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2024年1月31日 (水)

「パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー」小さくても活躍できる!

「パウ・パトロール ザ・ムービー」から2年を経ての続編となります。
前作はちょうど娘がNetflixでシリーズを夢中になって見てたので、劇場版も一緒に観にいきました。
今は娘も小学生なので「パウ・パトロール」は卒業してい他のですが、劇場で予告編を見たところ「行きたい!」となり、本作も一緒に鑑賞です。
「パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー」ではメンバーの一人、チェイスが主人公の扱いでしたが、本作では女性メンバー、スカイが主人公です。
前作レビューの時に他のメンバーのエピソードも見たいと書いたのですが、その通りになりました。
また本作で大きく変わっている点は、パウ・パトロールメンバー自身が、それぞれ特殊能力を得たということですね。
今までは特殊なメカ・アイテムを使って人々を助けていたパウ・パトロールでしたが、この変化によりスーパーヒーローもののような要素が入ってきたと思います。
今までの知恵と勇気でなんとかする感じも嫌いじゃなかったので、万能感のあるスーパーヒーローになった時、話が変質するのではないかと危惧もしました。
前作ではチェイスが幼い頃のトラウマを克服していく様が描かれており、子供向けのアニメでありながら、キャラクターをちゃんと掘っている印象がありました。
本作では主人公は体が小さいスカイとなり、彼女の抱えるコンプレックスがテーマとなります。
彼女は生まれつき小柄で、そのため引き取り手もなかったというコンプレックスがあります。
パウ・パトロールに加わり、活躍の場を得られていますが、それでも他のメンバーに対して小柄なことにより、できないことも多々あるわけです。
本作では彼女がそのコンプレックスを事件を通じて克服していく様が描かれます。
自分自身を認められるようになっていくのですね。
前作でメンバーに加わった女性メンバーであるジャネットにもスポットは当たっており、他のメンバーに比べてスキルがない彼女が、彼女らしいチームへの貢献の仕方を見つけていきます。
その点で、キャラクターをしっかり描きたいという前作のポリシーはしっかり受け継がれているなと思いました。
小柄だったことをマイティ化することにより安易に解決するようには見せてほしくなかったのですが(それが冒頭で書いた危惧)、そこは制作者側も意識して、安易であると捉えられないよう丁寧に描かれているように感じました。
マイティ化したことにより、アクションシーンは前作よりも一層派手になって見応えは増したと思います。
主人公をスカイにしたことにより、空中戦なども描けるようになったことも派手さに貢献しているかもしれません。
基本子供向けのアニメーションではありますが、ストーリー的にも子供でもわかるメッセージがあり、一緒に見るアニメとして良質に出来上がっていると思います。

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2024年1月28日 (日)

「ゴジラ-1.0/C」モノクロにした効果

日本アカデミー賞でも数多くの賞を受賞し、さらには米国のアカデミー賞でも視覚効果で日本初のノミネートとなった本作、公開からしばらく経っていますが、多くの話題を提供しています。
本作は「ゴジラ-1.0」をモノクロにしたバージョンとなります。
「シン・ゴジラ」でもモノクロ版を公開し好評だったことを受け手のモノクロ版となります。
しかし、ただモノクロに変換しただけではなく、カット毎にモノクロにするために細かい調整をしているとのことです。
基本的にストーリーは変更がありません。
変更があったのは、冒頭の東宝のロゴの白黒バージョンになっているのと、長年山﨑監督作品のプロデューサーを務めていた阿部秀司さんへの追悼文が加わっているところでしょうか。
モノクロになったことにより、いくつかの効果があったように思いました。
1つ目はモノクロで色の情報がなくなったことにより、陰影のみの表現となり、より原始的な恐怖感が出てきたとおもいました。
特に冒頭の大戸島で初めてゴジラと邂逅するシーンは迫力がましたと思います。
シーンは夜なので、ゴジラの姿はカラー版に比べて視認しにくくなっています。
ゴジラのゴツゴツした肌も陰影が強調され、より異形さが増しています。
そのため、見たこともない怪物に襲われているという恐怖感が増し、主人公がどうしても撃てなかったということの納得性を増しているように思えました。
2つ目はドキュメンタリー感がより強くなったことです。
本作で描かれている時代は戦後間も無くであり、まだテレビなどもなかった時代。
その時代を表すにはカラーよりもモノクロの方が、時代性が伝わりやすいように感じました。
特に浩一と典子が暮らすバラックなどのシーンはモノクロの方がより昭和の戦後間も無くの雰囲気が出ていたと思います。
3つ目は典子を演じている浜辺美波さんの美しさが際立って見えたこと。
元々彼女は昭和の女優のオーラを纏っていると評されることが多いですが、よりモノクロになったことにより、かつての昭和の大女優の原節子さんらのような見え方をしていて、それがまた彼女の雰囲気にとてもマッチしているように見えました。
原始的な恐怖を引き起こすゴジラの存在感、その時代のドキュメンタリーを見ているような空気感、浜辺さんの昭和大女優のような佇まいが、より本作の質感を強化しているように思いました。
モノクロ化という点では、「シン・ゴジラ」よりも本作の方がやる意味合いというのを感じましたね。
見る価値はあると思いますので、ぜひご覧ください。
阿部秀司阿部秀司な

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2024年1月27日 (土)

「ウィッシュ」視線が過去に向いている

ディズニー100周年記念となる作品と大々的に公開されました。
私は最近はディズニー作品はコンスタントに見ているのですが、子供の頃はあまり見ていませんでした。
本作は100周年記念ということで、今までの作品のオマージュがいろいろと入っているようなのですが、そのためあまりわからなかったです。
日本では割と観客は入っているようなのですが、アメリカなどでは期待ほどには動員数は少なく、また批評的にも芳しくありません。
私が最近ディズニー作品を見ているのも、子供向けであることは基本としつつ、しっかりとキャラクターを描けている点を評価しています。
その点において本作は個人的にも物足りないものとなりました。
本作はディズニー全盛の頃のアニメへのオマージュが強いためか、悪い魔法使いとそれに立ち向かうヒロインという形をとっています。
それ自体は悪いということはないのですが、ヒロインもそれに対する魔法使いも、行動のモチベーションが抽象的です。
最近のディズニーのキャラクターはキャラクター自身の内面の葛藤や望みなどが丁寧に描かれており、そのためどうしてそのような行動をとるかが共感性を持って伝わってきます。
それに対して、本作においては登場人物の行動のモチベーションがそれほど強くは伝わってきません。
主人公アーシャは国民や祖父の夢を取り戻すために、悪い国王へ挑みます。
モチベーションはあるのですが、正義のために戦う、幸せのために戦うといったようなステレオタイプな動機であって、アーシャのもっと個人的な内面から湧き出るような思いのようなものはあまり感じられませんでした。
特に本作はディズニー伝統のミュージカル形式になっており、そのため歌に乗せる想いが弱いのは致命的であるかなと思います。
また対する悪い魔法使いの国王ですが、前半はまだ魅力的に描かれていたように思います。
彼は国民のことを全く考えていないわけではなかったからです。
しかし、魔法の強大な力に呑み込まれてからは、古典的なディズニーの悪い魔法使いのような、これもステレオタイプなキャラクターと化してしまいました。
もう少し善と悪の両面を持つキャラクターとして深みを与えられそうだったのに、もったいないと感じました。
映像表現としては絵画のような質感を持たせたり、楽曲自体は魅力的ではあったと思いますが、ストーリー・キャラクターが100周年の記念作品であるということで過去の集大成としての意識が強く、古典的な風合いを持ってしまったように感じます。
本来記念作品は、過去を踏まえつつも、今後につながる可能性を描くべきで、視線は未来に向けているものであってほしい。
視線が過去に向いていたという点ことが、最近のディズニーのチャレンジの姿勢を感じさせなかったことが残念でした。

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2024年1月 8日 (月)

「エクスペンダブルズ ニューブラッド」一つの時代の終わり

ビックネームなアクションスターたちが共演するというビックな企画「エクスペンダブルズ」、10年ぶりの新作です。
新作を作るにあたっては、スタローンが企画から離れたり、戻ったり、コロナがあったりといろいろあったようですね。
これまではスタローンの人脈からか、信じられないような出演者たちが集結するところが見どころの一つでしたが、本作に関しては、新たに加わったアクションスターとしては「マッハ!」のトニー・ジャー、「ザ・レイド」のイコ・ウワイスくらいでやや物足りない(二人はそれぞれ一級のアクションスターだが)。
元々このシリーズはアクション映画ファンとしては、かつてはライバル的な存在として競っていたアクションスターたちが共演をしている凄さを味わうメタ的な楽しさもあったりしたわけなので、それらの要素がなくなると普通のB級なアクション映画とあまり変わらなくなってしまう。
確かに、今回製作も務めるジェイソン・ステイサムのアクションは未だ健在で見所もあるのですが、それゆえ彼が出演している「いつもの」アクション映画とあまり違った印象に放っていません。
企画として元々持っていた魅力がないことに気づいているからか、終盤脚本的にはどんでん返し的なところが用意されているのですが、それも割とあからさまなので、驚きはありません。
むしろB級アクション映画ではよくある展開とも言えるでしょう。
このシリーズ、80〜90年代のマッチョなアクション映画の遺産で作っているようなものなので、それらを見ていた観客が歳を取ったり、そもそもそのようなアクションスターがいなくなったり(引退したブルース・ウィルスのように)すると、なかなか継続は厳しそうな気がします。
90年後半から00年代はこのような泥臭いアクションよりはスタイリッシュなものにトレンドは移っていったので、このシリーズに出てくれそうな人がいないのですよね(思いつくのはヴィン・ディーゼルとかしかいない)。
一つの時代がとうとう終わったということでしょうか。

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2024年1月 6日 (土)

「正欲」知らない惑星への留学

2024年最初に鑑賞した作品はこちらです。
ダイバーシティが一般的な言葉として語られるようになり、LGBTQについても人々の理解が深まってきています。
本作で登場する人物たちの性癖はそれに比べても特殊で「水フェチ」と呼ばれるものです。
様々な動きの水に性的興奮を喚起されるというものですが、一般的にはなかなか理解されにくい性癖だと思います。
個人的にも説明されればそういう性壁もあるのだと理解できるものの、感覚的にはよくわからないというのが正直なところです。
性的な嗜好についてはほぼ人と話すことはない上に、それが特殊(個性的)であればあるほど、誰とも共有できるものではないと思います。
価値観が違う、ということはよくあると思いますが、これはまだ言葉で説明できるし、いろいろあるというのが前提となっているので、まだマシかもしれません。
性的嗜好、まさに生物として生きることにつながる嗜好で、それが普通でないということは、生き物としておかしいのではないか、と自問したくなる気持ちは理解できます。
自分が他者と異なる、普通ではないということは、強い疎外感を生むことでしょう。
本作の登場人物たちも、そのような自分が社会と隔絶しているように感じ、死のうと思ったり、壁を作ったりして生きています。
主人公の一人、桐生はそれを知らない惑星に一人で留学しているような感覚と言います。
その孤独感たるや。
同じような自分の存在すら疑問に思っていた桐生と佐々木が再会できたのは奇跡でもあり、救いでもあると思いました。
たった一人でもいい、自分を認めて、繋がって、一人じゃないと認識させてくれる人がいてくれればそれは幸せなのだと。
本作では性的嗜好の話にフォーカスしていますが、これはそれだけに限ったことではなく、自分がいていいということを認めてくれられるということがいかに人を生かしてくれるのかということを伝えているのだと思います。
もう一人、水に性的興奮をしてしまう人物として諸橋という大学生が登場します。
彼に対し、神戸という女子大学生が好意を持ちます。
彼女は幼い頃のトラウマで男性に恐怖心を持ってビクビクしながら暮らしていますが、諸橋にだけはそれを感じません。
それは諸橋が女性に興味がないということからきているのかもしれませんが、彼女にとっては自分のことを理解してくれる唯一の男性のように思えたのでしょう。
彼女にとって諸橋を通じて、普通になれると思えた。
しかし、それは諸橋の全てを理解できたことではなく、どうしてもその人自身のフィルターを通しての理解にならざるをえないということがこのエピソードから伝わってきます。
さらには、諸橋のような嗜好が人々に理解できないということを痛烈に印象付けるパートになっていたとも思いました。
登場人物の中で自分でも普通の人間だと認識しているのが、検事の寺井は、子供が不登校になりそれを受け入れることができません。
彼にとって普通の子供は学校に通うもの。
フリースクールに行ったり、不登校の仲間とYouTubeを配信したりなどというのは、彼にとっては異常なことなのです。
彼の普通は許容範囲が狭く、結果、それが家族とのつながりを断ち切ることになりました。
異なることを認められるということと共に、認めるということも人とのつながりにとっては欠かせない。
ラストシーンで桐生と寺井は対面しますが、自分の存在を認めてくれている人がいると自信を持てる桐生と、大切な関係を失ってしまった寺井はどちらが幸せなのか、と考えさせられます。
どうしても理解できないこと、というのはあるものの、理解をしようと努力すること自体をしなくていいわけではないということです。
新年早々いろいろ考えさせてくれた作品でした。

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