「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司」空気を読まない純粋さ
「クレヨンしんちゃん」初の3D CG作品。
海外作品「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」やこの秋公開される「ミュータント・タートルズ」の新作など最近は3DCGも表現の幅が広くなって、様々な質感が表現できるようになってきました。
日本でも長年愛されている「ドラえもん」など手書きのアニメも3DCG化されてきています。
とはいえ、手書きのタッチの良さもあり、すべて3DCGにするのが良いかという議論はあるかと思います。
日本にはロングランのアニメが数ありますが、「クレヨンしんちゃん」は中でも独特な手書きのタッチがある作品です。
そのタッチが活かせるのかという疑問はありました。
鑑賞してみると、やはりあのタッチはなかなか表現しにくいなというのが正直な感想です。
「しんちゃん」はシンプルな絵ですし、そもそも立体的に表現しようという意図のない、いい意味でいい加減なタッチなので精緻な3DCGには馴染まない印象です。
任天堂のMiiのキャラのような不思議な感触の表現になっていたと思います。
しかしだからと言って、本作の3D CGが全てうまくいっていなかったかというとそういうことはありません。
後半戦のカンタムとモンスター非理谷のバトルシーケンスは、怪獣特撮映画のような迫力がありました。
巨大なモンスターを見上げる時の空気遠近法のような色の加減などは非常にうまく表現できていたと思います。
アングル的にも怪獣映画のようなところを狙っていて、特撮ファン的には見応えがありました。
さすが新作ゴジラも手がける白組だなと思いました。
後半のCGだけでもみる価値はありますね。
作品のテーマ的にはかなり重めで、子供たちよりも大人をターゲットにしている印象です。
大人になって暮らしていく社会は、子供の頃には想像以上に不条理だったりします。
その不条理に怒り、蟠ったりするものの、いつしか抵抗するにも疲れて、世の中を斜に構えて見ることしかできなくったりしてしまう。
しんちゃんというキャラは、おバカではありますが、自分の周りの世界を素直に見ることができる力があります。
好きなものは好き。
嫌なものは嫌。
大人になれば周りに合わせて、空気を読んで暮らしてしまいますが、しんちゃんは空気を読まない。
感じたことをそのまま言い、行動する。
空気を読まないという点がおバカに見えるところなのですが、彼自身は非常に素直なのです。
今回の映画のゲストキャラである非理谷は、社会から不条理な扱いを受けながらも、それを受け入れて生きています。
心の中では様々な不満がありますが、それに蓋をして。
その鬱屈した気持ちが今回は利用されるわけですが、彼は自分の気持ちには素直になれておらず、奥底の気持ちと社会に迎合する気持ちの間に不満が溜まっていってしまったわけです。
そして彼は社会との間に自ら壁をつくり、ますます社会との距離が離れていってしまったのだと思います。
しんちゃんはそのような不満を貯めることがありません。
全て感じたことを素直に言い、行動しているから。
非理谷はしんちゃんの素直な気持ちに触れ、自らが作ってきた壁を自覚したのでしょう。
それにより、自らの不満が作り上げたモンスターから解き放たれることができました。
一緒に見にいった小一の娘の感想は、「面白かったけどなんか怖かった」です。
その怖さの本質はまだわからないよね。
映画を観た晩の食事は娘のリクエストにより手巻き寿司でした・・・。
| 固定リンク
コメント