「沈黙の艦隊」満を持しての実写化
コミック「沈黙の艦隊」は学生から社会人になった20代の頃、リアルタイムに読んでいました。
そのストーリーは現実に米ソの間の冷戦構造と核抑止があるという時代をベースに作られていましたが、まさに連載中にソ連崩壊、それに伴う冷戦構造の終結という大きな変化の中で展開されていきました。
その後、世界は米国への一極化、そしてテロ事件の勃発などがあり多極化へ変化していきます。
本作が映像不可能と言われてきたのは、潜水艦そして艦隊との戦いを描くのが難しいのもありますが、現実世界の状況が原作の頃と大きく変わってきたのもあったかと思います。
しかし、ロシアが仕掛けたウクライナ戦争により、再び核による恫喝が現実的になってきたということもあり、再び本作で語られてきた考え方に注目がいくようになったのでしょう。
映像についても、今回は自衛隊の協力が得られたこと、そしてCGなどの技術の発達がありクリアでき、まさに満を持しての実写化ということでしょう。
主人公海江田を演じるのは大沢たかおであり、考えを読ませない得体の知れなさをうまく表現していたと思います。
「キングダム」もそうですが、大沢さんはコミックのキャラクターを再現するという点で、非常にテクニックを持っていると思います。
ストーリーも終始緊張感を持たせながら展開しており、ややもすると政治色が強くなり会議室での会話劇が中心になりがちなところ、バランスよく潜水艦戦、艦隊戦を入れてきているので、エンターテイメントとしても見やすくできているかと思います。
惜しいのは、というより長い原作を映画化するということで仕方がないところはあるのですが、本作で描かれるのはほんのさわりのところで、本作だけでは海江田の意図というのはほとんど分かりません。
まさに導入部分というところなので、本作の評価は本作だけではできないように思います。
次回作ができるかどうかのアナウンスは聞こえてこないのですが、この作品の本当の評価は次回作を観て、ということになるでしょうね。
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