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2021年11月26日 (金)

「アイス・ロード」 兄と弟

タイトルにあるアイス・ロードとはカナダで冬の期間のみ利用できる湖上に張った氷の上に作られた道のこと。
この上を大きなトラックが物資を運んで行き交うらしい。
日本に暮らしている身としては、氷の上をトラックで走るなんていうことはかなりおっかない感じがしますが、冬季の間、政府によって管理されているこの道は安全ということです。
極地にほど近い鉱山である日落盤が発生し、何人かが閉じ込められてしまいます。
彼らを救うにはガスを抜くための掘削機を高山まで運ばなければなりませんが、その機械は非常に重量がありヘリなどでは運べません。
唯一の方法は大型トラックでアイス・ロードを走って送り届けること。
しかし時期は春に差し掛かろうとする時期で氷が薄くなってきており、政府はすでにアイス・ロードを閉鎖しています。
さらにはその運搬を妨害しようとする者たちもいて・・・。
70歳も近いというのにアクション映画に次々と出演しているリーアム・ニーソン主演の作品です。
最近の彼のアクション映画は割と大味なものが多く、本作もご多分に漏れません。
大体ストーリーの展開も予想できますし、VFXもややチープな感じも否めませんでした。
とは言いながらも全く楽しめないわけではないので、気軽にアクション映画を楽しみたいのであれば問題ありません。
最近長尺の作品が多い中では、上映時間もコンパクトなので見やすいかと思います。
本作の中で良かったのはリーアム演じる主人公マイクとその弟であるガーティの関係でした。
マイクはドライバーとして、ガーティは整備士としてコンビで運送会社に雇われいます。
しかしガーティ絡みで彼らはしばしば問題をお越し、何度も転職を繰り返しています。
というのもガーティはイラク戦争に出兵し、そのためPTSDを患い、失語症になっており、そのため仕事仲間から馬鹿にされたりすることがあったからでした。
ガーティはPTSDのためちょっとしたことにびくついたりしますが、整備士としての腕は一級品であり、その能力は高いものです。
しかし、病気のために周りの人から軽んじられていたのです。
マイクはそんなガーティを庇い、支えて生きてきました。
ガーティを馬鹿にする者たちへ彼は鉄拳をふるいます。
彼自身は自分は弟のことを完璧に信じていて、支えているという自負があったのだと思います。
しかし、内心では思うようにいかない弟に対し、苛立ちも感じていました。
様々な妨害を受けながらアイス・ロードを爆走する彼らがトラブルを受けスタックしてしまった時、マイクはガーティへの苛立ちを爆発させます。
ガーティがどうしてもマイクの言うことを聞かなかったからでした。
しかし、実際はガーティはウインチが寒さで脆くなっていることに気づいており、無理をすることに危険を感じていたからマイクを止めていたのでした。
それに気づかずマイクが強硬したため、ガーティは瀕死の状態になります。
マイクは考えるより先に拳がでる直情型です。
決断力・行動力はありますが、我を忘れることもあります。
対してガーティは冷静に状況を見る目を持っています。
マイクは常に世話をしているため、いつしか弟を手がかかる者という目で見てしまう様になってしまったのかもしれません。
本来は肉親であるからこそ、弟が持つ本質的な力をきちんと認めてあげなければならなかったのだと思います。
とはいえ、日常的に世話をすることによるストレスでは、なかなかそのようには見れなくなることも事実だと思います。
色々介護の現場でも問題となることもありますが、このような身近な者の間の軋轢みたいなことが描かれるとは意外でした。
マイクが弟が瀕死となった時に、嗚咽するのは、自分の中にある暗部に気づいたからだと思います。
その後息を吹き返したガーティとマイクが力を合わせて、危機を乗り越えていく姿はカタルシスがありますね。
それだからこそ最後はちょっと残念でしたが・・・。
アクション映画としてはそこそこでしたが、個人的には二人の兄弟の関係性にはドラマを感じて見ることができました。

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