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2023年12月28日 (木)

「窓ぎわのトットちゃん」今の時代に公開される意味

ご存知黒柳徹子さんによる小説「窓際のトットちゃん」をアニメーションとして映画化。
原作が発表されたのは1981年で40年以上も昔です。
当時ベストセラーとなりましたが、なぜに今映画化されたのでしょうか。
実はベストセラーにも関わらず、私は原作を読んだことがなく、今回子供が見たいと言ったので、一緒に鑑賞してきました。
本作を見てみて、今という時代に映画化された意味がわかったような気がしました。
舞台となる時代は、日本が太平洋戦争に足を踏み入れようとしているとき。
トットちゃんは自由奔放な性格のため、普通の小学校には馴染めず、トモエ学園という自由な校風な小学校に転校します。
その学校は生徒の個性を重視する方針で、その時代においては非常に最先端の教育をしている学校でした。
そのためか世間的には異端のようにも見られてもいました。
日本は戦争に向かう道にあり個性よりは、愛国的な国民を育てる全体主義的な教育が主流でした。
そのような考え方からすれば、トモエ学園の思想は異端に他かなりません。
そのような校風のなか、トットちゃんは伸び伸びと育ちます。
様々な子供たちがいる中で、トットちゃんも学友それぞれの個性を大事にすることを学んでいきます。
これはまさに今の時代主流となってきている多様性の考え方と言えるでしょう。
戦争直前という時代においていかに先端的な考え方であったか、わかると思います。
それがなぜ今映画化されているのでしょうか。
出版されていた時期(1980年代)は日本が世界的に見ても高度に経済的発展をしていた時期で自信に溢れていた時でした(80年代後半でバブル崩壊し、日本は急速に自信を失います)。
そのためか我も我もという、自己中心的な考え方が強くなっていた時代であったようにも思います。
他人への思いやるという気持ちも薄くなってきていて、そのことに黒柳さんは警鐘を鳴らしたかったのではないかと思います。
伝説的なエピソードとして、黒柳さんが司会をしていた「ザ・ベストテン」で一般人が発した差別的なコメントに対し、生放送中に苦言を呈したという事件がありました。
それは多様性を否定するような発言であり、トモエ学園で学んできた黒柳さんとしては許せない言動であったのでしょう。
そして、今の時代です。
黒柳さんは40年ぶりに「窓ぎわのトットちゃん」の続編を発表しました。
これに関するインタビューで、昨今のアメリカの分断やウクライナの戦争など、他者に対して非寛容な風潮が非常に気になっているというようなことを話されていました。
多様性が言葉としては定着し、その価値観を誰もわかるようになってきた時代ではありますが、人の行動や世界の流れはそれに反対の動きとなっています。
今こそ、もっと等身大に多様性ということを皆がもう一度理解しなくてはいけない時期なのかもしれません。
子供はもちろんですが、大人に対してもそのようなことを考えるきっかけになる作品であると感じました。

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