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2022年7月29日 (金)

「キングダム2 遥かなる大地へ」最初から最後までクライマックス

嬴政が王座に返り咲いたところで1作目は終わりました。
前作でもアクションは見せ場もたくさんあり、見応えがありましたが、本作はスケールが違います。
2作目で舞台となるのは主に戦場。
というより最初から最後までほぼ戦場です。
嬴政が復帰したとはいえ、まだ不安定さがある秦国へ隣国魏が攻め込み、蛇甘平原で激突しました。
信は一兵卒として参加し、初陣を飾ります。
歩兵対歩兵、または歩兵対戦車隊といった大規模な戦いは前作にはない迫力です。
さすが中国でロケをしただけのことはあると思いましたが、本作の制作はコロナ禍にかかっていたとのこと。
大規模な軍勢同士のぶつかりはリモートで中国で撮影し、役者がアクションする寄りのカットは日本で、とカットごとにどこで撮るかを細かく設計していったそうです。
これはなかなか大変なことだと思いますが、違和感なくつながっていたと思います。
信を演じる山崎賢人さんは相変わらずのフィジカルの強さで、見事な立ち回りを見せてくれましたが、今回は羌瘣を演じる清野菜名さんの美しい動きに魅せられました。
彼女のことはほとんど知らなかったのですが、こんなにアクションができる女優さんがいたんですね。
かなりの逸材だと思いました。
まさに舞踏のような流れる動きの中でのアクションは、豪快な信のスタイルとは対象的でした。
信は大将軍になるという夢を追いかけています。
しかし、大将軍になるにはただ戦いが強いということだけでは難しい。
信は初めての戦いの中で、さまざまな男たちに出会うことにより、それを学んでいきます。
縛虎申は最初はただの非情な部隊長のように見えますが、戦士として決して折れない心を持っており、いかに高い壁であろうとそれを突破しようとする強さを持っています。
あくまでも目的にこだわり抜くという揺るぎなさは上に立つ者に求められます。
最後に一騎打ちで勝負をつける麃公と呉慶ですが、方や戦の匂いを感じ直感で行動する将軍であり、もう一人は膨大な知識をベースに緻密に組み上げられた作戦を実行していくタイプです。
スタイルは違いますが、彼らは局地での戦いではなく、大局を見て行動しています。
信は目の前の戦いばかりを見てしまうきらいがありますが、彼らの戦いを見ることにより、より高い視座を得ることができました。
次回は一転して秦国内部での戦いになる模様。
国と国がぶつかり合う戦闘ではなく、暗殺戦になるのでしょうか。
陽の戦いから陰の戦いへ。
さらに信は進化していくのでしょう。

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2022年7月27日 (水)

「バズ・ライトイヤー」 思っていたよりSF

アンディ少年のお気に入りのおもちゃである、バズ・ライトイヤーのフィギュア。
そのアンディが大好きだったバズの映画がこれ、「バズ・ライトイヤー」です。
・・・むっちゃ、SFじゃないの!
アンディって、小さいくせにかなりのSF好きなのね・・・。
「トイ・ストーリー」のイメージで本作を見にいくと、テイストの違いに戸惑うかもしれません。
古典的ではありますが、本作は「ウラシマ効果」を扱ったSF映画になりますので。
ウラシマ効果とはなんでしょうか。
光速に近いスピードが出せるロケットに乗っている人と、出発した場所の人では時間の進み方が異なり、ロケットに乗っている人の方の時間の進み方が遅くなるので、何年か後に出発地に帰ってくると、出発地では何十年も時間が過ぎていたというような話で説明されます。
これは相対性理論から導き出されます。
これは実際にも観測されていて高速で地球の周りを回っている国際宇宙ステーションの時計は地上と比べるとほんのちょっと遅れるということです。
本作にウラシマ効果が取り入れられたのは「ライトイヤー」という名前からでしょうね。
ライトイヤーは宇宙探査中、ある星で自分のミスで宇宙船を傷つけてしまい、そのため乗組員は故郷に帰れなくなってしまいます。
彼はその責任を感じ、光速に近いスピードで飛ぶことにより得られる特殊な物質(船のエネルギーになる)を得るため、フライトを重ねます。
しかし、先ほど書いたウラシマ効果により、彼以外の人々は彼が帰還するために歳をとり、そして亡くなってしまいます。
それでも彼は飛びます。
彼が負った責任を果たすために。
しかし、人々は次第に彼らが不時着した星を新たな故郷として、生活をし、定着し始めていました。
年月以外にもライトイヤーと他の人々の間では価値観にギャップができてきたのです。
そんな彼らのところに謎のエイリアン、ザークが現れたのです。
<ここからネタバレあり>
ザークこそ、未来のライトイヤーでした。
彼は自らの失敗をないことにし、乗組員を故郷の星に戻れるようにするために、時間を遡ってきたのでした。
彼もまた責任感で行動してきたのだと言えます。
しかし、乗組員の子孫たちは新しい故郷を見出しており、かつての星へ執着はしていません。
責任感という自らのエゴのため、今を生きている人々の幸せを犠牲にできるのか。
ライトイヤーは未来の自分と対決します。
むっちゃS Fですよね。
「トイ・ストーリー」のノリで観にきた方は面食らうに違いありません。
個人的には嫌いなストーリーではなかったのですが、「トイ・ストーリー」的なおもちゃっぽいデザインはちょっと合わないような気もしました。
この辺りのしっくりいかない感じが評価の低さにつながっているのかもしれません。

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2022年7月18日 (月)

「ソー:ラブ&サンダー」トラウマとの対峙

MCUのフェーズ4はそれまでのフェーズに比べると方向性が定まっていないという批判があります。
先般マーベルのプロデューサーが「フェーズ4はインフィニティ・ウォーやエンドゲームの事件から受けたトラウマにキャラクターが向き合うことがテーマ」といった趣旨のことを話していました。
これはとても腑に落ちる内容です。
確かに「ワンダビジョン」「マルチバース・オブ・マッドネス」はワンダがヴィジョンや子供たちを失ったことをどうしても諦めきれないことが起因となっていますし、「ノー・ウェイ・ホーム」も師であるトニー無き後にヒーローとして覚悟を決めるスパイダーマンを描いています。
他にも「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」「ブラック・ウィドゥ」なども多かれ少なかれそのテーマが織り込まれています。
そして本作「ソー:ラブ&サンダー」もそのテーマは強く描かれています。
ソーは数々の戦いの中、多くの愛するものを失ってきました。
母、父、そして弟。
そのためいつしか彼は戦いを疎うようになりました。
しかし、神を次々に殺していく”神殺しの”ゴアも登場により否応なく再び戦いにソーは向き合っていきます。
クリスチャン・ベール演じるゴアも愛する娘を神のために失ってしまった男です。
彼は神を殺せる剣を持ち、神々へ復讐を行います(とはいえ、彼の真の目的は他にあることが広範で明らかになります)。
ソーとゴアは共に愛するものを失った者であり、方や戦いを避け、方や戦いを巻き起こす者となった対照的であると言えるかと思います。
まさにタイトルにある愛=ラブが本作の主題であることがわかります。
もう一つの愛が描かれます。
かつてソーの恋人であったジェーンの再登場です。
彼女は成功を収めた学者となりましたが、末期がんとなり余命幾許もないことがわかりました。
しかし、ニューアスガルドにある破壊されたムジョルニアの前に立った時、その力を得て、マイティー・ソーとなったのです。
彼女はムジョルニアを手にしている時はその力により、がんを抑え込み屈強な体となっていますが、手放すと病に侵された状態に戻ってしまいます。
ジェーンは手にした力で人々を救い、そしてソーとともにゴアと戦います。
彼女はそれによって生を実感し、その命尽きるまで懸命に生きようとします。
ソーもそんな彼女の運命を知った時、共に戦うことを選択します。
愛はいつか失われるかもしれない。
それが怖いからといって何も動かないというのは良きことなのか。
ジェーンの生き様を見て、生あるかぎり、懸命に生きて愛していこうとソーは思ったのではないでしょうか。
フェーズ3の後半からこれまでソーは力がありながらもずっと逃げてきていたのかもしれません。
ある意味、彼はヒーローとしてようやく一皮剥けたかもしれません。
<ここからネタバレあり>
ジェーンを演じたナタリー・ポートマンのマイティ・ソーは素晴らしかったです。
美しくかつ、逞しく。
もっと彼女の姿を見ていたかったですが、そうもいかないようです。
ただ一つの慰めは彼女もアスガルドの神々が死後暮らす場所に行ったようなので、いつか再びソーと出会えることになるであるということですね。
ヴィランであるゴアも深いキャラクターでありました。
彼の本当の狙いは神々への復讐ではなく、愛する娘の復活でした。
自分の命と引き換えに復活させた娘がラブとなり、ソーが親として育てていくことになるとは意外な結末でした。
それでタイトルが「ラブ&サンダー」なのですね。
「ソーは戻ってくる」とあったので、次回はこのコンビの作品が見られるということでしょうか。
ラブを演じていた女の子はソー役のクリス・ヘムズワースの実の子供だそうです。
息の合ったコンビになりそうなので、期待したいです。
監督のタイカ・ワイティティの演出の演出のさじ加減も良かったです。
評価が高い「バトルロワイヤル」は初めてのタイカの作品だったので、見ていて戸惑いがありました。
テイストが大きく変わったためです。
しかし、それから彼の他の作品も見る中で、彼独特のテイストが好きになりました。
そのため本作は非常に楽しめました。
彼の作品は現実の過酷な部分と面白おかしいコメディの部分の両方が入っているのが特徴です。
一見合わない要素なのですが、彼の作品はそのバランスが絶妙で、それぞれがぶつかるのではなく、お互いに高め合うような感じがするのですね。
「ジョジョ・ラビット」などはその印象が強かったですが、本作も同じようなテイストを感じました。
タイカは「スター・ウォーズ」の映画も企画しているとのこと。
「スター・ウォーズ」はディズニー配信も含め、色々作られていますが、MCUのようなエネルギーを個人的に感じられていません。
お約束ごとが多い中で、こじんまりしているようにも感じます。
タイカであればそのようなお約束ごとを蹴散らしてくれるような気がします。

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2022年7月16日 (土)

「エルヴィス」 境界線上に立つ

「ボヘミアン・ラプソディ」など最近アーティストを主人公とした作品がコンスタントに公開されています。
本作もその一つで、タイトルの通り伝説のロックスター、エルヴィス・プレスリーを主人公とした作品です。
これらの作品は割とストーリーの流れは似通っているところもあります。
才能のある若いアーティストが見出され、世間に衝撃を持って受け入れられて一気にスターダムにのしあがるものの、その後はさまざまなスキャンダル(金や薬やその他諸々)に見舞われ我を見失うが、彼はその困難の中で自分の本質をもう一度再発見するといった流れです。
やはり伝説となるスターは才能だけでなく、そのような波瀾万丈な人生があるからこそ伝説となるわけで、似通った展開となるのは致し方ないところなのかもしれません。
本作を見ていて、もう一つこのようなトップスターとなる人間にはもう一つの特徴があるようにも思いました。
エルヴィスは白人でありながらも幼い頃は貧しかったため、貧しい黒人との交流が多かったようです。
その中で彼は黒人の音楽性に触れ、それを我が身に取り込みました。
彼の音楽はカントリーと黒人音楽のミックスと言われていますが、白人と黒人の境界線に彼は立っており、それだからこそ異なる文化が化学反応を起こし新しい音楽を生み出すことができたのではないかと感じました。
この二つの世界の間に存在しているということが世間にインパクトを与えることができたアーティストの特徴なのではないかと思います。
「ボヘミアン・ラプソディ」で描かれたフレディ・マーキュリーはゲイであり、男と女の境界線上に立っていると言えるような気がします。
この境界線上にいるということは両方に属しているとも言えますが、両方に属していないとも言えます。
だからこそそこには葛藤があり、その人物は不安定さを持つことになると思います。
このような映画で描かれるアーティストは心理的に不安定であり、攻撃的にもなれば臆病にもなるのです。
大概このようなアーティストの不安定さにつけ込む人物が登場しますが、本作の場合はトム・ハンクス演じるパーカー大佐になります。
境界線上に立つことにより、他の人が持ち得ない新しい感性で新しいものを生み出すことはできるものの、その代償として誰にも理解されない孤独感、不安定さを持つのが、このような時代を作るアーティストの特徴なのかもしれません。
エルヴィスを演じたオースティン・バトラーは素晴らしかったです。
若き日から、晩年までを演じきり、見ている側としてはエルヴィスにしか見えませんでした。

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2022年7月11日 (月)

「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」 情報量が多く、忙しい

「鋼の錬金術師」実写版の最終作「最後の錬成」です。
一作目、そして完結編の全編「復讐者スカー」までは私は世間よりは高めの評価をしていましたが、今回に関しては低くなるかと思います。
壮大な物語を収斂させなくてはいけないということはわかるものの、あまりに登場人物が多いため、それぞれの掘り下げも出来なかったように思いました。
エドの師匠であるイズミも本作冒頭で登場しますが(原作ではもっと早めのタイミングで登場していたはず)、人柱の人数合わせ的なようにも思えました。
彼女自身もエドに匹敵するほどの過酷な過去がありますが、割とあっさりだったのは残念なところです。
事前の情報で再現度が高いと評判であった栗山千明さん演じるアームストロング少将も少々もったいない。
全体的にかなり急いで原作の後半をこの作品だけで描こうとしたように感じられ、魅力的なキャラクターが中途半端な描写で終わってしまった印象が強いです。
ただ再現度の高さだけでキャラクターが語られてしまいそうで残念な感じがしたのです。
リンも勿体なかった。
完結編の前編はスカーのエピソードにかなりフォーカスしていたのでキャラクターも掘り下げられていて、見やすかったですし、感情移入もしやすかったですが、それに対して後編は非常に情報量も多く、ジェットコースター的なストーリーに振り回されている印象がありました。
前編、後編の情報のボリュームのバランスが悪かったように思います。
ほんとは完結編3部作ぐらいにしていた方が良かったのではないかと思いました。

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2022年7月10日 (日)

「ザ・ロストシティ」 80年代の懐かしさを感じる

懐かしい香りのする作品でした。
80年代「レイダース」以降、「ロマンシング・ストーン」など秘宝探検アドベンチャーのジャンルが多く作られましたが、その当時の感覚が蘇ります。
そのジャンルの中でひとつ大きな特徴であったのが、主人公男女の間のロマンティックコメディ的な要素でした。
「インディ」シリーズの中でも特に「魔宮の伝説」でのインディとウィリーのやりとりもそうでしたし、「ロマンシング・ストーン」などは全編コメディの要素が強かったと思います。
本作では女性が主人公で男性(見栄えがいいだけのモデル)が添え物的な扱いなのが現代的ではありますが、基本的には80年代のアドベンチャーコメディの要素が色濃く出ていると思います。
その主人公ロレッタを演じるのがサンドラ・ブロック。
サンドラ・ブロックが一般的に名前が売れたのはキアヌ・リーブスと一緒に出演した「スピード」ですが、その中で彼女が演じたアニーもコケティッシュな魅力があったキャラクターでした。
そのためかサンドラはシリアスよりもコケティッシュでチャーミングな女性がマッチするイメージが強いです。
ですので、本作のようなキャラクターは彼女にベストマッチだと思います。
それもそのはずで本作のプロデューサーに彼女も名を連ねていますので、自身でも自分の強みを理解してこの作品を作ったのだと思われます。
作品としては冒頭に書いた通り、80年代のアドベンチャーコメディの懐かしさは味わえたものの、そのせいか特段に目を引くようなところもないというのが正直なところです。
ブラッド・ピットが非常に勿体無い使われ方をしているのが、面白かったですけれどね!
今度日本で公開されるブラッド・ピット主演の「ブレット・トレイン」にサンドラ・ブロックが出演しているので、その縁で出たということらしいです。

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