「燃えよ剣」 かたち、型、形
「それはかたちが悪いよ」
劇中で主人公土方が度々口にする言葉です。
この「かたち」とは何でしょうか。
かたち、かた、形、型・・・。
「形」は物の形状のことを意味し、「型」はある物の形を作るためのもの、鋳型のようなものを表します。
土方は「かたち」をこの二つの言葉の意味を包含しているような使い方をしているように思いました。
土方は天然理心流の使い手ですが、剣法にも型があります。
その剣法の思想が込められた基本の型。
他のさまざまな武術にも型があります
その基本があるからこそ、あらゆる状況においても戦うことができる。
型がしっかりしていなければ、動きがぶれる。
気持ちもぶれる。
土方の定めた新撰組局中法度も型の一つでしょう。
隊士たちが持つべき基本の心構えを定めたのが、この法度でした。
また土方はこの型を理性的に捉えていたようにも思います。
土方は天然理心流を納めていますが、後は洋式軍隊の必要性も説きます。
旧来の型にこだわりすぎず、それが良いものであれば新しい型も取り入れることができたということなのでしょう。
また土方の言う「かたち」には形の意味もあったように思います。
形とは外見の姿の意味になりますが、その形の持つ美しさも含意します。
「かたちが悪い」と言うのは美しくないという意味も入っているように感じました。
そこには生き様の美しさがあるのか、ということを問うているようにも思います。
土方は将軍領の農民の出身で、侍に憧れ剣を納め、京に登りました。
侍でなかったからこそ、侍らしい生き様にこだわりを持っていたのかもしれません。
自分の初志を貫き通す、そこに彼は美しさを感じていたように思います。
盟友近藤勇が土方から見た時に変節しているように思えた時も、彼は「かたちが悪い」と言います。
江戸から明治へ価値観が大きく変わっていく中で、人々はそのうねりに翻弄され、変わっていきます。
その中で土方は函館の地で死ぬまで初志を貫き通した稀有の人物でした。
土方にとっての「かたち」とは彼が思い描くあるべき姿であり、あるべき生き様であったのかもしれません。
激動の世の中でも、彼の中に芯としてあるぶれないもの、それが「かたち」なのでしょう。
このぶれなさ、潔さが人々が土方に魅力を感じる理由なのかもしれません。
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