「シャイロックの子供たち」普通の人
本作は池井戸潤原作、本木克英監督という「空飛ぶタイヤ」と同じ座組となっています。
「空飛ぶタイヤ」は扱っているテーマの重さからか、骨太な社会派ドラマといった印象を持ちました。
またドラマ「半沢直樹」で使われた「倍返し」という言葉が数年前に流行りましたが、池井戸さん原作の映像作品は、やられた方がやり返すカタルシスが特徴である印象もあります。
骨太さ、熱さといった今までの池井戸ドラマのトーンを期待していくと、本作は少し印象が違います。
主演が阿部サダヲさんであるというのは一つそういった印象を持つ大きな要素かもしれないです。
阿部サダヲさんは色々演じられる方ですが、割と飄々としたキャラクターのイメージがあります。
本作で阿部さんが演じる西木もそのようなイメージのキャラクターだと思います。
今までの池井戸ドラマの主人公は割と意志が強い熱い男が多かったかと思います。
彼らは主人公として非常に強いキャラクターでドラマを牽引する力があります。
つまりは彼らはフィクション的であり、現実離れしたキャラクターであるのでしょう。
西木はそれらのタイプとはちょっと違います。
飄々としていていて、情けないところも少々ある。
その反面、人をよく観察していてよく気が付きますし、言うべきところでは言うこともあるしっかりとした側面もある。
掴みどころがないとも言えます。
今までの池井戸ドラマの主人公に比べれば普通の人、なのかもしれません。
とは言いつつ、筋が通らないことは許せないという思いはこれまでの池井戸ドラマの主人公とは共通していて、その思いで後半はドラマを展開させていきます。
西木はこのような強さは持っているのですが、合わせて弱さも持っています。
ラスト前での西木の行動はこの弱さを表しています。
「強さ」一辺倒ではなく、合わせて人間らしい「弱さ」を持っているという点で、今までの池井戸ドラマの主人公に比べ、普通の人という印象を持たせるのかもしれません。
そのためか、カタルシスという点では半沢直樹的なものを期待すると少々物足りないかもしれないですね。
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