戦いなのだろうか。
最近のコメント