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2023年4月26日 (水)

「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」キレのいいテンポの良さ

食わず嫌いですみません!
予告を見た時はよくあるファンタジー映画と思い、全く食指が動きませんでしたが、思いの外ネットでは評判がよく、ようやく見に行ってきました。
評判通り、想像以上によくできていて、非常に楽しめました。
そもそも「ダンジョンズ&ドラゴンズ」というのは、テーブルトークRPGというボードゲームです。
RPGというと「ドラゴンクエスト」とか「ファイナルファンタジー」を思い浮かべますが、その元祖と言っていいゲームです。
実際、劇中でもシーフ、バーサーカー、ソーサラー、マジシャン、パラディン(聖騎士)などRPGでお馴染みの言葉が出てきますが、その元ネタは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」なんですね。
しかしゲーム原作の映画というのは、少数を除いて、外し気味の作品が多いのも確か。
その辺りも惹かれなかったところです。
本作の一番の良さと言えば、テンポの良さでしょうか。
このテンポの良さというのは2つ意味があって、一つはストーリー自体の進行が非常にさくさく進んでいくことです。
ファンタジー映画というのは、進行が遅いイメージがあります。
日常とは異なる世界を描くため情報量が多いというのもあるでしょうし、登場人物が多いということもあるでしょう。
その最たるものが「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで、面白いとは思いつつも、進行の遅さにイライラした覚えがあります。
それに対して本作は話の展開が非常に早く、良いテンポで見ることができます。
世界観についてもそもそもがこのようなファンタジーの元祖であるので、あまり説明する必要もないということもあるかもしれません。
また基本的にストーリーは主人公エドガンを中心に一本道を進んでいくので、迷子になることもありません。
もう一つのテンポの良さは編集です。
アクションシーンも多いですが、これらの編集が非常にキレがあります。
またそのキレはアクションだけでなく、本作の要素の一つのコメディ部分にも生かされており、特に墓場のシークエンスは編集が笑いに直結していたように思います。
このようにストーリーの展開の早さ、編集の小気味良さでストレスなく鑑賞できるというのが、本作の良さではないかと思います。
テンポよく進むということだと、キャラクターが描ききれていないかもと思う方もいるかと思いますが、意外とそうではありません。
本作はコメディ色が強く、登場するキャラクターもクセがある者が多いです。
主人公エドガン、彼とパーティを組むメンバーたちは主人公側と思えないほどの負け犬感が漂っています。
それぞれ過去の様々な経験により、自分に自信が持てなくなったり、人を信じられなくなったりしているわけですが、そのような彼らが一緒に旅を続ける中で、お互いに影響され、自信を取り戻していく様子が描かれます。
先に書いたようにストーリーとしては一本道なので、まさに彼らが自信を得ていく過程に寄り添っている感じもし、彼らへの思い入れがどんどん強くなっていく感じがしました。
エドガンは負け犬ながらもポジティブな気持ちを常に持っていて、彼が言ったセリフ「失敗したためことをやめたら、ほんとうに失敗する」はメモをしたくなるような名言だと思いました。
RPGというのは、パーティを組んで旅をしていくという形式が多いですが、まさに自分もパーティの一員となって彼らと旅している気分になれるように感じます。
本作は出演陣も意外にも豪華です。
主人公のエドガンのクリス・パイン、その相棒ホルガのミシェル・ロドリゲスがは見る前から認識していましたが、悪役(?)をヒュー・グラントが演じています。
またカメオでブラッドリー・クーパーが出てきて、びっくりました。
どこに出てくるかは、見てのお楽しみです。
あと、パーティの一人ドリックを演じていたのが、エイミー・アダムスではないかと一瞬思ったのですが、年齢的にちょっと合わない。
確認したらソフィア・リリスという別人でした。
しかしソフィアはドラマでエイミー・アダムスが演じた役の若かりし頃を演じたこともあるようで、やっぱりみんな似ていると思っているのですね。

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2023年4月22日 (土)

「仕掛人・藤枝梅安(二)」因果応報と業

2月に公開された1作目に続いての2作目となります。
とはいえ、話としては独立しているので本作だけを鑑賞しても全く問題ないと思います。
前作では昨今珍しい正統派の時代劇を見せてもらったと感じました。
本作はそこはしっかりと押さえつつ、「仕掛人」という物語の独自性を色濃く描いています。
仕掛人の独自性とは他の時代劇とは異なり、ダークヒーローであるということです。
仕掛人は悪を裁く者でありながら、人を殺すという悪を行う者です。
彼らは人を殺めているわけですから、それにより誰かの恨みを買う。
梅安にしても彦次郎にしても、いつかは誰かに殺されるという思いを持ちつつ、この稼業を続けています。
本作ではかつて梅安が手をかけた女の夫、井上半十郎に、梅安が命を狙われます。
井上もまた仕掛人となっておりました。
まさに因果応報です。
梅安もただ座して殺されるのを待つわけでなく、井上と対峙します。
殺される、生き残る、それは紙一重。
人を殺す稼業であることの宿命と梅安は静かに向かい合います。
また本作では人の業というものも強く描きます。
金が欲しい、女を抱きたい、そのような欲に、それを持つ人間そのものが支配される。
梅安はその生い立ちから女という存在を疎みつつも、人間の男として激しく女を求めてしまう。
本作で梅安のターゲットとなる井坂惣一はその業に呑まれた男です。
梅安にしても井坂にしても業に呑まれている点では同じで、何かの加減でそうなってしまったというだけに過ぎないのかもしれません。
人は多かれ少なかれ、自分の中にある欲、すなわち業に翻弄されてしまうのです。
「仕掛人・藤枝梅安」は人間が背負ってしまった業に翻弄される人々を描いていると思います。
そこに人は自分の奥底にある部分に共通なものを感じ、心を揺さぶられるのでしょう。
驚いたのは最後に鬼平が登場するところ。
エンドロールに鬼平の名前があり、「あれ、出てたっけ?」と思ったのですが、ポストクレジットでの登場でした。
調べたら「鬼平犯科帳」も映画になるのですね。
こちらも期待したいところです。

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2023年4月10日 (月)

「Winny」組織と個人

WinnyとはP2P技術を使ったファイル共有ソフトです。
P2PとはPeer to Peerの略で、クライアントサーバなどを解さずに、端末同士が直接ファイルをやり取りする仕組みです。
現在LINEや仮想通貨などでも使われている技術です。
このソフトが発表されたのは2002年とのことです。
私は仕事柄著作権について気をつけるようにしているので、このソフトを使ったことはなかったのですが、コンピュータの雑誌などで話題になったのは覚えています。
当時このソフトを使って違法に著作物をやり取りした事案が多く発生し、何人か著作権法違反で逮捕者が出ましたが、このソフトの開発者である金子勇さんが逮捕されたことで、大きく取り上げられました。
金子さんは著作権法違反の幇助ということで逮捕されましたが、これが議論を呼びます。
劇中でも例として挙げられますが、包丁で人を刺した時、刺した人間は当然罪になりますが、包丁を作った人間は罪になることはありません。
金子さんについても同様のことが言えるのではないか、ということですね。
警察・検察は、金子さんに著作権という仕組み自体を否定する意思があり、それはすなわち社会テロであるという筋をたていました。
それに対して弁護側は技術者として高いハードルを越えて新しい技術を開発しようとするのは、技術者としての本分であり、このように開発者を逮捕することが前例となれば、未来の技術者が萎縮し、日本が新しい技術を開発しにくい社会になると訴えます。
この事件については私は経緯について、あまり詳しくなかったのですが、本作を見る限り警察・検察は新しい技術による新しい事案に対応しきれなかった感はありますね。
対応しきれなかったので、著作権違反の土壌となっているWinny自体を止めようとしたということでしょうか。
ただこれは非常に乱暴な対応で、結果的にはあまり効果はなかったように思います。
当時の記憶ですが、WInnyと同様の機能を持ったソフトは他にもたくさん出てきていたように思います。
一旦ソフトとして発表されれば、ソースコードをなどを見れば他の技術者も同様のソフトは開発できるでしょう。
検察などは悪い筋であったと途中で思ったとしても、大きな組織ということで止まれなかったのかもしれません。
組織の慣性の法則が働いてしまったのでしょうか。
同様に組織の慣性の法則が働いていた例として、本作には愛媛県警の裏金事件もWinny事件と並行して描かれます。
この事件のことも私は覚えていて、現職警察官が内部告発したことに驚きました。
これも皆が悪いこととしてわかりながらも、組織としてはそれを止めることができなかった、悪い慣性の法則の例だと思います。
組織の慣性の法則は、得てして個人の価値観なども踏み潰します。
個人は大きな組織と対することはなかなかできません。
劇中で金子さんがWinnyを開発することになった動機として、強固な匿名性を挙げていました。
組織と対等に立つための、個人を守るものとしての匿名性。
匿名であれば、組織に対して安心して物を申すことが出来る。
個人を守るための最大の防具ということですね。
これはその通りだと思います。
ただこの防具は、今では武器となっていることも問題になっているようにも思えます。
匿名であれば何もやっても平気、という気分が次第に広がっていったようにも思えます。
いわゆるバイトテロや迷惑系動画などはそのような気分が暴走した事例かもしれません。
おそらく金子さんは性善説でものを見る方だったのでしょうね。
ここまで匿名を使って悪さをする人が増えてくるとは想像もしていなかったのではないでしょうか。
とはいえ、このような状況であってもTwitterやInstagramの開発者を逮捕しよう、などと言い出す人は皆無なわけで、金子さんの逮捕が今の感覚からするとやはりおかしいという感じはしますね。
本作では派手さはないですが、俳優陣も非常にいい演技をしていたと思います。
金子さんを演じていた東出昌大さんは、癖などを再現していて、彼の個性(自分のことを話すのは苦手ながらも、意外とユーモアもある)を醸し出していたように思いました。
金子さんをサポートした壇弁護士を演じていた三浦貴大さんもよかったです。
役作りでしょうか、普段よりはかなりふっくらした体型にしていて、壇さんの思いなどがはっきりと伝わってきました。

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2023年4月 6日 (木)

「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」ミステリーとしては乱暴

テレビシリーズは全く見ておらず、鑑賞しました。
キャラクターとそのバックボーンを知らないと少々ハードルが高いですね。
予告編で提示される、夢の中での殺人が現実に起こるという謎、それがどのように解決されるのかということに興味がありました。
ストーリーとしてはかなり複雑に作られていて、シリーズを見ていないということも加わって、理解しにくい部分も多々ありました。
映画の脚本は秦建日子さんということで、ドラマの時の「アンフェア」のような複雑さを感じます。
ドラマであればまだ追いかけやすいのですが、映画という限られた時間だと少々展開が乱暴な感じがします。
提示された謎の解決についても、SF的な要素を持ち込んでいるので、強引さが否めません。
ドラマの方もそのようなことなのかもしれませんが、ミステリーとして見ると、トリックとしては乱暴さは感じます。
ドラマを見ていないとキャラクターに感情移入する暇がない展開ですし、ミステリーとしての乱暴さもあり、結果終わりまで乗り切れないままでいってしまいました。

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