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2022年1月24日 (月)

「ハウス・オブ・グッチ」それぞれの正論

「最後の決闘裁判」から間を置かずに公開されたリドリー・スコットの最新作。
この監督は本当に作品の幅が広い。
グッチといえば、誰もが知るファッションブランドの一つ。
個人的にはファッションにものすごく疎いため、どうすごいかとか、他のブランドは何が違うのかは全く説明できないのだが。
グッチは伝統のあるブランドだが、一時期低迷した時期もあり、また創業家の一族の争いなども激しかったようだ。
そしてこの映画で初めて知ったのだが、創業者の孫が暗殺されてしまい、そしてその犯人が元妻であったというスキャンダルもあったということだ。
本作はその元妻パトリツィアを主人公にすえ、グッチ一族の骨肉の争いを描きます。
パトリツィアにはレディ・ガガ、その夫であるマウリツィオにはアダム・ドライバー、そのほかの出演者にはアル・パチーノ、ジェレミー・アイアンズ、ジャレッド・レトと、存在感のあるメンバーを揃えています。
この出演者たちが演じるグッチ家の人々も非常に強烈な個性を持っています。
彼らにとってグッチとは富であり、誇りであり、夢であった。
しかし、そのグッチは同じものではなく、それぞれが思い描く自分にとっての理想のグッチがあった。
ある人物にとっては、グッチは富の象徴。
ほかの人物にとっては、自分の才能を開花させてくれるもの。
または守らなければいけない伝統。
それぞれのグッチが相克し合い、骨肉の争いになった。
彼らが思い描くグッチは決して間違っているわけではない。
ブランドが持つ多面性の一つの側面を自分が都合のいいように解釈しているとも言える。
それぞれが主張していることは、それぞれにとって正論なのだ。
自分は間違っていないという確信があるからこそ、そのぶつかり合いは激烈となる。
もはや忖度などはない泥試合となっており、それぞれの人間性が丸出しとなっている。
その生々しさに人間らしさを感じる。
冒頭に書いたように自分自身はグッチ家のファミリーヒストリーを全く知らなかったため、どのように話が決着するのか全く想像できず、最後まで気を抜くことができず見ることができた。
最後のぶつかり合いは思いもよらぬ悲劇となった。
結局は勝者なしのゲーム。
現在のグッチには創業家のメンバーは誰もいないということだ。

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