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2023年6月18日 (日)

「ザ・フラッシュ」 狭間での絶妙なバランス

<ネタバレあります>
ジェームズ・ガンがDCスタジオのトップに就任し、新しいユニバースが構築されるとアナウンスされている状況の中、「ザ・フラッシュ」は奇しくもDCEUとDCU(新しいユニバース)の接点となる特異点的な作品となりました。
フラッシュはDCEUの「ジャスティス・リーグ」で登場し、その主要なメンバーとして活躍しましたが、メインとなるのは本作が初めて。
彼は高速で移動することができ、さらには光の速度すら超えることにより過去への移動も可能とすることができます。
リチャード・ドナーの「スーパーマン」でも時間を逆回しするという描写がありましたね(あれは地球を逆回転させるというよくわからない理屈でしたが)。
本作ではフラッシュが母親の死を回避しようと過去改変を行うことにより、ユニバース全体を揺るがすような出来事を誘発してしまいます。
タイムトラベルものでは、過去の出来事を変えることにより、未来の出来事が影響を受けてしまうことはよく描かれます。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」しかり(本作でもネタとして使われていました)。
本作のタイムトラベルでユニークな点は過去のある出来事を変えたことにより、未来だけでなくさらに過去の出来事も影響を受けてしまうというところです。
これはあまり聞いたことがありません。
しかし、この理屈により、本作ではマイケル・キートンのバットマンを登場させることを可能にしたのです。
そう、マイケル・キートンのバットマンです!
私がアメコミ映画にハマるきっかけとなった作品が「バットマン」なのです。
この「バットマン」のテーマ音楽が本作でもふんだんに使われていて、ゾクゾクしました。
バットケイブもあの頃の雰囲気を再現していましたよね。
改変された過去に影響を受けたユニバースでは、スーパーマンは幼い頃にゾットに殺されており、彼と戦う役割を担うのがスーパーガールことカーラ・ゾー=エルになります。
スーパーガールと言えば、ロングヘアの金髪のイメージはありますが、本作では黒髪短髪となっていて新鮮でした。
MCUはフェーズ4からマルチバースの概念を取り入れていますが、ようやくフェーズ5に入り本格的にストーリーに組み込まれてきました。
マルチバースの概念をそろりそろりと丁寧に浸透させようとしているように感じます。
対してDCの本作「ザ・フラッシュ」でマルチバース概念を取り入れましたが、かなりガッツリと一気にアクセルを踏んだ印象です。
そこが冒頭に書いた特異点的な作品と感じさせる印象となったのだと思います。
新生DCUはどのように展開されるかわかりませんが、MCUと同じくマルチバース概念を取り入れることになっています。
新しいDCUは今までのDCEUから全てキャスティングもろとも一新ということではないのかもしれません。
継続するキャラクターもいれば、そうではないものもいるということですね(スーパーマンはキャストが変わるという話)。
その場合、本作で展開されるマルチバースの概念は非常に使いやすい。
今まで作られてきたDCコミックの映像作品を全て包含することが可能です。
というより作られていない作品ですら、含むことができるでしょう(何しろニコラス・ケイジ版のスーパーマンですら登場してましたから!)。
ラストのあの人の登場が可能になったのもこの設定のおかげと言えるでしょう。
ややこの設定はご都合主義的な感じがしますが、ジェームス・ガンはDCUはファンタジーと言っているので、これからやろうとしていることにはあっているのかもしれません(対してMCUはあの世界観の中でのリアルさにこだわっている)。
あと印象的な概念として歴史改変をしても、どうしても改変できない出来事があるということですね。
本作でいうと、(マイケル・キートンの)バットマンとスーパーガールの死がそれにあたります。
同時期に公開されている「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」もマルチバースを取り扱っていますが、同様な出来事があります。
MCUでも「ホワット・イフ…?」の闇堕ちしたドクター・ストレンジの回でもクリスティンの死が改変できない出来事(特異点)とされていました。
この概念はドラマを劇的にすることができますし、安易に過去改変すればいいとストーリーを陳腐にすることも防ぐと思います。
書いてきたように本作にはタイムトラベルやマルチバースの概念が非常に多く詰め込まれていますが、際どいながら整理をしてストーリーを作れているように感じました。
しかしながらやや御都合主義感や、過去キャラクターの登場というお祭り感(東映の特撮シリーズでよくやるような)もあり、その辺りはMCUに慣れているとやや安易に感じなくもありません。
結果的にはDCEUとDCUの狭間、リアルとファンタジーの間で絶妙なバランスをとった作品となったと思います。

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