「ヘルドックス」魅力的なキャラクターたち
原田眞人監督と岡田准一さんが「関ヶ原」「燃えよ剣」に引き続いての3回目のタッグとなる作品です。
お二人は相性がいいのですね。
それまでの2作と異なって本作は現代劇で、かなりバイオレンス色の強い作品となっています。
岡田准一さんはこのところストイックな役が多いですが、本作はその極みのような感じもします。
彼の役所は暴力団組織に潜入する元警察官、兼高。
必要とあらば躊躇なく人を殺すこともできる男です。
岡田さんは終始笑うことなく、ワイルドにこの役を演じていました。
もちろん岡田さんですので、アクションシーンも見せ所が多いです。
「ザ・ファブル」などとは異なり、人を殺すアクションですので、今まで以上に殺気を感じます。
兼高とコンビを組むのが、サイコボーイとあだ名される室岡です。
彼を演じるのは坂口健太郎さん。
坂口さんは今まで割といい青年役が多かった気がしますが、本作は今までにないアブナイ雰囲気を発しています。
優しげな顔つきだけに、キレた時の室岡の異常さが際立って見えました。
坂口さんにとって新境地となったと思います。
本作は主人公コンビである兼高、室岡の物語ですが、もう一人存在感のある人物がいました。
兼高が潜入した暴力団のトップ、十朱です。
彼を演じたのはMIYAVIさん。
私は全く知らない方なのですが、有名なギタリストなのですね。
劇中でハイキックを放つ場面があるのですが、非常にキレが良く、アクション畑の方かと思ってしまいました。
十朱というキャラクターも非常に興味深く、個人的には最も気になる人物でした。
<ここからネタバレあり>
彼は旧態然とした暴力団のトップではなく、ビジネスとして組織を運営し、世界的に影響力を拡大してきました。
見た目もスタイリッシュであり、組長というよりはホストクラブのオーナーといった風情です。
そのようでありながら、彼は組織のメンバーに対しては義理堅く、ファミリーとして扱っています。
まさに「親」ですね。
しかし最終盤に明らかになりますが、彼はかつて警察のアンダーカバーとして組織に潜入した人物でありました。
兼高の前任というわけです。
しかし、彼は警察から組織に鞍替えをしました。
ただ彼は金や権力のためにそうしたわけではありません。
兼高に指令を送る公安幹部の発言からも伝わってきますが、警察組織の方が非常で、潜入捜査している彼を人間とも思わないような扱いをします。
十朱はそのような警察よりも、組織の方が情があり、自分の本音で人間として生きていけるように感じたのでしょう。
組織のメンバーたちとも信頼関係で結ばれ、自分の居場所と感じたのかもしれません。
だからこそ彼は兼高にも同じように期待したのでしょう。
兼高と十朱は裏表であったのかもしれません。
兼高もアウトローで警察に駒のように使われているわけですから、十朱のように感じるようになってもおかしくはありません。
ただ組織の中でもちょっと浮いた存在である室岡とコンビを組み、彼との関係性が彼の中では組織との関係よりは濃いものになっていたのではないかと思います。
だから最後に室岡と対決した時に「お前がいたからこそやり遂げられた」と言ったのではないかと思いました。
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