「アキラとあきら」味わうカタルシス
池井戸潤さんの作品は映像化されていずれもヒットしていますが、本作「アキラとあきら」もその中に加わりますでしょうか。
池井戸さんの作品は読んでいても、見ていても止まらなくなるストーリー展開が共通していますが、やはり最後にカタルシスがあるのですよね。
そこが最も読者・観客を惹きつけるポイントだと思います。
本作においても、全く違う個性の瑛と彬が最初は対立しつつも、お互いに認め合い、最後は協力して難局を乗り越えるという展開が大いにカタルシスを与えてくれます。
ライバル同士が認め合い、協力するという展開は少年漫画によくあるものですが、やはり王道というか見ていても引き込まれるものがありますね。
瑛は幼い頃の経験から、銀行マンになっても情を重んじようとします。
銀行は金を貸し、利益を得るという商売ですが、それ以上にお金を貸すことによって人々の事業が拡大する手助けをして、皆を幸せにしたいと考えています。
業績重視の上司からは甘い、と言われますが、それでも彼はブレない信念を持っています。
方や彬は大企業の御曹司でありながら、一族のしがらみを疎い、銀行に就職します。
すなわち彼は情から、数字だけが物を言う世界に逃げ込んだのです。
そのためか彼は非常に冷徹に見えますが、自分の中にある情を無くしたわけではありません。
違う個性ながらも二人のあきらは、次第にお互いを認め合います。
そして後半に起こる大きな局面に二人は協力して挑みます。
冷徹な数字や戦略だけではなく、情、思いとが結果的には重要となり、関係者の気持ちを動かします。
確かに仕事において精緻な戦略・戦術はもちろん重要ですが、それだけでうまくいくとは限りません。
関わる人の気持ちがそこにうまく向かっていかなければ成功はおぼつきません。
情や思いといった感情的な要素も重要なのです。
この思いというものを描くのが池井戸さんは非常にうまく、それが冒頭に言ったカタルシスにつながっていくのだと思います。
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