「映画ドラえもん のび太と空の理想郷」原作者へのリスペクト
劇場版の「ドラえもん」の最新作で、久しぶりのオリジナルストーリーです。
脚本家は現在大河ドラマ「どうする家康」を執筆している古沢良太さんです。
「ドラえもん」らしくタイムマシンを使った伏線も張ってありますが、この辺は元々デビュー当初から「キサラギ」などでしっかりとした構成力を見せていた古沢さんらしさも感じました。
さて本作ですが、オリジナルストーリーでもありますが、劇場版の「ドラえもん」の多くがそうであるように、日常とは異なる世界(それは過去であったり、宇宙であったり、地底であったりしますが)にのび太たちが冒険に行くという立て付けになっています。
タイトルにある「空の理想郷(ユートピア)」とは、空中都市パラドピアで、この都市は時空を調節する力を持っていて、そこに暮らす人々は平和で穏やかな生活を送ることができています。
本作のテーマは現代らしくズバリ多様性となるでしょう。
パラドピアの人々は皆、優秀で穏やかです。
そこで暮らし続けると、都市を照らす光の影響を受け、皆そのようになっていくのです。
しずかちゃんやジャイアン、スネ夫もその光の影響を受け、みな「いい人」になっていきますが、さすがのび太は一人だけダメな子のままです。
皆が画一化され、管理されている未来都市というイメージは今までも数々のSF映画でも語られてきました。
一見ユートピアに見えるが、その実は人間性を否定したディストピアであるというテーマですね。
本作もそのテーマをなぞっているように思います。
多くのこのテーマの作品は前半よりユートピアの皮を被ったディストピアであることは醸し出されているのですが、本作が巧みであるのは、途中までは本当にユートピアとして見えるように描いていながら、中盤くらいで一気にものの見方を180度変えるような出来事を置いているということでしょうか。
そのため多様性というテーマがより強調してわかりやすくなったと思います。
ラストのスペクタクル感も十分にありましたし、見応えのある劇場版に仕上がっているかなと思いました。
古沢良太さんは原作者の藤子・F・不二雄さんを強くリスペクトしているようで、その思いが伝わってくる作品となっています。
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