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2023年11月 7日 (火)

「北極百貨店のコンシェルジュさん」欲望の反対側にある場所

絵本のようなシンプルなタッチでほのぼのとした印象のアニメーションです。
最近のアニメーションとは異なっていて、こういうのもホッとしますね。
舞台となるのは動物向けの百貨店で、主人公はそこの新米コンシェルジュの秋乃。
このデパートでさまざまなエピソードが繰り広げられるわけですが、上映時間は1時間10分。
最近の映画の中では異例の短さですが、そのように感じさせないほどエピソードは密度がありました。
本作はジャンルで言えばお仕事ムービーで、新米コンシェルジュの秋乃が次第に成長していく様を微笑ましく見ることができます。
秋乃は色々つまづいて落ち込むことはあるけれど、基本的に仕事には前向きで一生懸命。
彼女がお客様を思う気持ちは本物で、彼女の頑張りを見ていると自分も仕事を頑張らなきゃという気持ちにさせてくれます。
同僚のコンシェルジュたちの仕事っぷりも見事で、まさにプロという感じ。
仕事に前向きに挑む気持ちにさせてくれる良作です。
絶滅した動物のための百貨店ということで本作はファンタジーではありますが、なぜこのような設定なのだろう?と途中で思いました。
しかし、その答えは終盤にありました。
この百貨店のオーナーが「ここは欲望の反対側にある場所」というようなことを言っていました。
本作で幸せそうに買い物をする動物たちは全て人間に絶滅させられました。
人の欲によって滅ぼされたのです。
そしてデパートという場所は、欲しいものがなんでも手に入る、欲望が叶うところです。
我欲で動物たちを滅ぼしてしまった人間が、絶滅した動物たちのために奉仕するのが、北極百貨店。
けっこうなアイロニーではあります。
物語の中でカスハラ的なお客様に困らせられるエピソードがあります。
経験の浅い秋乃は土下座をして場を納めようとしますが、ベテランのコンシェルジュは毅然とした対応をします。
お客としてリスペクトしながらも、他の人の幸せな気持ちまで奪うことは認められない。
我欲ではなく、皆が幸せな気持ちになることを大切にする。
本当はそうあるべきで、そうであれば世界はもっと平和なのだよな、と思いました。

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