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2022年3月18日 (金)

「オペレーション・ミンスミート -ナチを欺いた死体-」 人間くささのある作戦

実際に第二次世界大戦中にイギリスがドイツに仕掛けた諜報作戦を元に映画化されました。
ヨーロッパを掌握していたドイツに対し、連合国側は反撃をすべくイタリアのシチリアへの上陸作戦を敢行しようとします。
しかし、ドイツからすればそれは予想の範囲内であり、迎撃部隊をイタリアに集結させようとしていました。
イギリスはドイツに誤った情報(上陸するのはシチリアではなくギリシャである)を伝え、上陸作戦の成功率を上げようとしました。
それがオペレーション・ミンスミートです。
具体的には(誤った)機密情報を持った将校の死体をドイツ軍に拾わせ、それを信じさせることにより、ドイツ軍部隊をギリシャに移動させようとするものでした。
テクノロジーの発達した現代の視点からすると、不確定要素が多い非常に危なっかしい作戦ではありますが、逆に人の要素が多くなり、ドラマとしての緊迫感が生まれていたように思います。
その将校は死後時間が経っていない死体を使い、その人物が実在する将校であるとドイツ軍に信じさせるためにさまざまな設定がされます。
彼が持つ持ち物などにもその背景となる設定が考えられました。
そこまで入念に設定しても死体が持っている書類はドイツ軍の手に渡るのか、そしてそれをドイツは信用するのか、など非常に不確定要素があります。
実際に劇中でも死体は(当時ドイツ側についていた)スペインに渡るものの、彼らはイギリス軍との間にもパイプがあり、絶妙なバランスをとっていたため、ドイツに渡らない可能性が出ました。
そこで現地にいるイギリスの情報将校らがあの手この手を使い、ドイツに情報を渡そうと苦戦するのです。
現代であればもっとテクノロジーを駆使した作戦になるとは思いますが、非常に人間が作戦を運営しているということが見えてくる人間臭いシークエンスで面白かったです。
本作には登場人物として「007」シリーズの原作者として知られるイアン・フレミングが登場します。
実際はフレミングはミンスミート作戦には関与していないようですが、情報作戦には関わっており、それがその後のスパイ小説を創作することにつながったことは有名ですね。
劇中に作戦をサポートする技術者が登場し、「Q」と呼ばれていたのは映画ファンには嬉しいところです。
死体の設定に登場する恋人のモデルとなった女性と、主人公とその同僚の三角関係的なものもドラマの縦軸としてありますが、個人的にはあまり惹かれるところはありませんでした。
人間臭い作戦執行のところにフォーカスしてもよかったかなとも思いましたが、他の方はどう思ったでしょうか。

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