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2023年9月 2日 (土)

「マイ・エレメント」豊かな感情を表現できる豊かなCG

ピクサーは今までもキャラクターとしてユニークなものを取り上げてきました。
虫や魚や動物だけでなく、おもちゃや車、そして心の中にある感情まで。
本作でキャラクターとして取り上げたのはなんと元素。
これは化学的な元素ではなく、いわゆる四大元素である、火・水・気・土のことです。
この物語ではこの4つの元素がそれぞれ種族となり、一つの大きな街エレメントシティで暮らしています。
まず、本作の見どころはその映像のクオリティです。
最近はどのスタジオの3Dアニメを見てもかなりのクオリティを持っていますが、ピクサーの作品は今でもやはり抜けているように思います。
主人公のエンバーは火の種族の女の子。
意志が強く、頑固で勝ち気、けど年頃の娘らしく将来に色々と悩みを持っています。
ですので、感情の浮き沈みもあるのですが、それをCGは巧みに表現します。
エンバーのキャラクターデザインは炎をモチーフとしているのですが、炎の持つ激しさ、そして暖かさを手書きのテイストも感じるようなCGで表現しています。
彼女の感情の変化で顔の炎の色も変化し、彼女の感情を巧みに表現しています。
ピクサーのCGは技術を見せつけるものではなく、あくまでキャラクターの感情をどのくらい上手に表現できるのかということを常に考えて、技術を開発しているように思えます。
エレメントたちが暮らすエレメントシティはそれぞれの種族の特徴が生かされた街でとてもユニークです。
仔細にまで作り込まれたこの街のCGもなかなかに見事でただ背景にしておくには惜しいほど。
もっとじっくり見たいとも思わせるほどです。
本作の見どころは映像表現だけではありません。
やはりキャラクターも深く描かれていて、そこに引き込まれます。
エンバーたち火の種族は、一番最後にエレメントシティにやってきました。
いわばエレメントシティではマイノリティです。
エンバーはこの街で生まれた二世になるわけですね。
彼女は一世の父親の期待を背負い、この街で暮らす種族の憩いの場である店を継ぐことが自分の望みだと思ってきました。
しかし、彼女は火の種族の一人でもありますが、エレメントシティの子供でもあるのです。
二つの文化の狭間で自分のアイデンティティに悩むのは、多くの移民二世が経験することだと思います。
実際、本作の監督は韓国移民二世のアメリカ人ということで、やはりエンバーのような気持ちを経験したそうです。
そして、そこにも関わりますが、もう一つ描かれているのが異なる文化を越えての恋愛です。
本作ではエンバーが、一番最初にエレメントシティを作った水の種族の男の子ウェイドと出会い恋に落ちます。
しかし、火と水ですから、触れ合えばお互いがお互いを消し去ってしまうかもしれません。
またエンバーの父親はマイノリティとしての文化を大切にしており、他の種族と交わることを良しとしていません。
エンバーは文化的ギャップ、そして物理的なギャップ、そして自分の将来に関する相反する思いで心が乱れます。
しかし、ウェイドはおおらかに彼女の全てを受け止めます。
水らしい包容力で、彼はエンバーを優しく包み込み、守ります。
そして奇跡が起こります。
本作ではエレメントという奇抜なモチーフを使っていますが、そこで描かれている物語は多くの人が経験する共感できる気持ちです。
これがピクサーのオリジナリティだと思います。
一見、とっつきにくいからか、公開当初は興行成績振るわないという話がありましたが、徐々に口コミで評判が広がり観客動員は増えている様子です。
いい作品はちゃんと評価が上がりますね!

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