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2022年7月16日 (土)

「エルヴィス」 境界線上に立つ

「ボヘミアン・ラプソディ」など最近アーティストを主人公とした作品がコンスタントに公開されています。
本作もその一つで、タイトルの通り伝説のロックスター、エルヴィス・プレスリーを主人公とした作品です。
これらの作品は割とストーリーの流れは似通っているところもあります。
才能のある若いアーティストが見出され、世間に衝撃を持って受け入れられて一気にスターダムにのしあがるものの、その後はさまざまなスキャンダル(金や薬やその他諸々)に見舞われ我を見失うが、彼はその困難の中で自分の本質をもう一度再発見するといった流れです。
やはり伝説となるスターは才能だけでなく、そのような波瀾万丈な人生があるからこそ伝説となるわけで、似通った展開となるのは致し方ないところなのかもしれません。
本作を見ていて、もう一つこのようなトップスターとなる人間にはもう一つの特徴があるようにも思いました。
エルヴィスは白人でありながらも幼い頃は貧しかったため、貧しい黒人との交流が多かったようです。
その中で彼は黒人の音楽性に触れ、それを我が身に取り込みました。
彼の音楽はカントリーと黒人音楽のミックスと言われていますが、白人と黒人の境界線に彼は立っており、それだからこそ異なる文化が化学反応を起こし新しい音楽を生み出すことができたのではないかと感じました。
この二つの世界の間に存在しているということが世間にインパクトを与えることができたアーティストの特徴なのではないかと思います。
「ボヘミアン・ラプソディ」で描かれたフレディ・マーキュリーはゲイであり、男と女の境界線上に立っていると言えるような気がします。
この境界線上にいるということは両方に属しているとも言えますが、両方に属していないとも言えます。
だからこそそこには葛藤があり、その人物は不安定さを持つことになると思います。
このような映画で描かれるアーティストは心理的に不安定であり、攻撃的にもなれば臆病にもなるのです。
大概このようなアーティストの不安定さにつけ込む人物が登場しますが、本作の場合はトム・ハンクス演じるパーカー大佐になります。
境界線上に立つことにより、他の人が持ち得ない新しい感性で新しいものを生み出すことはできるものの、その代償として誰にも理解されない孤独感、不安定さを持つのが、このような時代を作るアーティストの特徴なのかもしれません。
エルヴィスを演じたオースティン・バトラーは素晴らしかったです。
若き日から、晩年までを演じきり、見ている側としてはエルヴィスにしか見えませんでした。

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