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2022年12月11日 (日)

「ブラックアダム」DCUの行く先は?

順調に拡大を続けているMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に対し、DCの作品は迷走を続けている感があります。
一時期はザック・スナイダーの元、DCEU(DC・エクステンデッド・ユニバース)として展開されていましたが、次第に空中分解してっているような印象があります。
もちろん単独で見ればいい作品(例えば「ワンダーウーマン」や「アクアマン」など)も多いのですが、MCUのような世界観は提示されるには至っていません。
MCUのケビン・ファイギのような卓越したプロデューサーがいないためと言われ、最近では大幅な組織改革の末に、ジェームズ・ガンとピーター・サフランがDCユニバースの再建を任されました。
最近の報道ではその方針に合致しないということで、予定されていた「ワンダーウーマン3」はキャンセルされたということです。
DCの作品では、DCU(最近はエクステデッドを取ったこの言い方になっているらしい)に属さない独立した「ジョーカー」や「ザ・バットマン」なども高評価を得ているので、個人的には無理やりユニバースにしなくてもいいのではないかとも思っています。
さて、本作「ブラックアダム」はユニバースに属しているのか、独立しているのかと言えば、前者にあたります。
「シャザム!」や「スーサイド・スクワッド」にも登場しているキャラクターが本作にも登場していることがわかりますし、最後の最後に超有名なあの人もサプライズで出てきます。
MCUのユニバースは緻密に組み立てられていて、新しい登場人物が出てくる時も、それまでの流れを押さえた上で計算されているので、違和感や突然感はあまりありません。
対してDCUは「ジャスティス・リーグ」もそうでしたが、かなりキャラクターの投入の仕方が荒っぽい。
本作でもブラックアダムに対抗する新たなヒーローチームJSAが登場しますが、ここに属するヒーローは我々にとって初めて会う人たちばかり。
彼らについて掘り下げる時間がないため、ブラックアダムに当てるためのその他大勢的な印象は拭えず、魅力的には見えませんでした。
ブラックアダム自身については、彼の出自も含めしっかり語られているので、現在なぜああいうアンチヒーロー的な立場になっているのかも理解でき、感情移入もできるようになっていると思います。
ただ、DCの作品のヒーローというのは、割とスーパーマン的なマッチョタイプなステレオタイプのものが多く、ブラックアダムのその亜流に見えてなりませんでした。
劇中で登場人物のセリフの中に「スーパーヒーロー」や「チャンピオン」という言葉がダイレクトに出てくるところに興が削がれます。
MCUのヒーローが近年、多様性を相当に意識し、それゆえユニークな物語を生み出せているのに対し、どうしても過去のスーパーヒーロー像に縛られ、新しさを出しきれていないのがDCUな気がしてなりません。
新しいリーダーによるDCUはどのように変わるのでしょうか?
ジェームズ・ガンは「ザ・スーサイド・スクワッド」でもいい仕事してくれていたので、期待したいところです。

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