「最後まで行く」最後まで止まらない
藤井道人監督によるノンストップクライムサスペンスです。
主人公である刑事の工藤は、危篤の母親の元に駆けつけようと雨のなか車を飛ばしていましたが、突然飛び出してきた男をはねてしまします。
パトカーが近くを通ったことにたじろぎ、慌てて死体をトランクに隠してしまいますが、そこから工藤には次から次へと危機が降りかかり、最後まで息をつく暇がないほど物語がドライブしていきます。
この疾走感に加え、登場人物のアクの強さ、時折織り込まれるバイオレンス、まさに最後まで瞬く間に一気に引っ張られていきます。
見る前には知らなかったのですが、本作は韓国映画のリメイクということです。
確かにこれは韓国ノワールのテイストです。
藤井監督の作風はこのテイストによく合うなと思いました。
本作の主人公は工藤ではありますが、もう一人の重要な登場人物は綾野剛さんが演じる矢崎です。
この矢崎のキャラクターが狂っていて、主人公を喰うほどの存在感があります。
矢崎は中盤で、工藤に対して俺たちは似ていると言いますが、確かにそうかもしれません。
二人とも自分を取り囲む状況の中でもがきながら死力を尽くして生き残ろうとする。
生き残るという本能で突き動かされ、それは狂気的にもなっていく。
ラストは狂気すら超えて、なぜか純粋さすら感じました。
<ここからネタバレあり>
岡田准一さん演じる工藤の、追い込まれ、情けなさを出しつつも、必死に生き残ろうとする様も迫力ありましたが、やはり本作は綾野剛さんの矢崎です。
綾野剛さんはこの手の常軌を逸したキャラクターを演じた時の迫力はなかなかのものですが、矢崎はその中でも白眉かと思いました。
「お前はターミネーターか!」と言いたくなるほどに、しつこく工藤を追う矢崎。
本当はすでに死んでいて、執念だけで追いかけてきているのではないかと思うほど。
あまりの狂気さに爽快さまで感じたほどでした。
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