「映画 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン」日本特撮の転換点
スーパー戦隊シリーズ最新作「王様戦隊キングオージャー」の夏の劇場版です。
前2作がスーパー戦隊シリーズの中でも特に異色作と呼ばれるつくりだったのに対し、オンエア前は王道へ回帰かと思われましたが、いや何、これはまた別の意味でなかなかの冒険をしていると思います。
冒険の一つとして大きいのは、その撮影方法です。
従来特撮番組での特殊撮影はクロマキー合成(いわゆるグリーンバック合成)やCGなどの合成が主でした。
本作では本格的にバーチャルプロダクションという技術を導入しています。
バーチャルプロダクションとはセットの背景に巨大なLEDスクリーンを置き、そこに背景を映し出し、その前で演技する俳優を背景ごとそのまま撮るというものです。
この方法の利点は、巨大なセットを組まなくても良いということ、俳優がグリーンバックではなく実際の背景の前なので演技がしやすいなどがあります。
ディズニーの「マンダロリアン」で本格的に導入され話題になりましたが、日本で毎週放映される番組に導入したのはなかなかに画期的であると思います。
本作は地球ではなく、チキューという異世界を舞台にし、個性豊かな5つの国が出てくるという物語です。
今までの特撮番組では予算や制作効率の都合上、どうしてもロケなどでセットを組む手間を省かざるを得ませんでした(セットは主人公側の基地や、敵側のアジトなど限られたもののみ)。
しかし、バーチャルプロダクションの導入により、表現の自由度が飛躍的に上がりました。
今回劇場版では、テレビシリーズよりもさらに意欲的に想像力あふれる異世界をチャレンジングに描こうとしています。
ニチアサの特撮の劇場版でここまで異世界を構築したのは正直驚きました。
ハリウッドの映画や、日本でも山崎貴監督のような制作費をかけられる映画ではこのレベルは当たり前でも、ここまでできるとは今までは思えませんでした。
確実にこの技術は日本の特撮のターニングポイントとなると思います。
ストーリーとしては、テレビシリーズの合間に挟まれるような話となっています。
「キングオージャー」は一話完結的な展開が多いスーパー戦隊シリーズの中では特異的で、ストーリーの展開が非常に大河的(仮面ライダー的)です。
ですので、かなり大人でも見応えがあるシリーズなのですが、映画もそのようなテイストでしっかり鑑賞できます。
そして短い尺ながら、テレビシリーズでは描かれていないそれぞれのキャラクターの深堀もできており、脚本も巧みだと思います。
タイトルでは「王様戦隊」と名乗っていますが、ドラマの中でこの名称が出たのはつい最近。
6人の王様がようやく揃ったわけで、シリーズとしても大きな転換点となる時期での劇場版となりました。
シリーズも後半戦となりますが、今後の展開も期待させてくれる作品です。
| 固定リンク
コメント