「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」 ヒーローの目覚め
2022年最初の劇場鑑賞作品はこちら、「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」です。
トム・ホランド主演の「ホーム」シリーズの3部作、最終作となります。
こちらの作品、当初からいろいろありました。
3作目ではスパイダーマンが(SONYとマーベルの都合で)MCUから離脱しそうになりましたが、トムが仲を取り持って結局は引き続き両者で共同で作っていくことになったとか。
それが本当かどうかはわかりませんが、両者にとってその方が得であると判断したのだと思いますが、大ヒットとなっておりますので、その決断は正しかったということなのでしょう。
そもそもSONYはスパイダーマンの映画化権を持っており、MCUに倣ったSSU(SONY SPIDERMAN UNIVERS)を作り上げようとしています。
それが「ヴェノム」であり、今後公開される「モービアス」であったりします。
「ヴェノム」も興行的に成功しており、SSUは着実に構築されつつあります。
その中心であるスパイダーマンがMCUに所属しているのは、SONY的には都合が悪い。
それをひっぱり戻そうというのが、SONYの思惑であったのです。
その後両者は再びタッグを組むこととなりますが、そのときにマーベルのケビン・ファイギが「スパイダーマンは2つのユニバースを行き来する初めての存在になる」と言いましたが、まさに本作はそれを具体的に提示したものとなりました。
ネタバレなしで書くのはなかなかに難しいので、こちらについては後半で触れたいと思います。
MCUの「スパイダーマン」が過去のサム・ライミ版、マーク・ウェブ版と異なるのは、主人公ピーター・パーカーがティーンであることを非常に意識したものとなっているところかと思います。
過去の2シリーズは1作目でピーター・パーカーが蜘蛛の力を手に入れ、そして自覚を持つヒーローとしての目覚めを描いています。
「大いなる力には大いなる責任が伴う」というのは両作でピーターの叔父ベンが亡くなるときにいう言葉です。
ピーターは自分の自覚のなさにより、大切な人を失うという悲しみを経て、人のために戦うというヒーローとして目覚めたわけです。
それに対してMCUのスパイダーマンはそのようなヒーローとしての覚醒は描かれていませんでした。
もちろん師匠であり、彼にとって心の父のような存在であるトニー・スタークとの別れはありました。
それを経ても、というよりその様な経験があったからこそ、彼はヒーローという立場から逃げてきたとも言えます。
MCUのヒーローたちはピーターに比べ、大人であり、そしてプロフェッショナルです。
彼らは自覚的に行動をします。
スティーブ・ロジャースは揺るぎない正義感、トニー・スタークは力を持つものの責任感、ナターシャ・ロマノフは贖罪のために。
前作では彼らがいなくなった世界で、自分自身が背負わなければならない責任とどう向き合うか葛藤する様が描かれました。
しかし、それはまだスパイダーマンとしての葛藤でした。
前作のラストでピーターがスパイダーマンであることが周知となりました。
本作ではピーターとしてどうその責任と向き合うかが描かれます。
「大いなる力には大いなる責任が伴う」
本作である人物がこのセリフをピーターに告げます。
それまでのシリーズと同様に、ピーターは悲しみとともに自分が背負ってしまった責任を心の底から自覚をします。
そのために自分が犠牲を払わなければならないことも。
彼が払う犠牲はトビー・マグワイアの1作目のラストにも通じるものがあります。
本作は過去シリーズの1作目で描かれていたスパイダーマンのヒーローとしての目覚めを描いた作品です。
本当のスーパーヒーローとしてスパイダーマンが生まれたと言えると思います。
SONYのプロデューサーはトム・ホランドとの「スパイダーマン」は引き続き検討していると発言しています。
今後の「スパイダーマン」は大人として、ヒーローとして自覚を持った「スパイダーマン」が描かれることになるのでしょうか。
本作でさりげなく触れられた「黒人のスパイダーマン」(マイケル・モラレス)の登場もあるかもしれませんね。
「スパイダーバース」のピーターBパーカーのような役回りになるのかも・・・。
<ここからネタバレ前回>
公開前より今回の「スパイダーマン」はマルチバースがテーマになると言われていました。
そして過去のシリーズのヴィランたち(グリーン・ゴブリンやドック・オク、エレクトロなど)が登場することもわかっていました。
それで期待されていたのが、過去シリーズのスパイダーマン、つまりはトビー・マグワイア、そしてアンドリュー・ガーフィールドが登場することでした。
彼らは取材などを受けていても、それを否定していましたが・・・。
出ましたね!二人とも!
それもカメオというレベルではなくガッツリと。
鳥肌が立ちました。
「ウルトラマン」も「仮面ライダー」も兄弟や先輩が出てくるとぐっとくるものがありますが、「スパイダーマン」でもそれが味わえるとは!
そしてただ出すだけではなく、彼ら二人には役割も与えられていました。
今回ピーターが味わう悲しみと苦悩を、彼は誰とも共有できません。
この本質はMJともネッドとも共有できないのです。
ピーターの先輩であったヒーローたちも今は彼の元から去っています。
しかし、同じスパイダーマンである彼らは同じ様な体験をしてきたからこそ、今回のピーターの苦しみがわかる。
彼らにその苦悩を共有できたことは、ピーターにとっていかほどにありがたかったことか。
トビー・マグワイアのスパイダーマンは己の怒りに任せて行動したことによる悲劇を知っています。
だからこそ、トム・ホランドのスパイダーマンが怒りで鉄槌を下そうとすることを止めます。
アンドリュー・ガーフィールドのスパイダーマンは自分が及ばず大切なひとを失った悲しみを知っています。
だからこそ、彼は身を挺してトムのMJを救います。
予告でも流れていたMJが落下する場面は、「アメイジング・スパイダーマン2」でグウェンが落ちるシーンに酷似していました。
あの悲劇が繰り返されるのか、とも思いましたが、アンドリューのスパイダーマンがMJを救うことができてよかったです。
これはずっと十字架を背負ってきた彼自身をも救うことができたのではないか、とも思いました。
ヴィランたちも存在感がありましたね。
特にグリーン・ゴブリンを演じるウィレム・デフォーが素晴らしい。
狂気と正気の演じわけが流石、性格俳優だと改めて認識しました。
ゴブリンのマスクが語りかけるという描写なども1作目のオマージュたっぷりでした。
前半でスパイダーマンが2つのユニバースを行き来する存在になるとケビン・ファイギが言ったことに触れました。
2つのユニバースとはMCUとSSUなのは明白です。
今回のラストでピーター・パーカーがスパイダーマンであることは誰も知らないこととなりました。
その魔法をかけたドクター・ストレインジでさえ。
これはある意味、MCUからスパイダーマンは自由になったということができます。
アベンジャーズのメンバーからもピーターは忘れられてしまっているわけですから、それまでの柵からは解き放たれています。
今までは地球や世界を救う規模の戦いでしたが、これからは「親愛なる隣人」としてのニューヨークを舞台にした戦いが中心になる可能性もありますね。
本作ラストで救急の無線を聞いて手作りスーツで急行しようとするピーターの姿はそれを表している様にも感じました。
MCUとのしがらみが薄くなったことにより、SSUで動きやすくなる様にも思います。
これから公開される「モービアス」では「ホームカミング」に登場したヴァルチャーが出るという話なので、これはMCUと同じ世界を舞台にしている可能性があります。
そこにトム・ホランドのスパイダーマンが絡むということはあり得ます。
しかしその場合はヴァルチャーもピーターがスパイダーマンの正体であることは忘れているはずですが・・・。
二人のスパイダーマンが登場した時は、劇場で「あっ!」と声を上げましたが、その前に同じように声を上げたところがあります。
本作でピーターは当局に拘束されますが、彼を敏腕弁護士が弁護します。
その弁護士がチャーリー・コックス演じるマードック、つまりはデアデビルだったのです!
年末にディズニーチャンネルで公開された「ホークアイ」のラストでキングピンが登場したことからデアデビルがどこかの作品に登場するとは予想していましたが、こんなに早くとは驚きです。
先ほど書いたように今後の「スパイダーマン」がNYを中心に活躍していくならば、同じくそこで活動するデアデビルとの共演もあり得そうです。
期待したいですね。
そういえば「ホークアイ」のラストバトルの舞台となったNYのスケートリンクが本作でも映っていましたね。
まだクリスマスツリーは倒れていなかったようですので、「ホークアイ」は時系列的には「ノー・ウェイ・ホーム」の後なのかな?
最後に「ヴェノム」について。
「カーネイジ」のポストクレジットでMCU世界に転移したと思われていたエディとヴェノムですが、やはり来ていました。
本作で転移した者たちは「スパイダーマン=ピーター・パーカー」であることを知っているという条件であると言われていたので、「?」と思いました。
二人の口ぶりからすると当然スパイダーマンを知っている様子ではなかったですし、彼らの世界には他のヒーローはいない様子です。
じゃ、なんで彼らは転移してきたかというと、ヴェノムらシンビオートは集合意識というものを持っている存在です。
それは多次元世界を越える集合意識なのかもしれません。
トビー・マグワイアの3作目のもシンビオートは登場しており、ピーターに寄生し、黒いスパイダーマンを生み出しました。
その記憶が集合意識で共有され、エディ&ヴェノムも転送されてきたということなのでしょうか。
結局彼らも元の世界に戻りますが、シンビオートの破片は残されており・・・。
これが新たな展開に繋がる予感がありますね。
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