「バイオレンスアクション」日常と非日常のギャップ
殺し屋というのは普通に生活していると縁がない職業な訳で、だからこそフィクションで描く職業(?)としては魅力的です。
非日常が日常と接着した時のそのギャップから物語を作ることができます。
岡田准一さん「ザ・ファブル」などはその好例で、日常とは無縁に生きてきた殺し屋が、普通の生活を送るというところにドラマが生まれます。
本作の主人公は腕利きの女殺し屋ケイ。
しかし彼女は簿記の専門学校に通い、資格を取ることを夢に持っています。
「ザ・ファブル」と同様のギャップが設定されています。
なので、面白いドラマが生まれるかと思ったのですが、そうでもない。
どうしてかよくわからなかったのですが、非日常と日常が化学反応を起こせなかった感じがしました。
「ザ・ファブル」の場合は非日常であるのは主人公アキラだけで、それ以外の登場人物や状況はリアリティがあるように描かれています。
だからこそギャップが生じ、ドラマが生まれます。
本作はケイ自身はギャップがあるものの、それ以外の設定(殺しの請負がラーメン屋、ヅラの運転手、ハイテンションなヤクザの親分など)が極めてフィクション的であって、つまりは非日常的であるため、ギャップが感じられない。
どちらかというとフィクションの世界観の中でおかしな連中が出てきてワイワイやっている福田雄一監督的な感じを受けました。
福田雄一監督の作品は苦手なのですが、あそこまで振り切れてもいないという中途半端な印象です。
タイトルにアクションとあるので、その辺りも期待してしまったのですが、厳しいものがあります。
オープニングの半グレ集団とのバトルはそこそこ迫力はありましたが、早いカット割と吹き替えでなんとかスピード感のあるアクションにしようとしている感じです。
アクション映画的にも物足りなさを感じました。
最後に、偶然にも「ザ・ファブル」と本作には佐藤二郎さんが出演していますが、この役者さんは使い所が難しいなと思いました。
クセがある役者さんなので、使い所を間違えると一気にドラマが嘘くさくなってしまいます。
福田雄一さん作品などはそういうところがマッチしていて、多用されているのはわかります。
「ザ・ファブル」はクセは出していますが、つまらない親父ギャグを飛ばす中年男という役割を演じているので、リアリティなのですね。
本作のヤクザの親分はリアリティなのかフィクションなのかがどっちつかずな感じがしていて、それが作品の中途半端さと共通した印象を感じます。
そう考えてみると、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、非常に上手に佐藤二郎さんを使っているなと思います。
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