「仕掛人・藤枝梅安(二)」因果応報と業
2月に公開された1作目に続いての2作目となります。
とはいえ、話としては独立しているので本作だけを鑑賞しても全く問題ないと思います。
前作では昨今珍しい正統派の時代劇を見せてもらったと感じました。
本作はそこはしっかりと押さえつつ、「仕掛人」という物語の独自性を色濃く描いています。
仕掛人の独自性とは他の時代劇とは異なり、ダークヒーローであるということです。
仕掛人は悪を裁く者でありながら、人を殺すという悪を行う者です。
彼らは人を殺めているわけですから、それにより誰かの恨みを買う。
梅安にしても彦次郎にしても、いつかは誰かに殺されるという思いを持ちつつ、この稼業を続けています。
本作ではかつて梅安が手をかけた女の夫、井上半十郎に、梅安が命を狙われます。
井上もまた仕掛人となっておりました。
まさに因果応報です。
梅安もただ座して殺されるのを待つわけでなく、井上と対峙します。
殺される、生き残る、それは紙一重。
人を殺す稼業であることの宿命と梅安は静かに向かい合います。
また本作では人の業というものも強く描きます。
金が欲しい、女を抱きたい、そのような欲に、それを持つ人間そのものが支配される。
梅安はその生い立ちから女という存在を疎みつつも、人間の男として激しく女を求めてしまう。
本作で梅安のターゲットとなる井坂惣一はその業に呑まれた男です。
梅安にしても井坂にしても業に呑まれている点では同じで、何かの加減でそうなってしまったというだけに過ぎないのかもしれません。
人は多かれ少なかれ、自分の中にある欲、すなわち業に翻弄されてしまうのです。
「仕掛人・藤枝梅安」は人間が背負ってしまった業に翻弄される人々を描いていると思います。
そこに人は自分の奥底にある部分に共通なものを感じ、心を揺さぶられるのでしょう。
驚いたのは最後に鬼平が登場するところ。
エンドロールに鬼平の名前があり、「あれ、出てたっけ?」と思ったのですが、ポストクレジットでの登場でした。
調べたら「鬼平犯科帳」も映画になるのですね。
こちらも期待したいところです。
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