「ナイトメア・アリー」因果応報
<ネタバレあり>
ギレルモ・デル・トロは、なかなか見ることはできないが闇の中に確かに存在するモノに対して非常に強い偏愛を持っている。
本作の闇は「人の心」だ。
人はそれぞれに心の中に隠している思いがある。
欲望であり、憎しみであり、それをそのまま発露させてしまうと醜悪な思い。
それを人は隠している。
主人公スタンはカー人バルで読心術を学び、それをショービズの中で活用してのし上がる。
その読心術を教えたピートはその危険性を知っていて、自分ではその技を封印していた。
読心術を使えば、人の隠された思いを明らかにし、そしてそれを使って人をコントロールすることができる。
人をコントロールできることを知ってしまった時、そのことは使うものに非常な優越感を与えることになる。
その危険性をピートは知っていたのだ。
スタンは登場してきた時は何かから逃げているような得体の知れない男だった。
しかし物語が進むにつれ、スタンが心の中にある憎しみや欲望に突き動かされている男であることがわかってくる。
独善的なこの男は、結局その技を人に使っていくことを躊躇わないようになっていく。
人の心の闇を開け、それを使ってコントロールする。
しかし闇から出ててきたモノは、怪物のようにその人を喰らう。
スタンが金のためにその術をかけた人々は、心から現れた怪物に人生を狂わされてしまう。
そしてその術はスタン自身の闇をも解放していくことになったのではないか。
自らの飲酒の禁を破り、ピートの戒めも無視し、スタンの欲望がどんどんと自身を食らっていく。
結局、スタンは人の運命を狂わしていく最大の罪である殺人も犯し、逃亡する。
結局辿り着いたのはカーニバルの見せ物小屋。
最初はスタン自身が憐れむように見ていた獣人として、彼は生きていくことになる。
まさに因果応報。
ラストカットのブラッドリー・クーパーの表情は最高。
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