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2024年3月30日 (土)

「コヴェナント/約束の救出」自己との戦い

アメリカ軍のアフガンからの撤退前、彼らはアメリカが支えるアフガン政府の脅威となるタリバンの勢力を削ごうと躍起になっていました。
しかし、タリバンは地元の地の利を活かし、なかなかアメリカ軍に尻尾を掴ませません。
タリバンを叩くには地元の情報を得ることが欠かせないわけですが、そこで地元でリクルートする通訳が重要となります。
彼らはタリバンからすれば祖国を売る裏切り者でありため、アメリカ軍は彼らを雇う時の条件として、アメリカへ暮らすためのビザの提供を行います。
主人公の一人アメリカ軍人のキンリーはまさにアメリカが守る自由を信じる典型的な軍人です。
彼はタリバンの爆弾製造工場を探すという任務についていますが、そのためにアーマッドという通訳と組みます。
アーマッドは非常に知的であり、ただ通訳をするだけでなく、得られた情報をどう解釈すべきかという点でキンリーに協力をします。
初めはそれをキンリーは鬱陶しく感じ、またアーマッドもアメリカ軍人に対して素直にものを聞くこともなく、両者の関係性には最初は緊迫感があります。
しかしキンリーはアーマッドの情報と解釈により、危機を脱することにより、次第に信頼していきます。
またアーマッドもキンリーの行動に嘘がないことに気づき、彼もまた信頼していきます。
後々彼らの行動からもわかりますが、彼らに共通しているのは価値観であると思います。
目の前にいる危機に面した者を救わなければならないという正義感。
借りは返さなくてはいけないという誠実さ。
これらが彼らに共通した価値観です。
生まれもそれまでの人生も全く異なりますが、それが二人の共通点なのです。
まずアーマッドが彼らに共通する価値観の危機に面します。
タリバンの罠にハマり、キンリーの部隊は、キンリーとアーメッドを残して全滅。
そしてキンリーは自分では歩けないほどの重傷を負ってしまいます。
キンリーを置いていけば、アーメッド自身は確実に助かることができる。
しかし、彼はキンリーを手押し車に乗せ、100キロ以上も離れたアメリカ軍基地目指して、徒歩で踏破します。
途中いくつもの危機がありますが、逡巡しながらもあーメッドは彼自身の信条を守り通します。
無事キンリーは自国に帰国し、平和な日々を過ごしますが、アーメッドがアフガンを脱出できず、今もなおタリバンに裏切り者として追われていることを知ります。
アメリカで手を尽くすものの、彼を脱出させるのは叶いません。
最後の一手は、キンリー自身がアフガンに再び赴き、脱出の手引きをすること。
彼もまた逡巡します。
妻や子たちとの平和な日々を捨て、再び戦場に向かうのかと。
彼は命を救われたことによる呪いにかかったとも言えます。
しかし、彼もまた自らの心情を守り、アーメッドを救うためにアフガンに向かうのです。
本作は単なる友情物語というのではなく、自らの信じる価値観を自ら裏切るのか、否かという自己との戦いを描いているように思いました。
敵はタリバンではなく、逃げようとする自分自身なのです。
本作の監督はガイ・リッチー。
題材的には彼らしくなく、意外なテーマを選んだなと思いました。
が、彼らしいカットもいくつかありました。
キンリーが重傷を負い、痛みを和らげるためにアヘンを打たれた時の彼の回想シーンは、ガイ・リッチーらしいイメージのカットの重ね方がありました。

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