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2024年1月27日 (土)

「ウィッシュ」視線が過去に向いている

ディズニー100周年記念となる作品と大々的に公開されました。
私は最近はディズニー作品はコンスタントに見ているのですが、子供の頃はあまり見ていませんでした。
本作は100周年記念ということで、今までの作品のオマージュがいろいろと入っているようなのですが、そのためあまりわからなかったです。
日本では割と観客は入っているようなのですが、アメリカなどでは期待ほどには動員数は少なく、また批評的にも芳しくありません。
私が最近ディズニー作品を見ているのも、子供向けであることは基本としつつ、しっかりとキャラクターを描けている点を評価しています。
その点において本作は個人的にも物足りないものとなりました。
本作はディズニー全盛の頃のアニメへのオマージュが強いためか、悪い魔法使いとそれに立ち向かうヒロインという形をとっています。
それ自体は悪いということはないのですが、ヒロインもそれに対する魔法使いも、行動のモチベーションが抽象的です。
最近のディズニーのキャラクターはキャラクター自身の内面の葛藤や望みなどが丁寧に描かれており、そのためどうしてそのような行動をとるかが共感性を持って伝わってきます。
それに対して、本作においては登場人物の行動のモチベーションがそれほど強くは伝わってきません。
主人公アーシャは国民や祖父の夢を取り戻すために、悪い国王へ挑みます。
モチベーションはあるのですが、正義のために戦う、幸せのために戦うといったようなステレオタイプな動機であって、アーシャのもっと個人的な内面から湧き出るような思いのようなものはあまり感じられませんでした。
特に本作はディズニー伝統のミュージカル形式になっており、そのため歌に乗せる想いが弱いのは致命的であるかなと思います。
また対する悪い魔法使いの国王ですが、前半はまだ魅力的に描かれていたように思います。
彼は国民のことを全く考えていないわけではなかったからです。
しかし、魔法の強大な力に呑み込まれてからは、古典的なディズニーの悪い魔法使いのような、これもステレオタイプなキャラクターと化してしまいました。
もう少し善と悪の両面を持つキャラクターとして深みを与えられそうだったのに、もったいないと感じました。
映像表現としては絵画のような質感を持たせたり、楽曲自体は魅力的ではあったと思いますが、ストーリー・キャラクターが100周年の記念作品であるということで過去の集大成としての意識が強く、古典的な風合いを持ってしまったように感じます。
本来記念作品は、過去を踏まえつつも、今後につながる可能性を描くべきで、視線は未来に向けているものであってほしい。
視線が過去に向いていたという点ことが、最近のディズニーのチャレンジの姿勢を感じさせなかったことが残念でした。

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