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2021年11月 4日 (木)

「最後の決闘裁判」 女VS男二人

リドリー・スコットによる「羅生門」とも言うべき作品。
騎士であるジャン・ド・カルージュの妻マルグリットが夫の友人である従騎士ジャック・ル・グリに強姦されたと訴えますが、ル・グリは領主のお気に入りであったことから裁判では無罪となります。
しかし、カルージュは国王に直訴し決闘裁判に持ち込みます。
当時決闘裁判が行われていたのは、神は何が実際にあったことかを全て知っているはずなので、真実を述べる者を勝者とするだろうという考えがあったからです。
「羅生門」スタイルとは関係者それぞれの見方から物語が語られていくというものです。
本作もカルージュ、ル・グレ、そしてマルグリットの視点から物語が語られていきます。
「羅生門」では3人が語るストーリーは結局は全て真実ではないということでした。
本作ではそれぞれのパートの頭に「カルージュの真実」といったタイトルが入ります。
しかし最後に語られるマルグリット視点のパートの部分は「Truth(真実)」というワードが最後まで残ります。
このことからマルグリットの語る物語が真実であるということなのだと解釈しました。
ル・グリの話は、本人は愛だと言いつつもその実は女性を欲望の対象としてしか見ない、極めて男性本意の価値観で語られていました。
対して寝取られた側のカルージュですが、妻のために真実を明かそうとする男かと思いきや、その戦う理由は己の名誉のためという極めて自分本位の考えでした。
そもそもがル・グリに対して悪感情を持っていたのに加え、妻がその相手に寝取られたとあってはプライドが傷つけられます。
また彼が妻を本当に愛していたかは疑わしく、ただの跡取りを生み出すための存在として見ていたようにも思えます。
この決闘裁判は側から見ると妻の名誉を挽回しようとする夫と、愛する女性を愛しただけだと主張する男の戦いのようにも見えます。
が、戦い合う男二人ともマルグリットを人格のある一人の愛する女性としてはいません。
男二人が戦いあっているように見えますが、実のところマルグリットが男二人と戦っているのです。
中世を舞台にしていますが、これはMe Too運動にも通じる極めて現代的なテーマであると感じました。
マルグリットを演じたのはジョディ・カマー。
「フリー・ガイ」のヒロインを演じた方だったのですね。
全然違う雰囲気の役なので、調べるまでわかりませんでした。

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