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2023年12月30日 (土)

「PERFECT DAYS」木漏れ日

2023年最後に鑑賞したのはヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の「PERFECT DAYS」です。
ヴィム・ヴェンダースの作品は久しぶり。
主人公の平山は公衆便所の清掃を生業としている男。
平山は非常に几帳面に仕事を行い、毎日規則正しく暮らしています。
彼の1日は早朝の近所の箒の音で始まり、几帳面に布団をたたみ、缶コーヒーを一本買って仕事場に向かいます。
いくつかのトイレを丁寧に掃除をし、昼間は決まった神社で木漏れ日を見ながらコンビニのサンドイッチを食します。
仕事が終わった後は、銭湯で風呂を浴び、その後行きつけの一杯飲み屋で食事をし、そして帰宅後は古本屋で買った小説を読んでから就寝。
本作はこのような規則正しい平山の生活を追っていきます。
何も起こらない映画、と言えるかもしれません。
平山がどのような人生を送ってきたかは本作では語られませんが、何かから逃げてきて、今のような生活に行き着いたように思えます。
何も起こらないというのは、彼にとって幸せで完璧な日々なのでしょうか。
タイトルロールの後に「木漏れ日」という言葉がスクリーンに映し出されます。
その意味も書いてあって、木の葉が重なり合って変化する光であって、同じものはないとありました。
この木漏れ日は劇中でも何度も触れられていて、平山は昼休みに木漏れ日の写真を撮るのが日課となっていました。
平山の繰り返される日常も一見、同じように見えながらも、全く同じではありません。
突然同僚が辞めてしまったために二人分の仕事をしなくてはならず、疲れ切って夜帰った後は、いつもの通り明日の準備をする前に眠ってしまったり。
同僚が好意を寄せる若い女の子に、突然ほおにキスをされたり。
突然、姪が訪れて、彼女を仕事に連れて行ったり。
同じように繰り返される日々の中にも木漏れ日のような変化があります。
お休みの日には必ず行きつけのバーに顔を出しますが、そこのママの元夫が末期の癌だと知った時、彼は繰り返す日常も終わることがあるということを突きつけられます。
どういう生き方が完璧なのか、それはその人自身が決めること。
同じような暮らしの中でも、木漏れ日のような変化が彩りを加えます。
穏やかだけど完璧な日々。
それも終わる時が来る。
それを思いながら、平山は微笑み、そして涙を流したのでしょうか。

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