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2023年10月11日 (水)

「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」深い愛情ゆえの

ケネス・ブラナー監督による「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」に続くポアロシリーズの第3作目です。
前作2作は過去に映画化もされていますし、小説も非常に有名な作品ですが、本作のタイトルを聞いただけでは私は原作が思い出すことができませんでした。
アガサ・クリスティの作品はほとんど読んでいるのですが。
それもそのはずで原作は「ハロウィーン・パーティ」ですが、舞台もイギリスからベネチアに移したりとかなりいじっているようです。
とはいえ「ハロウィーン・パーティ」も読んだはずですが、内容は思い出せません・・・。
<ここから先はネタバレありです>
この作品には通常とは異なる関係を持つ2組の親子が登場します。
それぞれの親子関係が本作で語られる事件の発端となっているのです。
1組目の親子はフェリエ医師とその息子レオポルドです。
フェリエ医師は一見しっかりしている立派な紳士のように見えますが、過去戦争に従軍医師として行った時に負った心の傷により、時に子供のように不安に駆られることもある不安定さを持っている人物です。
そのような父親を持ったためか、または元々聡明なためなのか、息子のレオポルドはまるで彼が父親かのようにフェリエ医師に寄り添い支えています。
彼らのは時に親子関係が逆なのでは、と見えるようなこともあります。
2組目の親子は本作の舞台となる館の女主人であるロウィーナとその娘アリシアです。
アリシアはすでに亡くなっておりますが、彼女の魂を呼ぶ交霊会をロウィーナが企画し、そこにポアロも招かれるのです。
ロウィーナは娘を愛する母親のように見えるのですが、次第にこの母娘の関係が明らかになっていきます。
アリシアは年頃となり愛する男性ができますが、ロウィーナはそれを認めることができません。
娘を愛するあまり彼女と離れることができなくなってしまっていたのです。
その結果、彼女は娘を殺してしまうこととなったのです。
通常いつかは親は子離れをしなくてはいけないのものですが、ロウィーナはそれができませんでした。
彼女は娘の死を自殺とし、それを隠蔽していましたが、それに気づいた何者かから脅迫を受けます。
その何者かを始末するため彼女は交霊会を行い、そこに訪れた脅迫者を片付けようとしたのです。
ロウィーナは脅迫者と思しき人物を殺していきますが、いずれも本当の脅迫者ではありませんでした。
最後に判明するその正体はなんとレオポルドでした。
聡明な彼は真相に気づき、病気に苦しむ父親を救うために脅迫を行い、お金を手に入れていたのです。
レオポルドは子供ですが、父親の状態ゆえに、強制的に大人にならざるを得なかった子供と言えます。
しかし、彼がそうなったのも父親への愛情ゆえです。
その結果、父親が命を落としてしまったのは、彼にとっては悲劇であったでしょう。
本作で描かれる事件は、このように2組の親子の深い愛情ゆえに引き起こされたものでした。
アガサ・クリスティのミステリーでは、深い愛情ゆえに引き起こされる悲劇がいくつもあります。
その点において、本作も彼女らしさをうまく表現しながらオリジナル作品として仕上げていると感じました。

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