「スペンサー ダイアナの決意」檻の中の雉
エリザベス女王が死去し、何かとお騒がせなハリー王子も話題になったりと、最近注目を浴びることが多い、イギリスロイヤルファミリー。
その歴史の中でもダイアナ元妃の存在は今でも大きいかと思います。
その衝撃的な最後だけでなく、彼女がロイヤルファミリーを離れるという決断をしたことも当時はショッキングな出来事でした。
彼女がなぜそのような決断をしたのかが、この作品では描かれます。
物語の冒頭よりダイアナの行動はやや常軌を逸したように見えます。
その行動は心を病んでいる人のよう。
劇中でもしばしば彼女は幻視を見たり、食べたものをすぐに吐いてしまったりします。
彼女は幸せな気持ちでロイヤルファミリーに嫁いだものの、そこはまるで牢獄のような場所でした。
ダイアナが息子たちと話す場面で、ここ(王室)には未来はなく、過去と現在は同じという言葉が出てきます。
まさに伝統に縛られている王室を言い当てていると思いました。
至る所に敷きたりがありそれを守ることを求められ、プリンセスとしての役割を演じることを強要され、挙句のはてに夫は他の女性へ気持ちが動いてしまう。
彼女は自分自身ではない何者かになってしまったかのように感じたのでしょう。
劇中でしばしば彼女の少女時代の様子が挟み込まれてきます。
それを見ると彼女は、明るく自由に振る舞う少女のように見えました。
実家であるスペンサー家もそのように彼女を育てたのでしょう。
しかし、ロイヤルファミリーでは彼女は自由の翼を折られた鳥のようでした。
王室の男子が狩をする場面があり、そこの狩場に雉が放たれます。
その雉は、狩られるために従順に育てられていました。
これはダイアナの暗示だと思います。
雉の羽は濃緑と濃赤でしたが、そのシーンの近くでダイアナが身につけていた服の色も同じでした。
ロイヤルファミリーでは、伝統に従順にいなくてはいけない。
しかし、ダイアナは狩場へ侵入し、息子たちをその場から連れて行きます。
そして立ち寄ったファストフードで名前を聞かれた時、旧姓であるスペンサーを名乗るのです。
彼女が狩場へ侵入した時、かつて父親が来ていた上着を着ていました。
雉の色をした服ではなく。
彼女が従順な鳥であることを辞め、スペンサー家の普通の女性として生きていこうという決意を暗示しているように感じました。
ダイアナを演じていたクリスティン・スチュアートは劇中ではダイアナにしか見えなかったです。
彼女が追い込まれ病んでいる様子を見事に演じていました。
彼女はバイセクシャルであることを公にしていますが、そのような彼女がお堅いロイヤルファミリーの一員を演じることに意外さを感じましたが、作品を見ると納得しました。
この物語のダイアナは檻の中から飛び出し、自由に自分らしく生きていくことを決意した人物です。
その人物像はクリスティンも共感するところがあったのではないかと思いました。
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